花粉―食物アレルギー症候群」(PFAS)

花粉症の人、食べ物にも注意 モモ食べると口がかゆい・・・

花粉症+果物・野菜 → 口の中にアレルギー  似たタンパク質が反応する恐れ
鼻水が出たり、目がかゆくなったり、花粉症の人にはつらい春の季節。
中には、果物や野菜を食べたときに口の中がかゆくなったり、のどがいがいがしたりする人もいる。
その症状、実は花粉症と関係しているようだ。

スギ花粉、雄花枯らして飛散減らせ 油や菌を利用
2年ほど前、千葉県に住む当時中学2年生の男性は食卓に並んだカットされたモモに手をつけなかった。
不思議に思った母親に理由を聞かれ、こう答えた。
「のどがいがいがするから食べたくない」
 
さいころは普通に食べられたが、次第にリンゴを食べても似た症状が出
るようになった。
それ以降、新鮮なモモやリンゴを避けるようになった。
 花粉症の人が果物や野菜を食べて、口の中などにアレルギー反応が起きるのを「花粉―食物アレルギー症候群」(PFAS)と呼ぶ。
男性は春先に花粉症の症状が出る。
検査は受けていないが、PFASの可能性がある。
花粉症がきっかけで食べられなくなったのだと思われる。

花粉症のアレルギー反応は、目や鼻などから体内に入った花粉を追い出そうとして抗体が作られ、その抗体が花粉とくっつくことで目や鼻が刺激される。
 
なぜ果物や野菜を食べることで同じような症状が出るのか。
例えば、シラカバの花粉には「1Betv 1」というたんぱく質がある。
これに似たたんぱく質がリンゴなどにも含まれ、抗体がこれと反応する「交差反応」を起こすとアレルギー症状が出る。
このため、シラカバの花粉症の人がリンゴを食べると口の中のかゆみや唇のはれが生じる。
 
症状は主に口内のみで軽いことが多い。
ただ、呼吸困難など全身症状がで報告もあるという。
自分では気付いていない人も多い。
特定の果物を食べて、いつも違和感があるならばアレルギーの専門医にかかったほうがよい。
その際、花粉症であることと果物を食べて症状が出たことを伝えることが大切だ。
 
血液検査はどんな物質や食品にアレルギー反応が起こるのかを調べる。
針の先端を食品などに刺し、それを腕などに押しつけて反応を見るテストはより精度が高い。
これらの検査で確定診断が出来れば、対象の食物を食べる試験を行わずに済む。



加熱すれば多くはOK
花粉の種類によって注意すべき食物は違う。
2016年の食物アレルギー診療ガイドラインなどによると、カバノ本科のシラカバやオオバヤシャブシの花粉症患者の20~40%に、モモやリンゴなどのバラ科の食物への合併症があった。
イチゴや豆乳などでもアレルギーが起こりうる。
スギやヒノ牛の花粉症だとトマト、イネ科はメロンやスイカに起こりうる。
ただすべてに反応するわけではない。
 
PFASの患者数ははっきりしていないが、16年に行われたあるアンケートでは、「子どもが花粉症だと思う」と答えた親は31.5%だった。
子が花粉症だと答えた親に、子どもが果物を食べて口やのどなどに違和感を感じたかどうかを尋ねると、うち5人に1人が「感じたことがある」と回答した。
  
花粉症の低年齢化が進んでいることもあり、PFASは子どもでもよく見られる。
 
対策はアレルギーの原因となる食物を避けるのが基本だが、たんぱく質は熱に弱いため食品の多くは加熱すれば食べられる。
生のリンゴを食べると口がかゆくなってもパイやジャム、加熱殺菌されたジュースなら症状が出ないこともある。
  
ただ、確立された治療法はない。
リンゴのPFAS患者にわずかな量を体に取り入れることで体質改善を試みたところ、一時的な効果があったという報告もあるが、ガイドラインは治療効果について、「議論の余地が残されている」としている。

ある専門家は「外ではマスクやメガネをして、帰宅したらうがいをするなど、まずは花粉症の予防が大切だ」と話す。

朝日新聞・朝刊 2019.2.13

参考
花粉・食物アレルギー症候群(PFAS)
https://wsnoopy.wixsite.com/mysite/blog/花粉-食物アレルギー症候群-pfas