血管炎

血管炎 様々な臓器に障害も

血管炎、様々な臓器に障害も
長引く高熱や痛み 感染症やがんに似た症状
血管炎の症状は感染症やがんに似た面があり、専門の医師でないと診断が難しい。
ただステロイドなどが効き、薬を飲み続ければ症状を抑えられる例が多い。

ソチ五輪ノルディックスキージャンプ団体でメダルに輝いた選手が血管炎を患っている可能性があることを公表した。
病名はアレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群)。
白血球の一種が増えて血管に炎症が起こる。
気管支ぜんそくアレルギー性鼻炎の人がなりやすく、手足のしびれや関節・筋肉の痛みなどを伴う。
脳出血心筋梗塞などが起き、命に関わる場合もある。
患者は国内に推定で1800人いる。


免疫異常が原因か
血管炎とは全身の血管の壁に炎症が起こる病気の総称。
血管は全身に栄養分や酸素を運んでいる。
炎症が起こると破れて出血したり詰まったりして、さらに炎症が悪化する。
血管が詰まった先の組織が壊死するなど、様々な臓器に障害が出る。

発症原因はよくわかっていないが、アレルギーや自己免疫疾患などと同じく、病原体などから体を守っている免疫システムの異常だと専門家の多くが考えている。
免疫力が強まり血管自体を敵と見做(みな)して攻撃しているという説や、体内に入ってきた異物が免疫の力で血管の内側にくっつくことで炎症が起きているとの説などが出ている。

血管炎全体の患者数ははっきりしないが、増加傾向にあるとみられる。
一部が難病に指定され国の医療費助成を受けている患者数は2万人を超える。
検査技術の向上や高齢化などが血管炎患者が増えている原因ではないか、と専門家は考えている。

いくつかのタイプがある血管炎だが、いずれも発熱と痛みが主な初期症状となる。
数週間にわたり続く例が多い。
セ氏38度を超える高熱が出て、節々や筋肉が痛む。
体のだるさもある。
症状はインフルエンザなどと似ている。
初めは感染症と見分けが付きにくい。
自分で風邪と判断して薬を飲んでみたが、症状が治まらず病院に駆け込む人も多いという。

血管炎では太い血管が詰まると、その血管の先につながる臓器全体が損傷を受ける。
細い血管でも肺や腎臓が冒されれば臓器不全になる。
神経が傷つけられればまひなどが残る。
大きな血管が冒される代表例に「大動脈炎症候群(高安動脈炎)」がある。
腕へ伸びる血管の根元が詰まると手首の脈がなくなるため「脈なし病」とも呼ばれ、若い女性に多い。
首の血管の痛みを歯の痛みだと感じ、虫歯と勘違いする人もいるという。

中高年に多いのはこめかみ近くの動脈が冒される「側頭動脈炎」。
発熱と頭痛を訴えて病院に来る人が多い。
目の血管も炎症がおき、悪化すると目が見えにくくなる。
アレルギー性肉芽腫性血管炎は、細い血管が冒されるタイプ。
神経の炎症で麻痺を起こしやすい。

診断では血液検査などを参考にする。
太い血管ではCTやMRIも活用する。
血管が細い場合、臓器の組織を一部取って調べることもある。


早めの受診が大事
治療は炎症や免疫を抑える薬を使うのが一般的。
ステロイドを投与し炎症を鎮める。
ただステロイドは長期間使うと骨がもろくなったり感染症にかかりやすくなったりするので、徐々に薬の量を減らしながら免疫抑制剤も使うなどの対策を講じる。

免疫力が強まり病気の引き金になっている可能性が高いため、症状がいったん治まり、薬を減らしたりやめたりすると再び悪化するケースもある。
少量のステロイド投与を続けて再発を防ぐ例が多い。
肺や腎臓、神経は回復しにくいのでできるだけ早く適切な治療をはじめる必要がある。
一方、筋肉は再生力が強いため、日常生活を続けていれば元に戻りやすい。

血管炎を予防するのは難しいが、発症したら早期に医療機関を訪れることが大切となる。
原因不明の高熱が続き、あちこちに痛みがあったり体重が減ったりしたら、放っておかずに受診する。
特に首と腕が痛む、腎臓と肺に炎症が起こるなど離れた臓器に同時に症状が起こる場合は、血管が原因になっている可能性がある。

こうしたケースでは、しばしば医師は感染症やがんなどを疑ってしまう。
確実な診断が付かない場合は、膠原病の専門医などを紹介してもらうのもよい」。


血管炎で起こる主な症状
・高熱
・こめかみの痛み
・目の充血、視力の低下
・鼻血、鼻づまり
・脈が弱くなる
・気管支や肺の炎症
・関節痛
・手のしびれ、力が入らない
・内出血による紫斑


「血管の太さ」からみた血管炎の分類
太い
 大動脈炎症候群*
 側頭動脈炎
中程度
 結節性多発動脈炎*
細い
 顕微鏡的多発血管炎
 ウエゲナー肉芽腫症*
 アレルギー性肉芽腫性血管炎
 悪性関節リウマチ*
       *医療費助成の対象


日本経済新聞 2014年3月14日( 一部改変 )
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