生活習慣から痔を防ぐ

生活習慣から痔を防ぐ 食物繊維と水で腸内を調える 座りっぱなし、重たい荷物もリスク

「恥ずかしいから」となかなか治療に積極的になれない人が多い痔。
冬は水分摂取量や運動量が減り、痔になりやすい条件がそろいやすい。
痔は食生活や運動、排便など生活習慣が発症に関わる一種の生活習慣病
予防や治療の基本はこれらを改善すること。
まず、自分の便の状態を観察するところから始めたい。
 
肛門周辺の病気のおよそ8割を占めるのが痔だとされる。
通常いぼ痔と呼ぶ「痔核」、切れ痔と呼ぶ「裂肛」、トンネル状の「痔ろう」の3つの病気がその代表だ。
 
最も多いのが痔核。
肛門の内部や出口には静脈叢という細い血管の集まりを主体とした肛門クッションという柔らかな組織がある。
血液が滞ってこの組織がいぼ状に膨らんでくるのが、いぼ痔。粘膜部分にできると内痔核、肛門の皮膚の部分だと外痔核という。
裂肛は肛門の出口付近の皮膚が裂けた状態。
肛門周囲で大腸菌などによる感染症が起きて膿が貯まり、進行して肛門の内外を貫通してしまうのが痔ろうだ。
 
痔核は、排便時に破れると、便器に広がるような出血が起きることがある。
内痔核は痛みはあまり無いが出血しやすい。
 
痔核と裂肛は生活習慣の影響が大きい。
特に排便時の肛門への圧力が長引くことや、便が硬かったりゆるかったりで肛門に負担がかかるのが原因。
便秘で硬い便を息むことだけでなく、下痢で勢いよく出るのも刺激となる。
 
発症には姿勢も関わる。
座ったままや立ちっぱなし、重い物を持ち続ける、妊娠や分娩で肛門に腹圧がかかるなどだ。
排便時間がかかることも悪化要因の一つ。
 
予防には肛門周りに余計な圧力や負担をかけないことのほか、便秘や軟便を避ける食生活がとても大事だ。排便は3日(72時間以内)に一度はあるのが正常範囲。

起床後に水1杯
起き抜けに水をコップ1杯飲み、朝食を取ると腸のぜん動運動が促され、便秘対策になる。
豆類やコンニャクなど不溶性食物繊維は水で膨張しやすく便量が増える。
主食は玄米などの方が食物繊維が多い。
繊維を強化したシリアルなら手軽だ。
 
一方、アルコールやキシリトール、油分などの取り過ぎで下痢しやすい。
既に痔がある人は唐辛子など辛い食物は排泄時に肛門周辺を刺激するので避けた方がいい。
アルコールも炎症や感染を助長する可能性が高い。
 
便秘予防のためにも、便意を我慢するのは禁物。
便意には波がある。
一度消えると、次の波まで少し時間がかかり、その間に直腸内の便から水分が失われて硬くなるとますます出にくくなる。
便意から5分内に排便したい。
 
痔になってしまったら、どう対処すればいいのだろうか。
トイレットペーパーに血が付く程度の裂肛による出血ならば誰にでも起き、自然に治ることも多い。

大腸がんも疑う
ただし無痛の出血には大腸がんによるものもあり、痔だと思い込んでいると見落とすこともある。
痔だと鮮血、がんは黒ずんだ血などと言われることもあるが素人判断は禁物だ。
排便時の出血が続いたら、肛門科や消化器科などを受診、大腸内視鏡検査を受けた方がよい。
 
普段の生活では清潔を保つ。
温水洗浄便座での洗浄は有用だ。
痔の人が、トイレットペーパーでの拭き取りから温水洗浄に替え、薬が不要になることもある。
ただし、使い過ぎれば皮膚のバリア機能が損なわれるなど、別の悪影響もありえる。
 
軽度で生活に支障がなければ、慌てずに生活習慣を見直してみるのもよい。
突然の痛みが出た場合は横になるなどし全身の力を抜くほか、脱出物があるなら清潔にして押し戻す。
 
ただ、大量の出血は貧血を起こすこともあるので気をつけたい。
カット綿などを患部に当てて横になって休んだ後、受診を考える。
痛みが強い場合も受診しよう。
坐薬や塗り薬、便を軟らかくする飲み薬を使う。
薬で不十分なら手術が必要になることもある。
 
診察の際は、排せつ後の肛門の状態を写真に撮ると役立つこともある。
食べた物と便の状態など、自分で生活をチェックするよう心掛けたい。

   ◇   ◇

痛みを和らげたい場合は…
痔を手術せずに温存する場合、家庭で痛みを和らげる方法は痔の種類によって異なる。
痔核(いぼ痔)や裂肛(きれ痔)なら、基本は温める。
できればシャワーではなく、お尻をぬるま湯につけるなどする。
風呂に入れないほど痛みがひどい場合は、温めたぬれタオルを患部に当てるなどするとよい。
 
痔ろうの場合は、下痢を減らして清潔にしておくこと。
特に化膿して腫れている時は温めると逆効果だ。
痔ろうは市販の医薬品などでは治せない。
医療機関を受診する必要がある。
 
また、外に出た痔が下着でこすれるなどしてかゆくなることがある。
温水で洗い清潔を保つ。

 
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参考・引用
日経新聞 2017.2.25