介護うつ

《介護うつ》 抱え込まず、負担軽減が最優先

高齢の家族を介護していると、介護する人がうつになることがある。
不眠や気分の落ち込みが続き、何に対しても意欲が出ない――こんな症状があれば、うつ病かもしれない。
介護から離れる時間をつくること。
それには周囲の協力が必要だ。

厚生労働省研究班は2005年、自宅で介護する人にアンケートした。
回答した8486人分を分析すると、7割近くが75歳以上を介護し、全年代の平均で23%にうつ状態が疑われた。
 
高齢者を介護する場合は、病気が進行したり、終わりがみえなかったりすることが、介護する人には大きなストレスになる。

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突然介護に直面する戸惑いや生活の変化もある。
介護される家族の様子が以前と変わってしまい、「もう元気な姿には戻らない」という喪失感もストレスになる。
「介護から解放されたい」と願うことに罪悪感を持ち、落ち込む。

うつになりやすいのは、責任感が強く真面目、一人で抱え込むタイプ。
「あなたががんばらないでどうするの」「ちゃんとやってるの」といった遠方の親戚からの言葉で追い込まれることもあるという。
 
うつ病であれば、抗うつ薬を服用し、休養して治療する。
 
予防するには、「なぜ自分ばかりがこんな目に遭うのか」「他の人は何もわかってくれない」などという孤立感や不公平感を周囲に語り和らげることだ。
介護の負担を軽くし「自分だけでやらなくてもいいんだ」と考え方を変えることが大事だ。
そのためには、家族やケアマネジャーらと相談し、介護に関わる家族を増やしたり、デイサービスを利用したりして、介護の態勢を整える。

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同じ境遇の介護者の集まりに参加して先輩からコツを聞いたり、デイサービスなど社会的な支援を利用したりして、自分だけで悩まないようにしたい。
 
特に認知症患者の場合、介護されている家族から「食事はまだ」「何時に出かけるの」と同じことを何度も聞かれてつらい思いをしていても、周囲に大変さを理解されづらいケースもある。
 
そうしたつらさを家族会などで聞いてもらうことで気が休まるという。
日記をつけて気持ちを整理する方法もある。
気分転換のため、介護を離れる時間を持って欲しい。
  
身だしなみに気を配れない、げっそりとやせた、人との関わりを避ける、という変化は気持ちが落ち込んでいるサインかもしれない。

介護うつ、あなたは大丈夫?
① ⬜︎ 時間があるのに眠れない
② ⬜︎ 何をするにもおっくう
③ ⬜︎ 趣味に関心がなくなり、何をやっても楽しくない
④ ⬜︎ いつも悲しい、むなしい
⑤ ⬜︎ 介護は他の人には任せられない
⑥ ⬜︎ 完璧な介護をしたい
⑦ ⬜︎ 介護を放棄したい
⑧ ⬜︎ 介護されていた人が亡くなった
⑨ ⬜︎ 動悸やめまい、息切れがする

①~④はうつの代表的な症状。
このうち三つが2週間以上続いたら精神科や心療内科を受診するとよい。
⑤⑥の考え方の人はうつになりやすい。
反対に⑦は燃え尽きる手前まで追い詰められている可能性がある。
⑧の場合は、介護の役割を終えた喪失感による「荷下ろしうつ」につながることがある。
⑨は不安による症状だと気づかず循環器科や耳鼻科を受診する人もいるが、パニック障害などの可能性がある。

朝日新聞・夕刊 2014.6.19


         
イメージ 1

               長野・小布施の路地裏      2015.9.20 撮影