ビタミンCの最新知識

不足すると心の不調も ビタミンCの最新知識 上手な補給法は

最近、生命科学の進歩により体内のビタミンCの働きについて新しいことが次々と分かってきた。
健康づくりに欠かせないビタミンCを効果的に補給する方法は何か。

ビタミンCは90年以上前に、かんきつ類に含まれる、壊血病を予防する成分として発見された。
しかし、体内におけるビタミンCの機能や、どれぐらい摂取することが必要かなど基礎的なことは長い間分からないことが多かった。
その理由は、ビタミンCを体内で合成できず、食事でとらなければならない動物はヒト以外ではサルの仲間などごくわずかで、動物実験が難しかったためとされる。

肺の病気に効果
2002年にビタミンCを作ることのできないマウスが開発された。
それをきっかけに世界の研究が進んだ。
例えば、ビタミンCは体内で血管、皮膚、骨などをつくるのに欠かせないコラーゲンの合成に必要なほか、よく体内に生じた“サビ”とも表現される活性酸素の除去にも重要な役割を果たしている。
 
そのため、不足すると肌の老化が進んだり、生活習慣病を悪化させたりするなど、さまざまな加齢変化を促進することも分かってきた。
こうした加齢性疾患に対するビタミンCの効果を確かめるための臨床研究もはじめられている。
 
ビタミンCと心の関係に関する研究成果もある。
ビタミンCは私たちが興奮したときに分泌される神経伝達物質であるアドレナリンの合成にも欠かせない。
ビタミンCが欠乏すると、抑うつ症状などがみられることなどが知られてきた。
 
そして、マウスにおける慢性閉塞性肺疾患COPD)の予防と治療効果も報告されている。
 
COPDは喫煙者などに多くみられる肺の病気で、肺の内部で酸素を取り込む肺胞の細胞が加齢とともに少しずつ破壊されていく病気。
実験では、ビタミンC不足の状態で育てたマウスは喫煙によりCOPDが進行し肺気腫などを起こすが、ビタミンCを十分与えると予防できた。
また肺気腫はビタミンC不足では喫煙を止めても治らなかったが、十分に与えた場合には改善した。
COPDの患者は血液中のビタミンC濃度が低い傾向にある。

ビタミンCが不足しない食生活とはどのようなものか。
「日本人の食事摂取基準」(厚生労働省、2010年版)では成人の推奨量を1日100ミリグラムとしている。
しかし、これは、心臓血管障害などの生活習慣病を発症しない最低レベルと考えられている。

吸収率も変わる
医薬品のように厳密に投与量を決める臨床試験を行うことは難しいが、基礎研究の成果からは、ビタミンCの成果を積極的に利用するためには、より十分な量が必要と考えられる。
実際、喫煙者は推奨量以上の摂取が必要なことが分かっている。
精神的ストレスがある人、激しい運動をする人、高齢者などビタミンCの吸収が低下している人なども、たくさんのビタミンCが必要だといえる。
 
ビタミンCは一度にたくさんとると吸収率が低下するため、1回あたり100~300ミリグラムを1日3回程度とることを提案している。
そのためには1日3回の栄養バランスのよい食事をとること。
ビタミンCは穀類や魚類などはあまり含まれていないが、ジャガイモなどの芋類、根菜類、豚肉などには比較的多く含まれる。
例えばジャガイモはビタミンCがでんぷんに守られ加熱しても壊れにくいなど、意外なビタミンC補給源だ。
 
そしてビタミンCを消耗しない生活を心がけよう。
まずは禁煙。そして、精神的ストレスを上手に解消することも重要だという。

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「レモン1個分」は20ミリグラム
現在では、ビタミンCはブドウ糖を原料に工業的に生産されている。
清涼飲料水や栄養機能食品などに栄養素として用いるほか、他の栄養素を酸化から守る酸化防止剤としても利用されている。
朝食をトーストとコーヒーですませるなどビタミンCが足りない場合は、含有量が明記された清涼飲料水などを利用するのもよい。
「レモン何個分のビタミンC」と表現される場合もあるが、1個分はビタミンC20ミリグラムと覚えておくと摂取量が分かる。

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出典
日経新聞・朝刊 2013.10.26(一部改変)