肺の病気「COPD」

《肺の病気「COPD」》 せき・たん兆候、欠かせぬ禁煙

たばこを長年吸っていると、せきやたんが出やすくなります。
慢性閉塞性肺疾患COPD)の兆候かもしれません。
早く手を打たないと、酸素ボンベが必要な状態につながります。

COPDは自覚症状が少ないので、息苦しくなってから受診する人が目立ちます。
せきとたんの症状が出るまでに医療機関を受診すべきですが、風邪やぜんそくと混同され、発見が遅れる場合もあります。

  *  *
 
COPDは、肺に入り込んでいる気管支が炎症でむくんだり、その先で酸素を取り込む肺胞が壊れたりして、酸素を取り込みにくくなった状態だ。
長期にわたってゆっくり進行するため、気付かないうちに徐々に悪化する。
最後は命にかかわる呼吸不全に至る。
 
別名は「肺の生活習慣病」。
たばことの関わりが深く、日本人の場合、患者の9割に喫煙歴がある。
喫煙者の15~20%がCOPDになるとされ、禁煙後に症状が現れることも少なくない。
また、非喫煙者受動喫煙によってCOPDになる例も報告されている。
 
国内の40歳以上の患者数は、疫学調査による推計で530万人。
だが、診断を受けたのは22万人だけ。
1日20本を20年吸い続けてきたような世代は、特に要注意だ。

私的コメント;
「1日の喫煙本数×喫煙年数」で表される数字はブリンクマン指数といわれBIと略されます。
この指数が大きいほど,肺癌の発病率が高いことが知られており,この指数が 400を超えると非喫煙者の肺癌死亡率の 4.9倍といわれます。
このように主として肺がんリスクを予測する際の数字(指標)ですが、COPDにもそのまま当てはめてよいのかは私にはよくわかりません。

診断は、呼吸機能を測るスパイロメータ‐‐という器具を使う。
気管支拡張剤を吸入後、思いきり息を吸って強く吐き出し、最初の1秒間で出た空気の量が肺活量に占める割合(1秒率)が70%を下回っていると、COPDと診断される。
この検査で「肺年齢」も測れる。
実年齢を大きく上回っていたら、COPDの疑いがある。

いったんCOPDになると、健康だった頃の肺には戻れない。
進行を遅らせたり症状を改善させたりする治療が中心になる。

まず、禁煙が欠かせない。
COPDの患者が禁煙すると、その後の症状の進行を効果的に遅らせることができる。

薬で呼吸しやすくする治療もあり、狭くなった気管支を広げる吸入薬や肺胞の炎症を抑える吸入薬などが使われる。
息切れする場合は、肺の負担を軽くするために腹式呼吸を身につけたり、口をすぼめて呼吸する訓練をしたりする。
 
重症になると、自力呼吸だけでは酸素が足りなくなる。
外出や入浴の時も苦しくなるなど、生活の質も著しく下がるため、鼻に細い管を差し込み、酸素を送り続ける在宅酸素療法が必要になる。
  
40歳を過ぎてせきやたんが続くようなら、呼吸器内科のある医療機関で肺年齢を調べるとよい。
そして喫煙中の人は何より、ぜひ禁煙をしよう。



まとめ もしかして慢性閉塞性肺疾患COPD
① ⬜︎ 1日20本、20年以上の喫煙歴がある
② ⬜︎ せきやたんがよく出る
③ ⬜︎ ぜんそくと診断されたことがある
④ ⬜︎ 階段を上ったとき、息切れがひどい
⑤ ⬜︎ 他の人と一緒に歩くと、遅れがちになる
⑥ ⬜︎ 太ももの筋肉がやせてきた
⑦ ⬜︎ 体を動かすのがおっくう
⑧ ⬜︎ 呼吸のたびにゼイゼイ、ヒューヒューという音がする

①はCOPDになりやすい人の喫煙歴です。20年以上吸っていたら、症状の有無にかかわらず呼吸機能検査を受けてください。
②はCOPDの一種の慢性気管支炎の症状ですが、③のように診断されることも多いです。
④⑤はさらに症状が進んだ段階。息苦しさから体を動かさなくなり、
⑤⑥のような状態が見られるようになります。
⑦⑧になるとかなり進行しています。在宅酸素療法を検討しなければなりません.

出典
朝日新聞・夕刊 2014.9.29(一部改変)