あきらめないで筋量の低下

高齢になるにつれて筋肉の量が減り、筋力が衰えた状態を「サルコペニア」と呼び、積極的に予防しようという考え方が広がりつつある。
この状態になると転倒や骨折のリスクが高まるが、「老いれば当然」と受け止められてきた。
新しい考えでは、元気さを長く保つために、食事や運動で防ぐことが重要としている。

(老いとともに)筋量の低下、あきらめないで 座ったまま予防体操

・椅子に座った状態で、つま先やかかとを上げたり、太ももを引き上げたりを繰り返す体操がある。
歩くための筋肉を鍛えるのが目的だ。(下の図参照)

・45歳を過ぎると、1年に約1%ずつ筋肉の量が減っていくとされる。
75歳を超えると減る割合はより大きくなる。
一度転倒をすると活動量が減り、さらに筋肉量や筋力は落ちてしまう。

・こうした筋肉量の減少は「サルコペニア」と呼ばれる。
ギリシャ語で筋肉を意味する「サルコ」と、減少を意味する「ぺニア」を組み合わせた造語で、1980年代後半に米国の研究者が提唱した。
高齢化が進み、近年、日本でも注目されてきた。
国内の調査では、65歳以上のうち22%がサルコペニアと認められたという結果もある。

・これまでは、老化に伴って筋肉や筋力が衰えることは「仕方ない」と考えられてきた。
しかし、適切な対処をすれば予防や改善ができることがわかってきた。
また、転倒することで、入院や介護が必要になる可能性が高まることも指摘されている。

サルコペニアの人はそうでない人に比べ、2年後に歩行や排泄などの日常生活の動作(ADL)が損なわれるリスクが、男性で約45倍、女性で約10倍高かったという報告もある。

指の輪っかでテスト
サルコペニアをめぐっては、欧州の研究者のグループが2010年に診断基準をまとめた。歩く速さや握力、手足の筋肉量を測ることでサルコペニアを判定する。

・2013年(昨年)11月には、欧州の基準を参考に日本、韓国、中国、タイなど七つの国と地域の研究者たちが、アジア人の体格に合わせた基準をまとめた。(下の図参照)
筋肉量はDXA法というX線を使った測定法で測る。

・しかし、サルコペニアは病名として確立しておらず、国内で検査や診断を受けられる施設はほとんどない。
筋肉量を測る機械を備える医療機関も少ない。

・筋肉量の減少が簡単にわかる目安として、「指輪っかテスト」がある。
両手の親指と人さし指で輪を作って、自分のふくらはぎの一番太い部分を囲む。
指の輪よりも足が細くて隙間ができる人は、サルコペニアになっている可能性が高いという。

アミノ酸で栄養補給も
・筋肉量の減少や筋力の衰えを予防、改善するには、運動と栄養補給の組み合わせが大切となる。

・運動は、ウオーキングなどの有酸素運動や筋力トレーニングが有効。
体力に合わせ、少しずつ負荷をかけるようにすためには椅子を使った運動がよい。

・栄養補給では、たんぱく質に含まれる必須アミノ酸の一つで、筋肉をつくる役割がある「ロイシン」の摂取が効果的とされる。

サルコペニアと診断された高齢者を対象にしたある研究では、週2回各1時間の運動とロイシンを多く含んだアミノ酸を1日2回計6グラムとったグループは、運動だけのグループや栄養補給だけのグループと比べて、足の筋肉量や筋力の改善効果が高かったという。

・食事に関しては、糖尿病など持病がある場合は別だが、赤身の肉や、魚、大豆や乳製品などをしっかり食べるとよい。

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            出典 朝日新聞・朝刊 2014.5.6( 一部改変 )
            版権 朝日新聞社



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                  自宅に咲いたカトレア 2014.5.1