マイコプラズマ肺炎

「五輪肺炎」復活? マイコプラズマ肺炎が大流行

子どもに多く、せきが長引きやすいマイコプラズマ肺炎が大流行している。
国立感染症研究所によると、10月17~23日の1週間に全国約500の医療機関から報告された平均患者数は統計開始以来、過去最多を記録した。
専門家は、従来の抗菌薬が効かない耐性菌の影響を指摘、マスク着用やこまめな手洗いを呼びかけている。
 
マイコプラズマ肺炎は乾いたせきと発熱が特徴で、解熱後も数週間にわたってせきが続く。
マイコプラズマという細菌が原因で、くしゃみやせきのしぶきを介して感染する。
14歳未満が患者の約8割を占め、中耳炎や無菌性髄膜炎脳炎などを併発し重症化することもある。
 
世界的には3~8年程度の周期で流行を繰り返すと報告され、日本では1984、88年に大流行し、「オリンピック肺炎」と呼ばれた。
90~2000年代は落ち着いていたが、11、12年に大流行し、リオ五輪があった今年は4年ぶりの大流行となった。
 
その原因の一つと指摘されるのが耐性菌だ。
感染研によると、治療で主に使われているマクロライド系の抗菌薬に耐性を持つ菌が00年から増え始め、現在は50%以上と推定されている。
別の抗菌薬も使えるが、特に子どもで副作用の心配があるという。
 
90~00年代はマクロライド系の薬が効き、80年代までのような大流行が抑えられていた可能性がある。
耐性菌の広がりによって、かつてのような周期的流行が復活していくかみていく必要がある。


マイコプラズマ肺炎
肺炎マイコプラズマMycoplasma pneumoniaeによる原発性異型肺炎の一種。
ヒトから分離されるマイコプラズマには数種類あるが、呼吸器感染をおこすものは肺炎マイコプラズマだけで、マイコプラズマ肺炎は全肺炎の15~20%を占め、ときに散発的な流行がある。
この流行は4年周期でおこるといわれている。
症状は頭痛や倦怠をもって始まり、発熱や咳(せき)がある。胸部X線所見は、肺門部および下肺野にベール状の陰影が多い。
症状および陰影は1~3週間で改善することが多い。
回復期の寒冷凝集価が急性期の4倍以上に上昇したり、マイコプラズマ抗体価も上昇することが多い。
咽頭粘液からマイコプラズマを分離する。
治療はエリスロマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコールなどが有効である。

参考
朝日新聞 2016.11.8



関連サイト
マイコプラズマ肺炎のうつる確率と期間は?予防法も教えます
https://welq.jp/3256
・肺炎を起こすマイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae )というのは、細菌の仲間であると言われている。しかし疫学的な観点から正確に言うと「マイコプラズマは、細菌でもウイルスでもなく、微生物である」ということができる。

マイコプラズマは、人や動物の細胞に付着して増殖する病原体。
つまり、マイコプラズマは、人から人に感染して上気道炎や気管支炎、肺炎やその他の病気を引き起こす可能性のある微生物。
また、マイコプラズマには自己増殖ができるという特徴がある。

マイコプラズマという細菌自体は熱に弱く、石鹸でも除菌ができると言われている。
そのため、「マイコプラズマの感染力は比較的弱い」と言われる。
しかし、人から人へと感染し、大流行を起こすことがあるという意味では、「感染性は高い」という見方もある。
マイコプラズマの感染力は弱いが、感染性は高い)

マイコプラズマは、飛沫感染(咳やくしゃみによってうつる)や接触感染(細菌が付着した手すりや皮膚や粘膜に直接触れることでうつる)によって感染する。

マイコプラズマの潜伏期間は、だいたい2-3週間。
潜伏期間というのは、病原体が体に侵入してから、発症するまでの期間のこと。
潜伏期間には症状が無いので、病原体に感染したという意識はない。
また、マイコプラズマ肺炎を発症するのは、病原体に感染した人のうち、わずか3-10%。
そのため、多くの人はマイコプラズマに対して不顕性感染(感染しても発病しないで終わる)の状態といえる。

マイコプラズマの二次感染の可能性が最も高い期間は、発症の8日前~発症後2週間。
しかし厳密には、細菌の排出期間を6週間とする説もある。
つまり、マイコプラズマ肺炎は、潜伏期間を含め、長期間にわたり人に移す可能性がある病気であると言える。
また、人にうつす期間が長いということは、マイコプラズマが流行する理由の一つとなっている。

・5歳児の65%、成人の90%近くの人がすでにマイコプラズマに感染していると言われている。
つまり、どの年齢層においても、マイコプラズマ肺炎を発症する可能性がある。
しかし、マイコプラズマに感染後、肺炎が発症するかどうかは、個人差があると言われている。

マイコプラズマ肺炎の好発年齢は、6歳から12歳の子供であると言われている。
また、ある調査によると、マイコプラズマ肺炎は7歳から8歳に一番多い。

マイコプラズマ肺炎は乳幼児にも感染すると言われているが、5歳以下の小児の場合は、肺炎として発症することは少なく、比較的軽い風邪症状で終わることが多いといわれる。