高齢者の心不全

高齢者の心不全 「年のせい」と諦めずに治療を

2階に行く階段が息苦しくて上れなくなった」「坂道を上っていくと息切れする」。
そんな症状の原因のひとつが心不全
全身に血液を送る心臓のポンプ機能が低下してうまく働かなくなった状態で、70歳以上になると目にみえて増えてきます。

心不全で困っている人の多くは高齢者。
息切れ、体重増加、足のむくみなどの症状が出るが『年のせい』と諦めずに治療することで改善できる患者さんも多くいる。

  *  *
 
心不全になると血の巡りが悪いために腎臓で作られる尿の量が減るなどして水分が体にたまる。
肺にも水がたまって酸素を取り込めず息苦しくなる。
食べ過ぎたわけでもないのに1週間で体重が2~3キロ増えたような時は、体に水分がたまっている可能性がある。
 
心不全は高齢になるほど多くなる。
地域住民を調べた米国の研究によると80代では男性の約7%、女性の約8%が心不全だった。
 
高齢者は肺や腎臓などが悪いことが多く、いろいろな原因で息切れやむくみが起きる。
高齢者の心不全には総合的な対処が必要になる。
私的コメント;
高齢者のむくみの原因を調べてもはっきりしないことが結構あります。
現在はBNPという項目の血液検査で心不全の状態を、ある程度把握することが出来ます。
この数値が余り高くても、腎機能障害や肺機能障害や貧血や蛋白低下が少しずつ加わると総和としてむくむことがあるのです。
こういった場合には、どれがむくみの主因かがはっきりしないことがあります。

たとえば、坂道を歩くと息切れするようになり、足もむくんできた80代男性の場合。
心不全の治療を始めたが、長年の喫煙で起きる慢性閉塞性肺疾患COPD)という肺の病気もあった。
心臓と肺の両方の治療をして、はじめて坂道も歩けるようになった。

一方、塩分を取りすぎたり、精神的、肉体的なストレスがあったり、薬を飲み忘れたりすると心不全は悪くなる。

  *  *
 
慢性の心不全が起きる原因は、高血圧、心筋梗塞、心臓弁の病気、不整脈などさまざま。診断には症状のほか、心電図、X線、超音波などの検査をする。
心臓から分泌されるホルモン、BNPの検査もよく用いられる。
BNPの値が100以上だと治療の必要な心不全の可能性がある。
高齢者は、息切れがあっても自分から訴えないことがある。
息が苦しそうか家族の目も大切。
初期に気付いて適切な治療をすればその後も安定しやすい。
 
治療では自己管理が大切になる。
薬はきちんと飲む。
食べ物からとる塩分は、1日6グラム以下を目標にする。
たばこを吸う人は禁煙をする。
重症でない限りは適度な運動が必要で、専門家の指導のもとで運動療法などに取り組む「心臓リハビリテーション」ができれば安心だ。

もしかして心不全?
①体を動かすと息切れがする
②寝ている間に呼吸が苦しくなって目が覚める
③横になっているよりも座って起き上がっている方が呼吸が楽だ
④食べ過ぎなどの理由がないのに体重が2~3%増えた
⑤尿の量が減ってきた
⑥足にむくみがある
疲労感や脱力感がある
⑧心臓がどきどきする感じがする

①これまで上れた階段が上れなくなる。買い物に行くのがつらいなど生活にも支障が出ます。
②③横になっていると肺の血流が増えて負担になりますが、起きると負担が減ります。
④血流が悪くなることで体の中に水がたまります。
⑤腎臓で尿が作られにくくなります。
⑥すねの骨のあたりを指で押すと、へこんだまましばらく元に戻らない状態になります。
⑦心臓のポンプ機能が弱まると疲労感が出やすくなります。
不整脈がある人では動悸が起きます。

出典
朝日新聞・夕刊 2014.11.17


<参考になるサイト>
心不全患者さんが気をつけたいこと
日本心臓財団 (PDFファイルが開きます)
http://www.jhf.or.jp/sousyo/image/Heartno15.pdf
(日常生活の注意点や気にした方がよい症状などをわかりやすく説明しています)



追加
心不全にはいろいろな分類があります。
その中で最近注目されているのは、「収縮不全」と「拡張不全」とに分ける方法です。
「収縮不全」は、文字通り心臓というポンプの送り出す強さがよわくなっているということなので理解は簡単です。
一方、「拡張不全」は「収縮力は保たれている」という、ちょっと謎の心不全です。
高血圧・糖尿病・心臓の病気などを持っている高齢者、女性、に多いという特徴があります。
しかし、治療法がないためにクローズアップされています。
<参考サイト>
増えている高齢者の心不全 ~拡張不全とは?~
http://www.jhf.or.jp/heartnews/vol64.html



イメージ 1

長野・白樺湖湖畔 「黄金アカシアの丘」にて  2015.8.14 撮影
(今となっては夏の思い出です)