脳の働き、食事で改善

うつ病認知症などの患者が増え、集中力の低下や感情のコントロールに悩む現代人も少なくありません。この原因の一つに食習慣の問題があると考える医師や学者も増えて来ました。
きょうは、脳の働きを改善するといわれる食事法についての話題です。


重要な脂肪、小魚おすすめ

脳には千数百億個の神経細胞が集まっている。
目や耳などで得た情報は、神経細胞を伝う形で脳内を駆け巡る。
脳の働きが良いとは、この細胞間の情報伝達が円滑に進むことだ。

脳の働きを良くするには、細胞が喜ぶ食物を取ることが大切だ。
神経細胞は日々の食事で取る脂肪でつくられる。
脂肪のほか、細胞間で情報を伝える物質の主原料であるたんぱく質、情報伝達のエネルギー源となる炭水化物は、脳にとって重要な栄養素といえる。

専門家の間で脳の働きを改善するため特に重視されているのは脂肪だ。
栄養療法の権威、米国のマイケル・レッサー医学博士は、「神経細胞は主にオメガ3脂肪酸という油で作られるが、体内では作られないため、食事で積極的に取る必要がある」という。
体に良いとされるドコサヘキサエン酸(DHA)はオメガ3脂肪酸の一種だ。

具体的には、オメガ3脂肪酸を豊富に含む亜麻仁油や小魚などがお勧めだ。
亜麻仁油は加熱せず、サラダなどにかけて食べるとおいしい。個人差はあるが、毎日小さじ1杯でも、健康効果が得られるという。

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大切な大豆・玄米

また、大豆や玄米などに含まれるリン脂質のレシチンを取ることも大切だ。
レシチン神経細胞の細胞膜などを構成する物質で、IQ食品とも呼ばれている。

食べ過ぎに注意したいのは、マーガリンやショートニングなどに含まれるトランス脂肪酸という油だ。
動脈硬化を起こす恐れがあるという理由で、欧米や韓国などでは成分表示や使用規制が課せられている。日本でも消費者庁が成分表示の義務化に向けた検討を12月に始める。
内閣府食品安全委員会が食品ごとの含有量を公開している。

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英国ではトランス脂肪酸が脳の活動に必要な酵素の活動を損ねるという論文が発表されている。
2000年以降は類似の論文発表が多く、摂取は控えた方がよいという見解もある。


穀物や豆多めに

神経細胞間の情報伝達に関係するたんぱく質や炭水化物も大切だ。
積極的に取りたいたんぱく質は、タコやイカに多く含まれるアミノ酸の一種、タウリンで、集中力を高める効果がある。「
脳が興奮してくるとイライラしがちになるが、タウリンがその興奮を抑える。

日常的には、穀物や豆など、植物性のたんぱく質を多めに取りたい。
植物性の食品は動物性食品に比べて、神経細胞の生成に必要なビタミンやミネラルが多く、脳の働きの改善につながる。

動物性たんぱくは主に小魚から取るのが良いが、肉も必要だ。
油の少ない良質な肉やビタミンB3を摂取すると、脳内でうつ状態などの改善に役立つ化学物質が作られるといわれる。
食べ過ぎは体の負担になるので良くないが、週に最低100グラム程度は食べた方がよいという。

神経伝達物質を送り出すエネルギー源になる炭水化物についても、以前は砂糖を取ると頭の働きが良くなるとされていた。
しかし、今は「血糖値を急激に上げ下げするため脳の働きが不安定になる」という見方が増えている。

そこで活用したいのが、炭水化物が消化されてブドウ糖に変化するまでの速さを示す「グリセミック指数」だ。
この数値が低い(変化まで時間がかかる)玄米や全粒粉のパン・パスタなどの食品を取るのがお勧め。難しければ胚芽(はいが)米や普通のパスタなども良い。

消化を良くするため、これらの食品をよくかんで食べることも大切だ。また、どうしても不足しがちなビタミン、ミネラルなどの栄養はサプリメントを通じて取ってもよい。


海藻や豆、解毒作用ある食品も

現代社会では、日々の食材から有害な物質を無意識に取り込んでしまうことが多い。
農薬や水銀などは脳の健康にも当然良くない。

魚介類に含まれる水銀の量は農林水産省水産庁が公開している。
大型の魚ほど、食物連鎖により水銀の濃度が高まる。
オメガ3脂肪酸の摂取源として小魚が推奨されるのはこのためだ。

ただ、食材にこだわっても、有害物質を全く取り込まないのは難しい。
そこで知っておきたいのは、有害物質を排出する効果のある食品だ。

例えば、海藻や豆などに含まれる亜鉛は肝臓で働く解毒酵素の材料になり、タマネギや玄米などに含まれるセレンは水銀を無毒化する作用がある。

出典 日経プラスワン 2010.11.20(一部改変)
版権 日経新聞


<番外編>
インフルエンザ、今冬はA香港型 5週連続で患者増 新型も警戒を
国立感染症研究所は26日、5週連続でインフルエンザ患者が増加していると発表した。
現在は季節性の「A香港型(H3型)」が主流だが、新型に感染する患者もいる。例年通りなら12月中旬に全国的な流行が始まる見通しで、厚生労働省は「季節性と新型のいずれも流行の可能性がある。
ワクチン接種は早めが望ましい」と注意を呼びかけている。

感染研によると、21日までの1週間で全国で定点観測している約5千の医療機関を受診したインフルエンザ患者は1684人。
1施設当たり0.35人となり、10月中旬から5週連続の増加となった。

地域別では北海道が10月末に流行入りの目安となる「1人」を超え、21日までの1週間では2.08人。
宮崎では1.02人、山梨(0.98人)や沖縄(0.95人)が流行入りに近づいている。
同省は「12月中旬に全国的な流行入りとなり、冬休み明けの1月にピークを迎える可能性がある」とみている。

昨年大流行した新型インフルエンザ(H1型)については、各地方衛生研究所が検出した件数は全体の2~3割にとどまっている。
主流となっているのは季節性の「A香港型」で、今月上旬に秋田県内の病院で入院患者6人が死亡したケースでは同じタイプのウイルスが検出された。

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新型は小児から成人まで重症化する場合があるが、季節性は特に高齢者が重症化しやすい。
「A香港型はここ数年大きな流行がなく、今後、流行が広がる可能性がある」とみる専門家もいる。

厚労省は新型とA香港型、B型の3種類のウイルスに効果がある「3価ワクチン」を健康成人で約5800万人供給する体制を整えている。
ワクチンは接種してから効果が出るまで2~3週間かかる。
<私的コメント>
私は10~14日と認識しています。

出典  日経新聞 web刊 2010.11.26
版権  日経新聞




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