野菜のビタミンC 失わない野菜調理

ビタミンC失わない野菜調理 切り方・加熱方法は ゆで汁は味噌汁に、炒め物には片栗粉

ビタミンCの簡単な検査法がある。
用意するのはヨウ素化合物を主成分とする市販のうがい薬。
ヨウ素にビタミンCを加えると無色に変化する。
調理の手際などに左右される面もあるが、大まかな傾向はつかめる。
 
ヨウ素液は「500ミリリットルのペットボトルに水を入れ、うがい薬を200滴加える」。
 
使う野菜はブロッコリー、パプリカ、ジャガイモ、ほうれん草、ダイコン、ニンジン。
生の状態や調理後にすり鉢ですりつぶし、お茶を煮出すパックに入れて搾った。
すりつぶしてもビタミンCの量に大きな変化はないらしい。
 
まずはブロッコリー
搾り汁をヨウ素液に一滴ずつ垂らすと、茶褐色だった液体が次第に薄くなっていく。
ヨウ素液の色が消えるまで何滴だったかを記録。加えた汁が少ないほど、1滴に含まれるビタミンCが多いことになる。

「レンジ」「蒸す」減少幅小さく
電子レンジで加熱して調べると、生よりもビタミンCが多い。
煮たものは減っていたが、蒸した場合も多かった。
そんなことがあるのか
加熱により野菜内の水分が蒸気として出てしまうことがある。
減った分の水を加えて計算し直すと、ビタミンCは加熱後の方がやや少なかった。
 
ゆで方によるビタミンC量の違いを調べるため、「輪切り(厚さ3センチ)」「イチョウ切り(同3ミリ)」「千切り(同2ミリ)」の3つをそれぞれゆでてからすりつぶし、搾り汁を取った。
輪切りは、ゆで時間が15分、30分と長くなるほど生に比べヨウ素液が透明になるまで多くの搾り汁を必要とした。
 
イチョウ切りはゆで時間10分で、千切りは同3分で、長くゆでた輪切りより大きく減った。
長くゆでるほど、細かく切れば切るほどビタミンCの減少幅は大きい。

加熱方法を変えるとどうか。
減少幅が大きかった千切りで「蒸す」「電子レンジ」「油でいためる」の3パターンを比較してみた。
3分蒸しても、レンジで1分加熱しても、油で3分いためても、どれもあまり減らなかった。
 
千切りにしたダイコンを5分間、10分間水にさらしたときは、3分ゆでたときよりもさらにビタミンCが減った。
 
一連の結果は何を意味するのか。
ビタミンCは水に溶けやすいので、水にさらしたり長くゆでたりすると流出してしまう。
細かく切れば、水にふれる断面が増え、流出量も多くなる。
いためた場合は油でコーティングされて流出が抑えられる。

ビタミンCは加熱など調理の過程で壊れやすい、とよくいわれるが壊れるわけではなく、酸化するだけ。
酸化しても体内では同じビタミンCとして働くという。
とはいえゆで汁などに流出してしまうと摂取量は減る。
なるべく水にさらさないためにはレンジや蒸すのが有効だが、野菜によってはゆでてアクを抜いた方がおいしい場合がある。
どうすればいいのか。

塩・砂糖加えて流出を抑える
まずはゆで時間を短くすること。例えばほうれん草なら1袋分まるごと一気にゆでると時間がかかるので、少しずつゆでれば1回ごとのゆで時間は短くて済む。
ゆでる前に切るのも避けたい。
切り口から栄養素が流出するためだ。
ゆで汁に塩を加えるのも有効らしい。
浸透圧の関係で流出が抑えられるという。
塩を加えるのは色を鮮やかにするためと考えていたが、栄養効果もあったのだ。
 
さっそく千切りにしたダイコンで試してみた。
濃度1%の食塩水で3分ゆでたところ、水での場合に比べ少ない量の搾り汁で透明になった。
食塩水の濃度を10%にまで高めてみると、ビタミンCの減少幅はさらに縮小。
ただ1%はともかく10%はしょっぱすぎてとても食べられる味ではない。
 
原理が同じ砂糖水ではどうか。
1%の砂糖水で煮ても、食塩水とほぼ同じ結果が出た。
こちらはほんのり甘くておいしかった。
酢や油でも試してみたが、これはほとんど効果がなかった。
 
ビタミンCの上手な取り方は、アクの少ない野菜の場合はゆで汁をみそ汁などに活用したい。
いため物の場合は片栗粉を使って流出した分もあんにして食べられるようにするといい。
栄養素を逃さない食べ方は結局、手早くおいしく調理することだと分かった。

出典
日経新聞・朝刊 2014.7.5(一部改変)