「風邪」予防の常識・非常識

寒くなり、せきが出たり微熱が出たりする風邪がはやる季節になった。
頻繁に使う言葉だが、「風邪」は医師が診断する病名ではない。
一見同じような風邪の症状でも、原因や経過が異なる複数の病気に分かれていてそれぞれの病名で診断されるからだ。

昨年11月、東京都内在住の公務員、A子さん(29)は、体がだるくのどが痛いのに気がついた。
頭痛もあり熱を測ると37度程度の微熱があった。
近所の薬局で購入した漢方薬を服用した。
平日はマスクを着けて仕事へ行き、休日は一日中家で寝ていたところ2~3日で楽になった。
熱を測ると平熱に戻っていたので治ったと思い安心した。


病名でない風邪
一般にせきやくしゃみ、軽い発熱などがあると「風邪」と言うことが多い。
ただ、「風邪という病気はない」と永寿堂医院(東京都葛飾区)の松永貞一院長は説明する。

風邪にはウイルスや細菌などの病原体の感染による「感冒」と、「寒い日におなかを出したまま寝ていた」といった寒さなどの生活環境による「寒冒」がある。
ほとんどが前者で、そのうちの多くの原因がウイルスだ。

風邪を引き起こすウイルスは少なく見積もっても250種類以上ある。
通常、ウイルスに一度感染すると免疫ができて次に感染しにくくなるが、これだけたくさんの原因ウイルスがあるので何度も風邪を引くというわけだ。
せきや発熱のような同じような症状でも季節によって流行するウイルスが異なり、冬は子供の気管支炎などの原因となるRSウイルスなどが多い。

腹痛や下痢、嘔吐などの症状があると「おなかの風邪」といわれることも。
これは感染性胃腸炎と診断される。
大腸菌などの細菌のほか、冬はノロウイルスロタウイルスなどのウイルスが原因になることが多い。

これだけ多くの原因を持つ風邪。
予防はどうするのか。

まず予防接種をする。
ただ1つのワクチンで防げる病原体は通常1種類。
インフルエンザウイルス、肺炎を起こす肺炎球菌といった重い病気を引き起こす病原体に対するワクチンはあるが、ほとんどの風邪の病原体を防ぐワクチンはそろっていない。

日常的にできる対策はやはり「マスク」「手洗い」「うがい」だ。
普段からよく食べて睡眠をとるといった健康管理も欠かせない。
それぞれ目的が異なるので、「何に役立つかを覚えておくと、周りで流行しているものに対して予防対策をとりやすくなる」(国立感染症研究所の安井良則主任研究官)。

マスクは、せきやくしゃみなどで感染が広がるインフルエンザなどの病気が拡大するのを防ぐのに役立つ。
手洗いは感染性胃腸炎を起こす病原体を洗い流して体内に入るのを防ぐ。

うがいはのどや口の中にある病原体を洗い流したり、保湿をしたりする働きがある。
ただ、「うがいだけではウイルス感染を防ぐことはできない」(安井主任研究官)ため、ほかの方法と組みあわせる必要がある。

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風邪にかかってしまったらA子さんのように軽い症状の場合は、医療機関へ行かず、市販の薬を飲んだり自宅で療養したりしてよくなることもある。
健康な人では、もともとの体の免疫の働きがウイルスなどを排除する。
市販の風邪薬や解熱剤は鼻水や発熱など風邪のつらい症状を抑えるので、免疫を付けるのに必要な食事や休養をとりやすくなる。

ただ、市販の風邪薬は原因のウイルスや細菌をやっつける治療薬ではないので注意が必要。
症状が軽くても「3日たってよくならなかったら、すぐに医療機関へ行って」と松永院長は語る。

風邪とあなどっていると、思わぬ合併症を引き起こすこともある。
例えば、発熱やのどの痛みがある溶連菌感染症。早めに医療機関抗生物質などの治療を受ければよくなるが、放っておくと腎炎などの重症になることもある。

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インフルエンザは高熱に
先月、本格的なインフルエンザの流行期に入った。
風邪と同じようにせきが出たり発熱したりするが、どのように違うのだろうか?

インフルエンザは38度以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などがある。
風邪はのどの痛みやせき、鼻汁といった呼吸器の症状がメーンだが、インフルエンザは全身の症状があるのが特徴だ。また発熱もインフルエンザのほうが高くなる。

特に高齢者や小児では悪化すると肺炎や脳症を起こすことがある。
ただ健康な大人では、典型的な症状ではなく軽いこともあり多くの人では特に治療をしなくても1週間ほどで自然に治る。
「軽いと風邪の症状と区別が難しい」(安井主任研究官)。

「今年も大きな流行になる可能性がある。新型は健康な成人でも注意が必要。インフルエンザを疑ったら、すぐに医療機関へ行ってほしい」とけいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫医師は注意を呼びかけている。

出典 日経プラスワン 2011.1.15
版権 日経新聞


<自遊時間>

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お気づきの方も多いと思いますが、現在のGOOGLEのタイトルです。

明らかにセザンヌという遊び心ですね。
生年が1839年1月19日ということですから、1月19日を意識してのデザインなのでしょうか。
http://ja.wikipedia.org/wiki/ポール・セザンヌ


似た画を探してみました。

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セザンヌ  カーテン、水差し、そして果物鉢
http://www.itempost.jp/detail/2/PA01047075/7299409






他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
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(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)
「葦の髄」メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版です)
があります。