がんは臓器によって予後が違う

がんは臓器ごとに別の病気と考えること

国立がん研究センターの最新情報によれば、男性が一生涯に何らかのがんを発症する確率は60%、女性は45%。
日本ではがん患者の診断情報などを集積する「がん登録」が遅れてきたため5年前の2010年のデータが最新となる。
 
・一生のうちにがんを発症する「生涯累積がん罹患リスク」は高齢化に伴って毎年1%程度ずつ上昇し続けている。
この傾向が続くと仮定して、単純に当てはめると日本人女性のおよそ2人に1人、男性は3人に2人が「がんになる時代」といえる。
 
・同センターによると、10年に新たにがんと診断されたのは約80万5000人でった。
内訳は男性約46万8000人、女性約33万7000人。
男女を合わせて臓器ごとにみると、多い順に胃、大腸、肺、乳房、前立腺だった。
 
・一方、13年にがんで死亡した人は約36万5000人で、内訳は男性約21万7000
人、女性約14万8000人だった。
男女を合わせると肺がんがトップで、胃、大腸、膵臓、肝臓が続く。
 
・簡単にいえば、肺、膵臓、肝臓では、がんを発症する患者に比べて死亡者数が多く、
治りにくいといえる。
一方、乳房や前立腺にできるがんは比較的、治りやすいといえる。
 
・がんの治りやすさを考えるための正確な指標は5年相対生存率という。
これは、あるがんと診断された人のうち5年後に生存している人の割合が、日本人全体に比べて
どのくらい低いかを示す数値だ。
100%に近いほど治りやすいがん、O%に近いほど治りにくいがんということになる。
 
・03~05年にがんと診断された人全体の5年相対生存率は58.6%。
今や、がんの6割近くが治る時代だ。
臓器の種類別にみると、乳房、前立腺甲状腺、皮膚は治りやすいタイプで、5年相対生存率
は9割近くに達している。
大腸、子宮、喉頭、膀胱、腎臓でも65%だが、胃、卵巣、血液の悪性リンパ腫では55%となる。また、食道、肺、肝臓の場合、それぞれ34%、30%、28%と大きく下がり、膵臓は7%と突出して数字が小さく治りにくくなっている。
「がん」とひとくくりするのではなく、臓器ごとに別の病気と理解する必要がある。
             (東京大学病院准教授 中川 恵一)
出典
日経新聞・朝刊 2015.4.19