結核、早期発見へ正しい知識を

結核、早期発見へ正しい知識を 昨年の新規発症患者2割、受診まで2カ月超

かつて国民病だった結核の患者数は、戦後、減ってきたが、近年、結核への意識が薄れたことによる発見の遅れや、高齢者の発病増加、来日する外国人の新規発病など新たな問題が起きている。
過去の病気と思わず、正しい知識を持ち、対処することが大切だ。

関東在住の会社員の男性(59)は今秋、せきが止まらず、近くの医療機関を受診した。
胸部X線と血液検査の結果は肺炎疑い。
しかし紹介先の病院で結核と診断され、即日入院した。
 
感染経路は不明だった。
 
「何で俺が」と理不尽に思ったが、数日たつと不安に襲われた。
「職場の仲間や知人に感染させてしまったのではないか」
 
約2ヵ月前から体調が優れなかった。
だるく、多量の寝汗もかいた。
朝にはたんが出た。
いつもと違うと感じつつ、夏の暑さや喫煙のせいと思っていた。
結核とは思いもしなかった。
 
男性は約1ヵ月間の入院中、毎日、粉薬と11錠の錠剤をのみ、他人に感染させる恐れがなくなった時点で退院した。
結核は過去の病と思っていた。発見がさらに遅れ、誰かに感染させていたらと思うと恐ろしい」と振り返る。
 
厚生労働省によると、国内の2017年の新規患者は1万6789人。
”コメント”
これはあくまでも診断がついて厚労省に届けられた新規患者数です。
いかにも正確なように1桁の数まで書かれていること自体、逆に信頼性が低くなります。
厚労省の統計」が云々と言われる所以でもあります。

人口10万人当たりの新規患者数(罹患率)は13.3で前年より0.6ポイント減ったが、約2300人が死亡、結核はいまも日本の重大な感染症だ。
罹患率は米国の約5倍、英仏の2倍弱にのぼる。
 
新たな患者は、この男性のように受診が遅れるケースもある。
昨年の新規肺結核患者で症状がある人のうち、症状が出てから受診まで2ヵ月以上かかった人は20.8%いた。
02年以降最高となった。

高齢者・外国人の患者も増
結核は1950年まで日本の死因の第1位だった。
60年代半ばから約15年間は新規患者が年約10%ずつ減ったが、その後減少率が鈍り、年3~4%程度が続いている。
 
目立つのが高齢者の発病。
17年の新規患者を世代別でみると80代が3割弱で最多、90代は増加傾向。
結核患者が多かった時代に感染し、長い潜伏期間を経て抵抗力が落ちて発病するとみられている。
 
また新たな問題となっているのが外国生まれの患者増加だ。
17年は前年より192人増えて1530人となり新規患者全体の約9%。20代は新規の約63%を占めた。
フィリピンや中国、ベトナム、ネパールなどが多い。
留学や技能実習などでの来日が増え、日本語学校での集団感染も報告されている。
外国人労働者の受け入れ拡大に向けた改正出入国管理法が8日に成立、今後さらに課題となりそうだ。
 
国は罹患率を20年までに10以下にする目標を掲げる。
そのため、日本で患者が多い6カ国から長期滞在ビザを申請してやってくる外国人を対象にした入国前の結核検査を、今後実施する予定。
高齢者が通うデイサービスでの健診の呼びかけも進める。
結核研究所のK所長は「目標達成には総合的な対策が必要だ」と話す。

初期 風邪と似る 「症状2週間以上 受診を」
結核結核菌による感染症だ。
菌を体外に出している人がせきやくしゃみをすると空気中に菌が飛び散り、それを吸い込むことで感染する。
 
その後、菌が増殖して体の組織をおかすのが発病だ。
感染してもほとんどの人は免疫によって菌が封じ込められて一生発病しない。
1割程度は免疫が落ちたときに発病する。
感染しただけや、発病しても菌を体外に排出していない場合は周囲の人にうつすことはない。
換気の悪い環境で感染しやすいが、菌は外に出て紫外線に当たると急速に感染力を失う。
 
治療は、複数の種類の薬を併用し、半年にわたって毎日のみ、菌を完全になくすのが基本だ。
1種類だとその薬に耐性を持った菌が増殖してしまう。
国内でも複数の薬に耐性を持つ多剤耐性結核の患者が確認されている。
薬をのむのが不規則になったり中断したりするのも薬剤耐性菌を広
げる原因だ。
防ぐには医療スタッフが手渡しした薬を、目の前で患者にのんでもらい確認する。
 
結核の初期症状はせき、たん、発熱など風邪と似ている。
長年、結核治療に携わる複十字病院(東京都清瀬市)のS副院長(56)は「症状が2週間以上続く場合は、何らかの病気があると思って医療機関を受診し、自覚症状を医師に伝えて欲しい」という。  

参考・引用 一部改変
朝日新聞・朝刊 2018.12.19