広がる新型ペースメーカー

広がる新型ペースメーカー 拍動を自動検出、除細動器搭載

心不全患者の治療で、心臓の働きを助ける心臓ペースメーカーに、新しいタイプが普及してきている。
左右両方の心室の動きを調節することで、片方だけの従来のタイプより収縮機能を回復させる効果が高いとされる。
2014年、拍動に合わせて自動的に対応できる製品が国内で発売された。
調整のための通院回数を減らせるメリットもあるという。

■調整いらず通院減
心臓の収縮が悪くなってポンプの働きが落ちると、血液の循環がうまくいかず、体が疲れやすくなったり、むくみが出たりする心不全が起こる。
心臓の右側と左側の心室が収縮するタイミングがずれる「同期不全」を伴う場合もある。
筋肉を収縮させる電気信号が心臓内でうまく伝わっていない場合だ。

こういった場合には、左右の心室の収縮のタイミングを電気信号で一致させる「心臓再同期療法」(CRT)や、心室細動などの致死的な不整脈を止めるための除細動器を加えたCRT―Dが適応になることがある。
 
CRTは2004年に、CRT―Dは06年に公的医療保険の対象になった。
13年にCRT―Dを体に入れた患者は約3300人。
 
新型は、心臓の拍動のリズムを自動的に検出し、最適なタイミングで電気信号を送り続けることができる。
これまでは定期的に医師が、超音波の画像などで心臓の動きを確認しながら装置を調節しなければならなかったが、不要になった。
その分、通院回数を減らせるという。
 
目視でタイミングを調節するのは限界がある。
より的確な治療が期待できる。
患者に入れたCRT―Dの情報がインターネットを通じて医療機関に送られ、心臓の動きを24時間チェックできるシステムもある。

CRT、効果は7割
心臓ペースメーカーは不整脈の治療のため、1950年ごろから使われるようになった。
現在、ペースメーカーの種類は、拍動が少ない不整脈治療用や、体内に入れる除細動器、左右の心室の同期不全治療のためのCRTに大別される。
国内では合わせて数十万人がペースメーカーを使っているとみられている。
 
CRTが適用となる同期不全は、心不全の患者の2~3割で現れるという。
CRTの中では、除細動器が付いたCRT―Dが主流となっている。
CRT―Dは1台数百万円するが、医療保険などで患者の自己負担は軽減されている。
 
手術は、静脈を通じてリード線を心臓内部に挿入する。
装置本体は、鎖骨の下の皮下に置く。
 
専門医やメーカーによると、CRTによる治療効果があるのは同期不全患者の7割程度。
心臓の左側への電気伝達が悪くて左側の収縮が遅れる左脚ブロックというタイプの患者は、一定の効果が見込まれるが、それ以外ははっきりしないという。
心不全にもさまざまなタイプや程度があり、十分な治療効果があるかを事前に見極めるのは簡単ではない。
 
CRTによる治療ですべてが解決するわけではない。
患者は医師らの指導を受けながら、薬の服用や適度な運動、塩分を控えた食事などを続ける必要がある。


CRTが適用となる心不全の特徴
・ 薬で十分な改善効果が見られない
・ 左心室が血液を送り出す機能が低下している 
・ 左右の心室が拍動するタイミングがずれている

参考
朝日新聞・朝刊 2014.7.29