骨粗しょう症、男性も注意

骨粗しょう症、男性も注意

骨粗しょう症、男性も注意 糖尿病・喫煙者は高リスク
齢女性がよく発症することで知られる骨粗しょう症だが、実は高齢の男性も要注意だ。
糖尿病や喫煙の生活習慣などがある男性はリスクが高いが、女性のように公的な特定健診の対象ではなく、認知度は低い。
骨折から寝たきりや死亡に至るケースは男性に多く、専門家らは早めの検査や、予防を意識した食事や運動を呼びかけている。

骨粗しょう症の検査をしましょう」。
帝京大学ちば総合医療センター(千葉県市原市)の内科では、糖尿病や肺疾患の治療で訪れる高齢の男性に対し、骨のレントゲン写真の撮影と骨密度検査を行う。
大半の男性が「内科の病気と関係あるの?」といぶかしがるというが、このセンターでは病気や喫煙が引き起こす「続発性骨粗しょう症」の予備軍が内科を訪れる患者に多いとみて早期発見に力を入れる。

骨粗しょう症の患者数は日本国内で女性が約1千万人、男性が約300万人とされる。
全世界的にも男性に比べて女性の患者数が3~4倍で、一般的には女性の病気として知られる。
女性の場合、50代の閉経後にホルモンが激減し骨の密度が下がって発症するケースがほとんど。
男性はホルモンの減少はゆるやかだが、病気や痩せ、栄養障害が原因で起こることが多いという。

病気で多いのは糖尿病のほか、息切れやせきが続いて呼吸が苦しくなる慢性閉塞性肺疾患COPD)。
特にCOPDでは70代の男性患者のうち、骨粗しょう症の発症率は7割におよぶ。
内科医自身も肺の治療ばかりに目が向き、骨粗しょう症を見逃すことが多い。
骨粗しょう症を自覚する決め手には「身長低下」がある。
身長が直近の数年間で2~3センチ以上縮んでいると骨折している可能性が高い。
こまめに身長を測り、身長低下の傾向がみられれば主治医や整形外科に骨粗しょう症の相談をする必要がある。

男性がひとたび骨折すると死亡リスクや生活への障害の度合いが女性以上に深刻となる。
酒やカフェインの大量摂取、常習的な喫煙などで骨の質が悪化し、電話帳を数冊持ち上げたり、軽く転倒したりするだけで骨を折る高齢者がいる。

骨折部位のうち、特に問題となるのが大腿骨頸部と呼ばれる太ももの骨折。
一般的に男性の発生頻度は女性の3分の1だが、発生後の死亡率は男性の方が高い。
オーストラリアの09年の調査結果では、女性の死亡率が一般住民の2.43倍であるのに対し、男性は3.51倍だった。
骨折後に寝たきりになるのも男性がより多い。
メンタル面や家事の生活習慣など様々な要因が推測されるが、正確な理由は研究されていない。

男性は予後が悪く、再骨折したり持病を増悪させるなど負のスパイラルに陥りやすい。
骨粗しょう症を放置せず、積極的に治療することが長生きにつながる。
運動や食生活の改善のほか、骨を強くする薬物療法は効果が高い。
高齢化社会を迎え、高齢者人口の増加とともに男性の骨粗しょう症患者が一段と増えるとみられる。
女性の病気だという思い込みを外し、男女問わず全世代で骨の健康に関心を持つ必要がある。

牛乳や豆腐摂取し予防
どんな人でも加齢に伴い骨量が減少する。
骨粗しょう症を防ぐためには骨の中のカルシウム量を増やす必要がある。食事や運動などの生活習慣が発症に深く関与する。
公益財団法人「骨粗鬆症財団」(東京)などによると、予防と治療の大きな柱は食事療法だ。
カルシウムが含まれる乳製品や豆腐などの大豆製品、小魚、緑黄野菜、海草などを積極的に取り入れる。
カルシウムは摂取量が少なくなりがちで、同財団は「1日で最低限の目安として牛乳で200ミリリットル、豆腐なら半丁を加えて」と呼びかける。
運動は刺激になり骨にカルシウムが蓄積される。
基本は歩くことで、男性は1日7千歩、女性は6千歩が目安だ。日に当たることも重要で、紫外線の影響でカルシウムの吸収が高まる。
若い世代は骨量が急激に増える思春期や、骨量が維持される成人期にカルシウムをしっかりと取り、骨量のピーク値を高めておくのが望ましい。
弁当や外食が増える高校・大学からカルシウムが不足し始める。
全年代で20歳前後のカルシウム摂取量が最も少なく、予備軍が大量に発生している。
無理なダイエットも禁物。
食事制限で栄養不足になるとカルシウムも少なくなり、空腹によるストレスで尿の中にカルシウムが出て骨量が減るという。

参考・引用一部変更
日経新聞・夕刊 2018.12.5