ストレスが原因、過敏性腸症候群

おなかの不調、軽く見ないで ストレスが原因、過敏性腸症候群

育った環境も影響か
ストレスでおなかの調子が悪くなる過敏性腸症候群(IBS)の患者は日本人の成人の1割に上るとされる。
軽く見られがちだが、外出できないほど重症化することもある。
薬による治療の選択肢が広がっており、症状を理解して病気とつきあうことが大切だ。

自己判断せず検査を
IBSはストレスが体の症状として表れる病気の代表例だ。
下痢の多い「下痢型」、硬い便の多い「便秘型」、その両方がある「混合型」などのタイプがあ
る。
20~30代が最も多い。
通常の検査で異常はなく、腹痛や不快感、下痢、便秘を繰り返し、不安や緊張でさらに悪くなる。
市販薬を使いながら我慢しているケースが少なくないとみられるが、自己判断には気をつけたい。便秘型なのに、時々下痢をするために市販の下痢止めを使って、症状を悪化させ病院を受診する患者もいる。
 
腹痛や便の異常は大腸がんやクローン病潰瘍性大腸炎でも起きる。
別の病気ではないことを検査しておくことが重要だ。
発熱や関節痛、急な体重の減少などは、こうした病気の可能性を示すサインだ。

治療では、下痢や便秘を繰り返す悪循環を断ち切ることが目標になる。
 
まずは生活習慣の改善。
休息を十分にとり、脂っこい食べ物や酒、香辛料を控え、腸への負担を減らす。
 
生活習慣の改善で良くならない場合は薬による治療を検討する。
腸内の水分を吸収して便の量を調節する高分子重合体や、腸の運動を整える消化管運動機能調
節薬などを症状に応じて使い分ける。
抗うつ薬なども使うこともある。
 
下痢型では、腸の動きを活発にする神経伝道物質を抑えるラモセトロン(販売
名イリボー)が登場。
腹痛にも効果があり、08年に男性、15年に女性で保険適用された。
便秘型で効果が期待されるリナクロチドも現在、承認申請中だ。
 
薬で症状が和らぐと、不安も減り、おなかの状態も落ち善く。
初めに薬を使うだけで8割ほどは症状が改善する。
どういう状況で症状が出るかに気づけば、環境を変えてストレスを避けるといった対処
もしやすい。
  
一方、原因解明や治療に向けて研究も進む。
腸内のわずかな刺激に反応し、痛みを感じやすい特徴は、体質に加え、生まれ育った環
境も影響しているようだ。
 
幼少期に母親から離すストレスを定期的に与えたラツトを調べ、「腸管グリア細胞」という腸の神経活動を調節する細胞の形が変化していることを見つけた研究もある。
この研究では、成体になってからさらにストレスを加えると、変化が大きくなり、腸も過剰に動きやすくなっていた。
 
人でも、子どもの時の虐待や親との死別などの体験が、発症に関わるとの報告があり、同様の変化が起きている可能性がある。
グリア細胞の働きを正常にできれば、根治治療につながるのではないか、と話す専門家もいる。 


<まとめ> IBSを疑う症状
□ 長期間にわたって繰り返し症状が出ている
□ 通常の検査でがんや炎症などの異常がない

主な治療
生活習慣の改善
十分な睡眠、暴飲暴食しない

腸で慟く薬
・腸の活動を抑える
・便の量や固さを整える
・下剤、下痢止め


こんな時は別の病気かも・・・
・便に血が混じる
・急に体重が減る
・就寝中に排便したくなる


参考
朝日新聞・朝刊 2016.7.27