死因の3位肺炎を肺炎球菌ワクチンで予防

死因の3位肺炎 高齢者の予防接種カギ  重症化抑止 効果見極め

高齢者の肺炎は重症になりやすく、時には死に至ることもある.
2014年10月から65歳以上を対象に、予防のための肺炎球菌ワクチンの定期接種が始まった。
麻疹や風疹などの主に乳幼児向けのワクチンと違い、すべての肺炎を予防できるわけではなく、一定の費用もかかるため接種率もまだ低めだ。
成人がワクチンを受ける意味とは何だろうか。

肺炎による死亡リスクを下げられると専門家は考えている。
「肺炎球菌ワクチンの定期接種の相談をされたら迷わず打つよう助言している」と言い切る専門家もいる。


肺炎は、くしゃみの飛沫やつばなどに含まれた細菌やウイルスなどが肺に入り込んで起きる。
通常の風邪と似ているが、ひどくなると熱が下がりにくく、たんを伴うせきが続き、息苦しいなどの症状が出てくる。

体力がある若い人などは細菌やウイルスを攻撃する免疫機構が十分に働くため、重症化することはまれだ。免疫機構が衰えている高齢者の場合、事情が違う。
肺炎は心臓病に続き、日本人の死因の第3位。
肺炎で死亡する人のうち65歳以上の高齢者は97%も占める。
高齢者にとって肺炎にかかるのはまさに死と隣り合わせだ。

こうした点から、あらかじめ肺炎に対する免疫を高めて予防するのが肺炎球菌ワクチンだ。
肺炎の原因菌やウイルスは多くの種類がある。
65歳以上で人混みに出かけることで肺炎になり入院した患者のおよそ3割の原因は肺炎球菌によるもの。
肺炎球菌ワクチンはこの肺炎球菌による肺炎の重症化を防ぐのが目的だ。

現在日本で使われている肺炎球菌ワクチンは2つ。
米メルクの日本法人、MSDが販売するワクチンは九十数種類もある肺炎球菌のうち23種類に効果があり、生活空間にいる肺炎球菌の約7割はカバーできる。
免疫がつきやすいとされるファイザーのワクチンは13種類に効果があり、カバー率は約5割だ。
私的コメント;
肺炎の3割が肺炎球菌によることとして、そのうちの約7割に効果があると仮定。
肺炎全体に対するワクチンの有効率は、単純計算では2割ということになってしまいます。

肺炎球菌ワクチンで現在、定期接種として認められているのはMSDのワクチンだけ。
65歳から5歳ごとの年齢時に公費助成が受けられ、自己負担は数千円で済む。
現行制度は5年間かけてすべての高齢者に接種する計画だ。
私的コメント;
以前から多くの地方自治体は、任意接種として65歳以上で実費の一部負担をして肺炎球菌ワクチンを接種して来ました。
「65歳から5歳ごとの年齢時に公費助成」という言葉が現場で多くの混乱を招いています。
この混乱を理解するキーワードは「任意接種」と「定期接種」です。


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国が一部費用負担をして定期接種の対象とした背景には、個人の肺炎を予防することで医療費全体の削減につなげたいという狙いもある。
厚生労働省の専門分科会は定期接種にすると約5000億円の医療費を削減できると試算した。
私的コメント;
そのために組まれた予算を知りたいところです。
赤字国債発行の「打ち出の小槌」が続いています。

ワクチンを高齢者全員に接種する費用を見込んでも、重症化して入院する患者数が少なくなるので医療費は減るという理屈だ。
私的コメント;
メタボ対策としての特定健診にも莫大な予算が注ぎ込まれています。
そろそろ費用対効果を政府ないしは厚労省は公表して欲しいものです。


定期接種制度導入後の接種率は、導入前の20%から10ポイントほど上がったとみられるが、乳幼児向けのワクチンに比べると低い。
肺炎球菌ワクチンは定期接種の中でも強制性はないタイプに分類されている。
あくまで個人が自己判断に基づいて自身の体を守るために接種するという位置づけだ。

ファイザーのはまだ高齢者対象の定期接種ではないため任意の接種だ。
費用は自己負担で1万円程度かかる。
ただ厚労省はすでに乳幼児には、肺炎予防のためにファイザーのワクチンを定期接種として実施している。ワクチン接種で乳幼児の保菌者が減ることで、高齢者の肺炎患者が減る効果も出てきているという指摘もある。



ワクチン接種に抵抗感  社会全体の免疫は向上
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO87146000S5A520C1TZQ000/
・ワクチンはもともと免疫の弱い赤ちゃんや子どもなどを感染症から守る役目がある。
麻疹や風疹、破傷風、ポリオなどが代表例だ。
今は流行がない病気もあるが、海外からの病原体侵入に備えて定期接種している。
感染で死や重い障害に至るリスクがあるからだ。

ワクチンは、発病や重症化の防止に効果がある一方で、頻度は低いが一定の割合で副作用が生じる。
日本では学校などの集団接種で起きた裁判などの影響で、ワクチンへの抵抗感は根強い。
若い女性向けの子宮頸がんワクチンでも、接種後にまれに全身の痛みなどが出る問題の影響で接種の積極勧奨が中止されたままだ。

・高齢者が肺炎球菌ワクチンを打つ意義については、社会全体が肺炎に対する免疫を持てるメリットが大きいという考えがある。
個人の肺炎予防と同時に、保菌している人の割合が減り、ワクチン接種ができない人も肺炎から守れる。
ワクチン接種の利点と欠点の両面から考える必要がありそうだ。
日本経済新聞・朝刊 2015.5.24