肩こりを予防・改善する

いかり肩・なで肩… タイプ別の肩こり改善筋トレ

肩こりは我々にとって最も身近な症状だ。
決め手となる改善法が見つからず悩んでいる人は多い。
専門家は「いかり肩」「なで肩」といった肩の形のタイプに合わせた対処法が効果的だとアドバイスする。
 
厚生労働省の「平成22年国民生活基礎調査」では、女性が訴える症状の第1位は肩こり。
男性でも腰痛に次いで第2位となった。

血流低下で痛み
肩こりは首の骨の異常や内臓疾患など、他の病気の症状として表れることもある。
手のしびれや体重減少など、他に症状がある場合は早めに医療機関を受診したほうがよい。
検査して異常が見つからない肩こりは、多くが筋肉の過度の緊張が原因だ。
 
肩まわりの主な筋肉は僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋の3種類。
本来ならそれぞれがバランスよく収縮(緊張)と弛緩(しかん)をくり返しているが、同じ姿勢の作業を続けたり、精神的なストレスが加わったりすると、筋肉の特定部位の緊張が続いてリラックスできなくなる。
筋肉は硬くこわばり血流が低下。
内部に疲労物質がたまり痛みや不快感が生じる。
これが肩こりの正体だ。
 
現代社会では「パソコン作業」「姿勢の悪化」「運動不足」が三大原因だ。
全身を大きく使う運動習慣が少ないと、肩まわりの3つの筋肉のバランスが崩れて筋肉に負担がかかる。
 
整形外科医や理学療法士は、患者を診察したり、仕事内容などを聞き取ったりして治療すべき筋肉を正確に見極める。
日常生活に支障がある症状には筋弛緩剤や鎮痛剤などの薬物治療も行うものの、大切なのは筋肉の負担となる生活習慣を改善すること」と話す。
 
こりの原因となる筋肉の見極めには専門知識が必要だ。
ただ肩の形のタイプによって一定の傾向があることも最近分かってきた。
いかり肩タイプの肩こりでは、僧帽筋の上部と肩甲挙筋を中心に筋肉が収縮しているのに対し、僧帽筋の下部は伸びきっていることが多い。
それに対してなで肩の人の肩こりでは、肩甲挙筋と菱形筋は収縮しているのに対し、僧帽筋上部は伸びきっていることが分かってきた。
 
どちらのタイプも、肩こり予防に大切なことは、筋肉が緊張した状態を続けないこと。
肩こりは帰宅後ケアするより、仕事中などに小まめにケアすることが重要だ。
例えば、背中を丸めたままパソコン作業をすると、誰でも肩が上がり僧帽筋上部、肩甲挙筋、菱形筋のいずれも収縮し続ける。
ときどき肩を上下に動かし、前後に肩を回すとよい。
休憩時には、簡単なストレッチがおすすめだ。

首を左右に倒すストレッチと前に倒すストレッチは「いかり肩」「なで肩」のどちらにも有効。
自分のこりやすい筋肉を意識しつつ、ゆっくり力を抜いてやるのが効果的だ。

縮まった筋肉を伸ばしたら、今度は伸びきった筋肉に刺激を与える。
この方法がタイプにより異なる。
「いかり肩」の人は両手のひらを前に向けて、前腕を立てる。
あごをひいて、胸をそらし、腕全体を肩甲骨ごと下ろして5秒静止。
「なで肩」の人はやはり前腕を立てた状態で、腕全体を肩甲骨ごと、上にぐいと持ち上げて5秒停止する。
筋肉を伸ばす運動と鍛える運動を10回ほど繰り返すのが1セット。
1日で3セット程度を行うと肩こり予防に効果を期待できる。

合う枕で熟睡
日常生活にも気を配りたい。
散歩など軽度の運動でも、全身の筋肉の血流を増やし、肩こり改善につながる。
さらに肩の筋力をトレーニングすれば効果は高まる。
盛り上がるような筋肉を目指すのではなく、質のよい筋肉を維持することを目的に。
高齢者は筋トレの方法を間違えると逆に関節の負担になるので要注意。
 
このほか、冷えも肩こりを悪化させる。
冬場はもちろん、夏のエアコンも要注意。
冷気を避けるほか、肩かけなどを上手に使うことも肩こり予防になる。
就寝前には、少しぬるめの湯に肩までつかり、20分ほどリラックス。
また、枕が合わないことが肩こりの原因であることも多い。
自分に合う枕を探してぐっすり眠ることも肩の筋肉をリラックスさせるよい方法だ。

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器具・マッサージは対症療法
肩こりに悩む人で肩たたき機、低周波治療器、磁気を用いた医療機器などを試す人も多い。
多くは筋肉の血流を増やして症状を改善するもの。
効果を感じられるなら使用を勧められる。
痛みを感じたり、症状が悪化したりするときは使用を中止し、整形外科医などに相談しよう。
 
マッサージで筋肉の緊張をほぐすのもよいが、痛みを感じるほど強いマッサージは必要ないと考えられている。
マッサージも症状を和らげる対症療法の一つ。
姿勢を見直して運動の習慣を心がけるなど生活改善が第一だ。

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出典
日経新聞・朝刊 2013.2.9(一部改変)



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2015.9.9 撮影