高齢者の「粗食」に注意

高齢者の「粗食」に注意 肉・脂の不足、老化早める


元気で長生きするためには毎日の食事が大切。
でも、どんな食事が高齢者の健康に良いのか。
健康に気を使っているつもりでも勘違いで栄養状態が悪くなっている場合もある。
最近、高齢者の「低栄養」が問題になっている


■「健康的な食事」と聞いてイメージするのは、肉と脂の少ない「粗食」ではないだろうか。
しかし、最近は高齢者ほど肉などの動物性たんぱく質や脂質を十分に食べるべきだ、と話すいう考え方が出て来た。

■肉や脂を控えた粗食が健康に良いとされるのは、心臓病や脳卒中の原因となるメタボ予防のためだ。
だが、メタボ予防が必要なのは、40~50歳代の中年期までの話。
60歳を超えてくると、粗食は次第に健康にとって害が大きくなる可能性がある。
<私的コメント>
「高齢者の特定健診」の内容は65歳未満の方の「特定健診」に準じた内容となっています。
やせた高齢者が真面目に健診に来院されると、その都度何となく申し訳なく思ってしまいます。
「公費の無駄遣い」と言わなくとも「公費の非効率的な運用」です。

■高齢者にとって粗食がよくないのは、「病気よりも老化そのものが問題」となってくるからだ。
肉や脂を控えた食事を続けると、たんぱく質不足になって栄養状態が悪くなり、筋肉や骨の量が減っていく。
つまり老化は、人間の体からたんぱく質が抜けて、乾いて、縮んで、ゆがんでいく過程。
たんぱく質不足は、老化を早めることになるのだ。
<私的コメント>
たんぱく質不足」の高齢者の中には「がん」などの病気であまり食べれない人もいるかも知れません。
すくなくとも医療関係者は「野菜中心で」と言った(間違った)指導をしないようにしなければいけません。

■体の老化が進むと、転倒して寝たきりになるリスクが高くなるし、心臓病などの病気のリスクも高くなることが研究で分かってきた。
老化を少しでも先延ばしするには、筋肉や骨の材料となるたんぱく質が欠かせない。

■ここで注目されるは、血液中を流れるたんぱく質の一種、「血清アルブミン」の値。
血清アルブミンは1デシリットル当たり3・8グラム未満では医学的にも「低栄養」と診断されることが少なくない。
だが、「正常」とされる範囲の値でも、低い数値だと介護が必要になったり、病気などでの死亡リスクが、それ以上の人の1・5倍から2倍になることが分かって来た。
逆に、食事を見直して栄養状態が改善した高齢者を7年間にわたって調査したところ、死亡率が8%低くなったという報告もある。

■実際どのような食事をとれば、血清アルブミン値を上げ、老化を遅らせられるのか。
大切なのは食品の「バラエティー」。
食品には肉や魚、牛乳、油脂類など10の食品群がある。
一日になるべく10品目をまんべんなく食べることを目標にすれば、面倒なカロリー計算や、バランスを考えなくても、自然に栄養状態は改善する。

■ある研究では、食事にバラエティーがない高齢者ほど、その後5年間で知的活動や社会活動が低下した。
体の健康はもちろん、生き生きと自立した生活を送るためにも食事は大切なのだ。


腸を動かし、免疫力アップ
■医学的にも、高齢者の低栄養は注目されている。
ある病院の調査では入院時に低栄養状態の患者が2~4割いるという。
その状態では、病気の経過が良くないうえ、手術後の合併症リスクが何倍にもなってしまう。

■患者が口から物が食べられない場合、以前は栄養補給のためには高カロリー輸液を点滴で入れれば良いと考えられていた。
しかし、腸に栄養を届けたときの方が、けがをした患者の患部が膿(う)んだり、肺炎を起こしたりなどの感染症の発生が少ないことがはっきりしてきた。

■腸が大切なのは、体のなかで最も大きな免疫組織であるためだ。
腸を使わないと働きが落ちて体のバリアー機能が弱くなって、感染症などにかかりやすくなるのだ。

■健康でも腸を動かさないと、免疫力が落ちるのは同じ。
高齢になると食欲がわかなかったり、硬い物が食べにくかったりして、若い頃のようには食事できない場合も多い。
寝たきり状態になるとなおさらだ。

■自分や家族の栄養状態が悪くなっていないかを知るためには、体重を定期的に量るほか、二の腕の内側をつまんで、皮下脂肪が男性なら1センチ、女性なら2センチ以上あるかどうか、また、ふくらはぎが細くなっていないかなどをチェックすると良い。

■かつては、高齢になれば食が細くなるのは当然と考えられてきた。
しかし寿命が延びた現在、元気に生活を楽しむには食事が大切。
最近は、硬さを工夫した栄養価の高い食品も売っている。
食欲がなくても工夫して食べるようにしよう。


栄養価・食べやすさ 介護食、多彩に
■かめない、のみ込めない、作るのが面倒など高齢者の食事に関する問題はさまざまだ。
だが、状況に合わせた食品が市場に出ており、スーパーなどでも買えるところが増えている。

キユーピー(本社・東京都渋谷区)が展開する「やさしい献立」シリーズは、ユニバーサルデザインフードの区分1~4がそろう。
さらにのみ込みやすさに気を配った「とろみ調整」食品まで全57種類がある。

■食事量が少なくなりがちな高齢者にとっては、効率よくエネルギーを取ることも重要な課題だ。
日清オイリオグループ(本社・東京都中央区)の「トウフィール」は、豆乳を固めた介護食品。ユニバーサルデザインフードの区分3で、豆腐と同じように食材にできる。
原材料にごま油を入れ、1グラム当たり1キロカロリーあり、通常の豆腐のほぼ倍のエネルギーを取ることができる。

■もっと手軽にエネルギーやたんぱく質を取りたい場合、手軽に飲めるドリンクタイプの「高カロリー栄養食品」もある。
もともと経管・経口の栄養補助食品として医療現場で使われてきた製品を、口から飲むことに特化して味などを改良。処方箋(せん)がなくても買うことができる「食品」として市販されている。

■栄養価を高くし、さらに高カロリーにすると、どうしても味が落ちてしまう。
おいしさをどう出せるかが商品開発の課題。
牛乳、乳製品に加え、粉ミルクなどの研究開発で培った明治の「技術の集大成」として完成したのが「メイバランスミニ」シリーズ。
コーヒー、バナナ、抹茶など8種類の味をそろえ、毎日飲んでもらえるように工夫されている。

■介護で『要支援』でも持病がなく、医療機関にかかっていない人も多い。
低栄養予防には、手軽な高カロリー栄養食品はうってつけだ。
このジャンルの商品を多くの人が知る必要がありそうだ。


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ユニバーサルデザインフード> 
かむ力やのみ込む力が弱くなった人のために食べやすさに配慮した加工食品。
介護食品の品質向上や安全性の確保を目指す「日本介護食品協議会」(東京都千代田区)が規格を定めた。
同協会には現在、食品メーカーなど58社が加入している。
商品にはロゴマークとともに、選ぶ目安になるように「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の4段階の区分が表示されている。

出典 朝日新聞・朝刊 2013.9.15
版権 朝日新聞社



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2013.9.17 AM6:30撮影

台風一過。
今朝は雲一つない秋晴れ。
今秋一番の涼しさで寒いぐらいです。
被災された方には、昨日と打って変わってまさに不条理な晴天となりました。
心からお見舞い申し上げます。