耳の老化は30代から始まる

耳の老化は30代から始まる 自覚難しく不安なら受診

子音、高い音が聞き取りにくく/不安なら耳鼻科へ
「聞こえ」の悪さは、高齢者特有だと思いがちだ。
実際は、働き盛りの世代から聴力は老化し始めている。
進行すると対人関係などに不都合が生じ、仕事や生活に影響が出る。
聴力の変化にはうまく対処していきたい。
 
聴力の衰えは50~60代で気付くケースが多いが、実は30代から始まっている。
聞こえにくいと自覚するのは難しく、生活に支障が出て初めて分かるケースが多い。
 
同じく加齢で起こる老眼と比べると、聞こえの悩みを共有したり、対策を講じたりする例は少なく、困っている人は潜在的に多い。
耳は外側から外耳、中耳、内耳に分かれており、耳の老化のほとんどは内耳で起こる。
音は外耳道を通り、鼓膜の振動によって増幅される。内耳で電気信号に変換されて、脳に伝わる。
 
聞こえが悪くなるのは、内耳にある蝸牛という器官内の音を感じるセンサー、有毛細胞が加齢と共に傷むためだ。
傷付いた有毛細胞は再生しないため、加齢による難聴は治らない。
悪化すれば、最終的には補聴器が必要となる。
 
加齢性難聴の場合、まずは周波数の高い音が聞こえにくくなる。
子音の聞き間違いが増える。
「牛」と「くし」「寿司」など、高い周波数で構成されるカ行やサ行、タ行の音が聞き分けにくくなる。
 
早口の会話に追いつくのも難しくなる。
耳から脳に至る、聴覚の伝導路全体の情報処理スピードが遅くなるためだ。
聞きやすい音の範囲も狭くなり、一定のレベルを超える大きい音をうるさく感じる。
 
加齢に加えて、大きい音に長い間さらされるのも、有毛細胞を傷める原因になる。
若い頃から騒音の中で過ごしたり、耳を酷使したりしていると、40~60代になって耳に不自由を感じる可能性が大きい。
 
聴力の衰えの進行や、生活上で不便を感じる度合いには個人差がある。
職場の会議や地域の集まりなど大人数で会話すると、比較的軽度の難聴でも聞き取りに困るケースがある。中でも音が響く会議室での会話は、言葉が時差で耳に届くため、脳の処理が複雑になり、聴きづらさが増す。
 
聞こえに不安があれば、耳鼻科を受診したほうがよい。
一般の純音聴力検査に加え、言葉の聞き取り具合を調べる語音明瞭度検査をして診断する。
 
難聴に関わる遺伝子がある人は、早めに難聴になりやすいことが分かっている。
現在19種類の遺伝子を、血液検査で調べることが可能だ。
保険適用の対象で、費用は1万1640円(3割負担)。
大学病院などで受けられる。
 
私的コメント;
遺伝子を、血液検査で調べることによって難聴の予防や治療が可能であれば意味があるのでしょうが。

聴力を保つには、音量への配慮も不可欠。
イヤホンを使う時、85~90デシベルより小さい音なら耳を傷める心配が少ない。
電車や地下鉄の車内でイヤホンから音漏れしていたら、音量は90デシベルを超えているので気を付けたい。

1時間聴いたら、1時間休ませることも大切だ。
 
糖尿病や高血圧、肥満患者は平均より聴力が悪い傾向にある。
カロリー制限が加齢に伴う難聴の進行スピードを抑えたという動物実験もあるという。
 
聞こえの悪化は周囲との人間関係や本人の精神面に影響を及ぼす。
話がうまく聞き取れないと、生返事や聞き返しが増えて、円滑なコミュニケーションが難しくなる。
中には会話を避けたり、引きこもりになったりする人もいる。
 
早いうちから聴力の老化の進行を遅らせる生活を心がけて、耳の不調が気になったら専門医を訪ねたい。

参考・引用一部改変
NIKKEIプラス1 2018.9.22