超低周波音

福島第1原発事故以来、急速に原発反対運動に盛り上がりが見られます。
誰しもが今回の悲惨な事故の現状を見れば反対しない方がおかしいぐらいです。
しかるに、現首相は国連で、この原発問題に関して歯切れの悪い演説をしました。
反対運動をしている人達はもちろん、電気(電力)そのものを反対しているわけではありません。
現在の電気にあふれた生活を享受しながら原発は反対という立場です。
たしかに原子力発電でなく、自然に根差した電力発電で必要消費電力を賄えることが理想です。
湯水のように電気を消費しておいて、代替案も考えずに、ただ反対する運動には、無責任さを感じる人も多いのではないでしょうか。
私も勿論、原発には反対です。
日本のような不安定な国土には適さないことを今回の事故が証明してくれました。
推進派はこの事実の前には何を言っても無意味であり無力です。

しかし、代替えエネルギーの問題点も十分把握しておかなければ無責任な反対運動になってしまうのではないでしょうか。
今回は風力発電の問題点を取り上げてみました。


低周波音の対策遅れ

緑豊かな静岡県南伊豆町の山間に、木工業の沼田松雄さん(63)が5年がかりで妻(52)と一緒に建てた自宅兼作業場がある。

正面の山の頂に目をやると巨大な発電用の風車が「ゴーッ」と音をたてて回る。
直線で440メートルの距離だ。
周辺にはさらに16基の風車があり、これらの風切り音の一部も、山間を抜けて耳に届く。
だが、問題なのは耳障りな騒音よりもむしろ、聞こえない超低周波音だった。

民間業者が風車を建設したのは2009年のことだ。
同年11月末に試運転が始まると、風車から数百メートルの距離に住む人たちに体調不良が表れた。
沼田さんと妻は同年12月以降、めまいが頻繁になり、耳の痛み、首や肩の張り、胸や背中の圧迫感、不眠、高血圧などに見舞われた。

翌年3月、「体が持たない」と、20キロ・メートル離れた所に家を借りた。
風車から遠ざかったためか体の不調が消えた。
今は日中、自宅兼作業場で仕事をし、夕方には借家に戻る。
沼田さんは「国が推し進める『エコ』な発電で、なぜ我々の健康や生活が脅かされなければならないのか」と憤る。

夫婦の体調不良を、成蹊大理工学部非常勤講師の岡田健さんは「風車が風を切る時に発生する超低周波音と空気流の影響」とみる。

低周波音の健康への影響は30年以上前から知られていた。
石川島播磨重工業(現IHI)に長く勤務した岡田さんは工場や空港の周辺住民から寄せられる動悸やめまい、頭痛などの苦情に対応し、工場のボイラーやコンプレッサー、航空機エンジンなど、音の発生源の改良を手がけてきた。

「消音装置などで超低周波音を減らすと、途端に症状が改善し、苦情が減ることが分かった」という。

低周波音問題(超低周波音含む)を巡っては、環境省が04年、影響の有無を判断する目安となる値「参照値」を公表した。
家庭でのヒートポンプ給湯器の普及などに伴い、周辺で低周波音の苦情が相次いだからだ。

ところが、「一部の音響専門家らが値を決めたため、耳に聞こえない音波は考慮されず、参照値以下の超低周波音に健康影響はないと切り捨てられた」と岡田さんは指摘する。
この解釈が風車の問題でも用いられ、被害の軽視につながっているという。

健康被害の訴えは、風車が立ち並ぶ同県東伊豆町や愛知県豊橋市などでも相次ぐ。
環境省は昨年度から、風車の低周波音の影響調査を始めたが、住民の声をきちんと受け止め、民家に近い風車は回転数を落とすなど、早急な対策が必要だ。

低周波
周波数20ヘルツ以下の聞こえない音。
風車では、羽根(ブレード)による空気の切り裂きや、羽根の表面の乱気流で生じ、微細な空気振動として伝わる。

出典 読売新聞 2011.9.9
版権 読売新聞社



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