老人の難聴

聞こえにくさ、意欲に影響も 難聴、気付いたら早く受診

洗濯機のお知らせ音に気づかない、複数の人が同時に話すとよく聞き取れない……。
加齢とともに聞こえづらさを感じるようになると、人と話すのがおっくうになることもある。
耳からの情報が減れば、脳の活動にも影響しかねない。
 
加齢とともに聴力の衰えが進む人は少なくない。
難聴の程度には、小さな声が聞き取れない軽度から、かなり大きな音ならどうにか感じられる重度まで大きく四つに分かれる。
日本補聴器工業会などの調査では、74歳以上の44%が難聴またはおそらく難聴だと思うと答えた。
65歳以上の約1500万人が難聴という推定もある。
高い音から聞こえなくなることが多い。
 
「よく知っている話題はいいが、知らない話題になると聞こえにくいと感じる」
「はっきり話されるとわかるが、ボソボソした声がわからない」
こういった経験があれば、要注意だ。
「後ろから呼びかけても反応がない」
「電子レンジなどの電子音が聞こえていない」
「テレビの音量が大きくなった」など周囲が先に気づくこともある。
 
聞こえにくさを放っておくと、話がよくわかっていないのに返事をして相手に誤解を与えたり、何度も聞き返したりして、会話がうまく進まなくなることもある。
スムーズなコミュニケーションができなくなると、人と話すのがおっくうになり、意欲が減退して情緒が安定せず、引きこもりがちになって抑うつ状態になる人もいる。
耳から入ってくる情報が減ると、脳の活動が鈍る恐れもある。
うつ病認知症の予防のためにも、早めに耳鼻咽喉科への受診が勧められる。

音伝える細胞に衰え
音や声が次第に聞き取りにくくなるのは中耳炎や耳あかが原因のこともあり、その場合は治療で良くなる。
一方、聴神経に腫瘍が見つかれば、経過観察とともに放射線治療や手術が必要なこともある。
ただ、高齢者に最も多いのは老人性難聴だ。
内耳や神経系の働きの衰えで起こり、治療は難しい。
 
音は、内耳から聴神経を通じて脳に伝わり、言葉や音楽として認識される。
内耳の蝸牛の中には音を聞き取るのに必要な有毛細胞と呼ばれる細胞が2種類ある。
一つは音を脳に伝える内有毛細胞で、約3500個。
もう一つは音の信号の感度を上げるなど、内有毛細胞を助ける外有毛細胞で、約1万2千個。
いずれの細胞も再生しない。

年齢とともに、まず外有毛細胞の機能が次第に衰え、音の高低の聞き分けや言葉の識別が
難しくなる。
さらに内有毛細胞の機能が失われ始めると、音そのものが聞こえづらくなると考えられている。
 
診察では、音の大きさや周波数ごとに聞き分ける能力などを詳しく検査する。
補聴器で聴力の改善を期待できることも多い。
検査の数字で機械的に判断するのではなく、生活や仕事のどんな場面で困っているのかよく聞いてから、補聴器の使用を考えればよい。
 
重度の難聴で補聴器を使っている人もいるが、聞き取りが不十分な場合には、人工内耳の手術などを検討することになる。


補聴器「試してから」
補聴器には、①耳あな型②耳かけ型③ポケット型がある。
最近は防水型などもあり、デザインの種類も増えてきた。
  
現在は音量や周波数などを細かく調整できるデジタル補聴器が主流だ。
騒音を抑え、小さな音は上げるが、大きな音は大きすぎないようにするなど自動調整してくれるタイプもある。
基本的な性能が上がってきているので、多くの人はシンプルなもので十分だ。
  
補聴器はめがねとは違い、使い心地をすぐに判断できない。
最初は雑音が不快に感じることもあり、調整や慣れが必要だ。
認定補聴器専門店で購入することが勧められる。
聴力をはかる機器がそろっており、認定補聴器技能者が、要望や相談に応じて細かく調整してくれる。
 
職場や家など、本人が困っている場所で実際に試して効果を確認してから、購入を決めた方がよい。
購入後も点検や調整を繰り返してもらう。
 
ただ、周囲は「補聴器をつけたから、聞こえているはずだ」と思いがちだが、若い時とまったく同じにはならないということを理解してあげてほしい。
スムーズなコミュニケーションのためには、騒音を避け、なるべく静かな環境を選ぶ。
話すときには正面から互いの顔や口元が見えるようにして、はっきりゆっくり話してあげることが大切だ。


難聴の程度分類
①軽度
小さな声が聞きづらい。騒音下での会話が聞きづらい
②中等度
普通の会話が聞きづらい
③高度 
普通の会話が聞き取れない
④重度
耳元で話されても聞き取れない。
自分の声が聞こえない

出典
朝日新聞・朝刊 2015.7.7


私的コメント
つい最近、突発性難聴に罹(かか)られた方がその時の体験を話されました。
「自分の声が聞こえなかった」と平然と話されていましたが、さぞかしびっくりされたことでしょうね。