本物の風邪は受診の必要なし

本物の風邪は受診の必要なし まず3症状をチェック

風邪はありふれた病気の一つであり、多くは数日から1週間程度で自然に治ってしまう。
一方で「汗をかくと風邪が治る」「風邪は抗生物質で治る」など、間違った認識を持っている人も少なくない。

風邪は誰もがかかった経験のあるありふれた病気だ。
毎年かかるという人も珍しくはない。
しかし、よく知られた風邪がどういう病気なのか、きちんと説明することができるだろうか。

「自然に良くなる上気道のウイルス感染症」と風邪を定義する場合もあるが、インフルエンザも自然によくなるのでこの定義には問題がある。

「上気道」とは気道の上の部分に当たる「鼻、のど」のこと。ここにウイルスが感染することで風邪を発症する。
「自然に良くなる」病気であることに注目したい。
薬などを飲まなくても、放っておいてもやがて治ってしまうことを意味する。
つまり、本当に風邪であれば、わざわざ医療機関を受診する必要はないわけだ。
<私的コメント>
本当に風邪であるかどうかが分かれば何の苦労も要りません。
患者さんは、きちんと診断をつけてもらいたくて医療機関を受診するわけです。
大した診察もせずに「風邪ですね」と診断するドクターもいますが、この診断が果たして正しいかどうかもあやしいのです。
風邪でも当然「咳」が出ます。
風邪が「上気道のウイルス感染症」という定義であれば、風邪の際の「咳」も「上気道」の症状ということになるのでしょうか。
一般的には、「咳」は「下気道」(気管や気管支)の症状に分類されます。
それの従えば、「咳」が出た途端に「上気道のウイルス感染症」の定義に収まらなくなり、風邪ではなくなってしまうことになります。

風邪のとき、「病院に行っても意味がない」
日本人の風邪にまつわる誤解はたくさんあるが、中でも一番は「病院に行ったほうがいいと思っている」ことだ。
ライノウイルスやコロナウイルスをはじめ、風邪の原因となるウイルスは200種類以上ある。
そのすべてのウイルスに効く薬はないから、本当の意味で“風邪を治す薬”は存在しない。
もともと自然に治る病気なので、病院やクリニックに行く必要もない。
むしろ体調が悪い中で何時間も待たされるだけでなく、他の患者さんから別の感染症をうつされるリスクがある。
一般に風邪薬と呼ばれる薬は対症療法の薬。
「熱を下げる」「鼻水を止める」などの症状を抑える作用があるだけで、風邪の原因であるウイルスを殺すわけではない。
抗生物質(抗菌薬)は細菌を殺すが、ウイルスには効果が全くない。
症状がつらいときは対症療法の薬を飲むのもいいが、それなら薬局やドラッグストアで市販薬を買えば済む。
<私的コメント>
しかし、こういった論法は、すでに風邪とわかっているつまり診断が確定していることが前提です。
いわゆる結果論なのです。

まずは風邪の3症状をチェックする
ただし、健康な大人が医療機関を受診する必要がないのは“本物の風邪”の場合だ。
しかし、風邪のような症状であっても実は深刻な病気だったということもある。
風邪がきっかけで肺炎などを起こすこともある。
いわゆる「風邪をこじらせる」という現象で、風邪のウイルスによってダメージを受けて免疫力が落ち細菌感染するわけだ。
では、風邪かそうでないかをどうすれば判断できるのだろう。

それは「3症状チェック」を行うことだ。
3症状とは「咳(せき)」「鼻水」「のどの痛み(嚥下時痛)」だ。
どの症状が強いかはそのときどきで変わることがあるが、本物の風邪であれば多かれ少なかれ、この3症状が表れるという。

48時間以内に3症状がそろえば、ほぼ風邪と考えていい。

最初は一つの症状しか出ないこともあるが、48時間以内にこの3症状がそろってくれば風邪と考えていい。
特に鼻水がメインの症状の場合、命に関わる重大な病気ということはほとんどない。
<私的コメント>
そうでなくとも(たとえばインフルエンザでもマイコプラズマ肺炎でも溶連菌感染症でも)命に関わる重大な病気ということはほとんどありません。

風邪への対処法~汗をかいても治るわけではない
では、咳、鼻水、のどの痛みがあり、風邪の可能性が高いとき、どう対処するべきだろう。
市販薬であれ処方薬であれ、風邪には症状を抑える対症療法の薬しかない。
また、(本物の?)風邪であれば医療機関にも行く必要はない。
すると、おとなしく布団に入っていればいいのだろうか。
症状が軽ければ、必ずしも寝込む必要はない。
こじらせないようにするため体に負担をかけないよう注意すべきだが、マスクをして、風邪を広めないように注意しながら仕事をしても構わない。
ただし、熱が38℃近くある、だるい、といったときは仕事を休んで寝ているほうがいいだろう。
<私的コメント>
言われなくても、普通はそうします。

症状が重い場合、ウイルスを大量にばらまくことになるので、人にうつさないためにも外出は控えたい。
風邪をひいたとき、普段より布団を多くして「汗をかくと治る」と思っている人も少なくない。
眠っているとき汗をかくと、熱が下がり体調が良くなった気もする。
しかし、これは気のせいだ。
汗をかくと気化熱によって体温が下がるのは確かだが、熱が下がったからといってウイルスが死ぬわけではない。
ただし、風邪のように根本から治す薬がない病気では症状緩和にプラセボ(偽薬)効果は大きいので、一概に否定は出来ない。
プラセボとは、何の効果もない食品などでも「病気に効く」と信じて飲むと薬のような効果を発揮すること。
ガンガンに暖房をかけるなど、極端なことさえしなければ、布団の中で汗をかいても問題ない。
もちろん、無理に汗をガンガンかかせる必要はないが、寒いときには布団をかけ、熱が上がって体が熱くなったらタオルケットにするなどでよい。

風邪に効くサプリメントはある?
食欲がなければ無理に食事をしなくてもいいが、水分補給は心がけよう。
風邪で熱が出ているときは、熱に伴い汗として出てくる水分が多くなる(不感蒸泄)ので、多めに水分を取るようにしたい。
水分を取らないと腎臓に負担がかかり、腎不全の危険も出てくる。
ただし、カフェインには利尿作用があるので、コーヒーや緑茶を大量に飲むと脱水を進めてしまう。
もっとも、毎日何杯もコーヒーを飲んでいる人が急にやめると、カフェインの離脱症状で頭痛が起こるなど逆効果になることもある。
大量に飲むのは良くないが、完全にやめてしまうのも注意が必要だ。
1日に2~3杯ならあまり気にする必要はない。
アルコールは分解に水が使われるので脱水になりやすいうえ、眠りの質も悪くする。
もっとも、タマゴ酒のように少量のアルコールであれば、体を温める効果もあっていい。
大事なのは風邪だからといって“極端な行動を取らない”ことだ。
風邪には有効な根治薬が存在しないが、一方で亜鉛やビタミンCなどのサプリメントが風邪に効くという話もときどき耳にする。
しかし、これについても岸否定的な意見は多い。

特定のビタミンや栄養素で最も研究が多いのはビタミンCだが、いまだに明確な質の高いエビデンス(科学的根拠)は出ていない。

基本は「おとなしく寝ている」こと
「風邪の対処法」をまとめてみると・・・
まずは、風邪の3症状である「咳」「鼻水」「のどの痛み」をチェックしよう。
この3つの症状がそろっていれば、ほぼ風邪だと考えていい。
熱があって起きているのがつらければ、同僚にうつさないためにも会社を休んで寝ていよう。
<私的コメント>
患者さんの「数日間、風邪で寝込んでいた」という言葉だけからも、医師はインフルエンザを想定することになります。
症状が強くて起きてなんかいられないワケです。
「寝ていた」と「起きてられない」とは微妙に違います。
医師は、そのあたりを嗅ぎ分けることができるかどうかで臨床力に差が出ます。

言うまでもなく、「人にうつすと早く治る」というのも迷信にすぎない。
室温は快適な気温に。寒ければ暖かくするべきだが、汗をかくほど室温を上げても風邪が早く治るわけではない。

熱があるときは、多めに水分を取るよう心がけよう。
食事は消化に良いものを心がけていつも通りでいいし、食欲がなければ無理に食べる必要はない。
ただし、熱がある場合、水分補給は忘れないようにしたい。
コーヒーやアルコールは控えめにしよう。
のどの粘膜を刺激するので、タバコも吸わないに越したことはない。
入浴は体温をワンランク上げ、だるさが強くなることもあるので長風呂はいけないが、短時間の入浴やシャワーなら構わない。
むしろ汗だくのままでいると不潔なので、調子の良いときにシャワーで汗を流しよう。
あとは、おとなしく寝ているだけでいい。
通常の風邪なら2~3日程度で自然に治る。
本当に風邪ならこれで大丈夫だが、問題は「風邪だと思っていたら違う病気だった場合だ。

参考・引用一部改変
日経Gooday 2018.12.27