機能性食品

機能性食品「むずかしい」 企業の情報、目立つ専門用語

食品の健康への働きを企業の責任で表示する機能性表示食品の販売が始まった。
国は効果や安全性などを審査せず、代わりに届け出られた情報を公開する。
消費者に判断してもらうという考え方だ。

「体にいい」機能性食品、店頭へ
アゴニスト活性」?「潜在的な選択バイアス」?
機能性表示食品は、健康への働きを企業の責任で商品に表示できる新制度だ。
規制緩和によって経済成長を目指す安倍政権の戦略の一環で新設され、4月にスタートした。
消費者庁は約200件の届け出処理に追われている。
すでに36商品が受理され、順次販売が始まった。

企業は届け出にあたり、商品に表示する働きが本当にあることや、安全性が確かめられていることを証明する実験結果や学術論文などの提出を求められる。
同庁はその資料をウェブサイトで公開する。
届け出には、学術論文などの専門的な内容を一般の人も理解しやすいよう、やさしい言葉で解説する消費者向け基本情報も必要だ。

ところが、実際に公開された消費者向けの情報を見てみると、専門用語やむずかしい表現を多用する商品がいくつもある。
プラセボの経口摂取と比較して」「アゴニスト活性」「無作為化コントロール試験」「潜在的な選択バイアス」といった具合だ。
これでは一般の消費者が理解するのはむずかしい。

全国消費者団体連絡会は意見書を発表し、科学的根拠が非常に弱い商品や安全性に疑問がある商品があると指摘した。
消費者向け情報についても、専門用語が解説を加えずそのまま用いられている例や、逆に省略しすぎて重要な情報が欠けている例があると指摘した。
効果が出た一時期だけのデータを取り上げ、他のデータを省くことで、「効果が継続すると錯覚させる手法にみえる」と訴える。

主婦連合会など12団体で組織する「食品表示を考える市民ネットワーク」は「消費者にとって制度は欠陥がある」として、運用中止と見直しを求める意見書を消費者庁に出した。

消費者がわからない情報を公開しても意味がない。
企業には丁寧に説明する責任がある。
届け出が受理され商品に表示できればよいという内容では消費者に支持されず、結局企業のためにもならない。

消費者庁は、消費者には包装などに記された説明をよく読み、ウェブサイトで公開されている情報も確認してほしいと呼びかける。
一方で事業者に対しても「誤解を招かない情報提供を責任をもって行う必要がある」としている。

不明な点、とことん考えよう 
機能性表示食品は、商品の判断を消費者にゆだねる制度だ。
消費者は表示や宣伝をうのみにするのではなく、公開情報から商品の価値を測る必要がある。

現状ではそれはきわめて難しい。
公開された情報は専門用語ばかりで、きちんと読み解くのは不可能だ。
専門家の助けを借りなければ読み解けない現状は、制度の趣旨と大きく矛盾する。
企業は「どうせ分からないだろう」と消費者の足元を見ているのではと疑いたくなる。

機能性や安全性の根拠が公開される点は、これまでの健康食品と一線を画するものだ。
一方で消費者は企業の出す情報をもとに判断するしかないのだから、企業はもっと誠実に情報を公開し、説明してほしい。

消費者にもできることはある。
まず商品に書いてある表示を熟読することだ。
そして、消費者庁のウェブサイトにある安全性や機能性の根拠となったデータにあたってみる。
どれだけの人数を対象にしたどのような実験によるデータなのか、メーカーに細かく問い合わせてもいい。その上で分からない点があれば、その商品にお金をかけてもいいのかを冷静に考える。
そんな「消費者力」が試される。

 ◇  ◇

「働き」表示、3種類
健康食品も含め、一般の食品に健康への働き(機能性)を表示することは医薬品医療機器法(旧薬事法)で禁止されている。
医薬品との誤認を防ぐためだ。
ただし、食品表示法に基づく食品表示基準で、特定保健用食品(トクホ)と栄養機能食品、機能性表示食品の三つに限り認められている。

トクホは国が商品の安全性や機能性を一つずつ審査し、表示内容を許可する。
許可を得た商品は1千点を超えている。
栄養機能食品はビタミン・ミネラルなど20成分に限り、国の基準を満たした商品がその働きを表示できる。

機能性表示食品にはトクホのような審査がなく、栄養機能食品のような成分の制限もない。
食品事業者は、機能性や安全性の科学的根拠を示す資料をそろえて消費者庁に届け出て、受理されれば販売できる。
後で問題が判明した時は届け出撤回を求めることもあると消費者庁は説明する。