突発性難聴

耳が急に聞こえない 「突発性」は治療遅れると回復に差

朝起きたら片方の耳が聞こえなくなっていた・・・。
突然こんな症状になった時は要注意だ。
音が聞こえづらくなる難聴には大きく分けて「伝音性」と「感音性」があり、治療法が異なる。
すぐ耳鼻科で診察を受けよう。
 
空気の振動である音は、耳の穴を通って鼓膜を振るわせ、さらに奥にある耳小骨に伝わる。
振動を伝えるこうした器官の不調で起きるのが伝音難聴だ。
振動は、耳小骨より中にある内耳で電気信号に変わり、聴神経を経て脳に伝わる。
この段階の不調で起きるのが感音難聴だ。両者は聴力検査で区別がつく。

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急に聞こえなくなった場合、伝音難聴なら本人に思い当たることがあるのが普通だ。
「耳に水が入った」「耳かきをしていて子どもにぶつかられた」「頭を強く打った」などだ。
自然に治ることもあり、鼓膜を再生させるなど比較的はっきりした治療法もある。
 
やっかいなのは感音難聴だ。
急な感音難聴の8、9割は『突発性難聴』。
原因は不明とされているが、ウイルス説や内耳の血のめぐりが悪くなる循環説が有力だ。
 
突発性難聴は、時間帯、季節などに関係なく、突然、非常に聞こえづらくなる。
通常は片耳だけだが、まれに両耳で起きる。
めまいや耳鳴りが伴うこともある。
ストレスや疲れがたまると起きやすいのではないかという見方もある。
 
治療にはステロイドやビタミン剤などが使われる。
発症してから治療を始めるまでの期間が短いと治療効果が高くなるとされる。

突発性難聴で某病院に入院した約300人を調べたデータでは、聴力がよくなった率は、治療開始が発症から6日以内だと64%、7~13日だと58%だったが、14日以上だと30%に下がった。
突発性難聴は『治療を早く』の一言に尽きる。

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突発性難聴と似たような症状で「急性低音障害型感音難聴」という病気もある。
人の声などより低い音が聞こえにくくなり、耳がつまったような感じがする。
耳鳴りがある場合も低音になるのが特徴だ。
原因ははっきりしない。
治療法は突発性難聴とほぼ同じだ。
 
良性の脳腫瘍である「聴神経腫瘍」でも、突発性難聴のような症状になることがある。
普通はゆっくり進むが、2割ぐらいは難聴が急激に起きるといわれている。
 
腫瘍はMRIで見つけることができ、手術などの治療でほぼ治る。
ただ、MRIは検査を受けるまでに時間がかかることがある。
突発性難聴が疑われたら、MRIの診断を待たず、すぐ治療を始めた方がよい。


急に耳か聞こえなくなった
① ⬜︎ 音が聞こえづらく、耳がつまったような感じがする
② ⬜︎ 耳かきをしているときに子どもにぶつかられた
③ ⬜︎ 思い当たる理由もなく突然まったく聞こえなくなった
④ ⬜︎ めまいや耳鳴りがする
⑤ ⬜︎ MRIで調べても何も見つからない
⑥ ⬜︎ キーン、ブーンなど高低いろいろな音の耳鳴りがする
⑦ ⬜︎ ブーンという低い音だけの耳鳴りがする

突発性難聴の可能性があります。耳垢がたまって何らかの拍子に外耳道が完全につまった時でも起きます。また、ライブハウスなどの大音響で難聴になることもあります。
② 鼓膜が破れた可能性があります。びんたが耳に当たったときなどにも起きます。
③④ 突発性難聴や急性低音障害型感音難聴が考えられます。めまいや耳鳴の症状がないこともあります。聴神経腫瘍も同様の症状を示すことがあります。
MRIで腫瘍が見つからなければ突発性難聴などの可能性が高まります。
⑥⑦ 突発性難聴の耳鳴りはいろいろな高さの音ですが、低音障害型感音難聴では低音だけで、耳がつまった感じもあります。これらは早期に治療することが聴力回復の決め手です

<関連サイト>
厚生労働省などが支援する「難病情報センター」のサイト
http://www.nanbyou.or.jp/entry/164


参考
朝日新聞 2015.2.26