高齢者に多い肺炎 定期予防接種 ①

高齢者に多い肺炎 受けた?定期予防接種

原則65歳以上に助成
肺炎は日本人の死因の第3位で、亡くなる人の大半が65歳以上だ。
高齢者には糖尿病や肺の慢性病を持つ人も多く、専門家は予防が大切だと指摘する。
(2014年)10月から肺炎の原因となる肺炎球菌の高齢者向けワクチンの定期接種も始まった。

肺炎の主な症状は、せきとたんと熱だ。
風邪やインフルエンザなどが上気道と呼ぶ喉の周辺で炎症を起こすのに対し、肺炎はもっと奥の肺にまで炎症が起こる。
主な原因はさまざまな細菌やウイルスで、風邪が長引くと傷ついた粘膜にこれらが入り込み、肺炎を発症しやすくなる。

肺炎球菌が3割
肺炎は日常生活の中でかかる場合、病院に入院中に感染してしまう場合、口の中の細菌などが誤って肺に入って起こす誤嚥性などに分けられる。
一般の生活の中で起こる肺炎のうち、約3割は肺炎球菌が原因だ。
 
肺炎球菌は肺に炎症を起こすだけではなく、いくつかの種類では脳の炎症の髄膜炎や中耳炎、心臓の炎症、関節炎など全身に広がる場合もある。
また、肺炎から敗血症になると高齢者は死亡率が上がる。

熱が出にくい
若い人が肺炎になった場合は、風邪のときより高い熱や粘り気のあるたんが出る。
感染初期に発熱があるのは体内で病原体とたたかう免疫の作用によるものだ。
一方、免疫の力が低下した高齢者では熱が出にくい。
喫煙などが原因となる慢性閉塞性肺疾患COPD)などを持つ人も多く、息を一気に出す力が弱いためたんも出せないことが多い。

肺炎球菌が原因で肺炎になると、抗生物質で菌を排除できても肺の機能が戻りにくい。
高齢者は肺の構造が変わり、働きが低下してしまう。
このため専門家はワクチンを活用した予防が大切だと強調する。
ワクチンは以前からあったが、今年(2014年)10月から高齢者向けが公費助成を受けられる定期接種になった。
国は接種を推奨している。
 
2018年度までは65歳以上が5歳刻みで助成対象となっている。
60~64歳も一部の病気を持つ人は対象だ。
自己負担額は住んでいる自治体により異なるので、市役所などに問い合わせてみるのもよい。
 
肺炎球菌は人から人に唾液などで飛沫感染するが、遺伝子のタイプの変化は少ない。
この点は毎年流行する型が変化するインフルエンザウイルスとは異なる。
 
肺炎球菌は現在、90種類以上が見つかっている。
10月からの定期接種のワクチンは23種類に対応したタイプだ。
ワクチンにはもともと子ども向けだったタイプもあり、こちらは13種類に対応する。
この2タイプは一部の球菌の種類は重なっているが、米国ではどちらも高齢者に対して打っている。どうしても心配な人は自費で打っても問題はない。
 
定期接種化は今年からだが長年利用されており、副作用は少ないとされる。
ただワクチン接種でショック状態などになる場合も想定し、打った後の30分は病院内にいるようにしよう。
肺炎予防に役立つワクチンだが、万能ではない。
睡眠や栄養をしっかり取り、体力や抵抗力をつけておくことが重要だ。インフルエンザに感染して肺炎になる恐れもあるので、
1週間ほど空ければインフルエンザのワクチンも打っておくとよい。

出典
日経新聞・夕刊 2014.11.21


参考
定期接種と任意接種の違い
定期接種のワクチンは、国や自治体が接種を強くすすめているワクチンです。
接種を受ける側にとっては経済的負担の少ない(ほとんどの地域で無料または一部負担で受けられる)ワクチンです。
一方、任意接種ワクチンは、接種するかどうか接種を受ける側に任されているワクチンですが、決して医学的に重要度が低いワクチンというわけではありません。

定期接種
ヒブ(インフルエンザ菌b型)
小児用肺炎球菌
DPT-IPV(四種混合)
BCG
はしか(麻しん)風しん混合
日本脳炎
DT(二種混合)
HPV(2種類)
みずぼうそう(水痘)
成人用肺炎球菌
 (1)65歳以上(1回)(2)60歳以上65歳未満で、リスクが高い場合(1回)
インフルエンザ
 (1)65歳以上(年1回)(2)60歳以上65歳未満で、リスクが高い場合(年1回)


任意接種
B型肝炎
ロタウイルス
インフルエンザ
おたふくかぜ
A型肝炎
狂犬病
破傷風