過敏性腸症候群

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ストレス自覚し、空腹感大切に


受験当曰の朝や大切な仕事の会議前、急におなかが痛くなり、くだってしまった。
当然、「よりによって、こんな時に……」と思ってしまう。

ただ、そういえば、日常生活の中で、繰り返し、こんな
症状があった。
通勤電車の中、人前で何か発表しようとした時、急におなかが痛くなり、トイレに
駆け込みたくなる。
どうも、一過性の緊張で調子が悪くなっているのではなさそうだ。
ちょっとした刺激に腸が感じやすくなっている「過敏性腸症候群(IBS)」
かもしれない。

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IBSは、小腸や大腸を検査しても、見た目はきれいで、栄養吸収の働きも悪くない。
なのに、腹痛や不快感を伴って、便通異常が起きてしまう。
下痢や便秘、排便回数の増減が3カ月以内に、月に3日以上あり、排便ですっきり
するなら、あてはまる。

先進国では、人口の1~2割、消化器科を受診する患者の約3割を占めるというデータ
があるほど、珍しい症状ではない。
放っておいても、命にかかわるわけでもない。

ただ、いつも、「おなかが痛くなるかもしれない」「下痢をしそうだ」などと、
緊張しながらの生活はつらい。
すると、不登校になったり、仕事に悪影響が出たりすることもあるので、
早めの対処が肝心だ。

引き金の筆頭は、やはりストレスだ。
どうやって気づくかが、改善の第一歩になる。
脳と腸の相関を研究している東北大の福土(ふくど)審教授(行動医学)は「IBSの
人には、ストレスを抱えていても、性格的に感情を言葉にできない『失感情症』の人
が多い。
まず、自分のストレスを言葉にして、自覚することが大切です」と話す。
うつ状態や不眠もリスクになる。

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食事も大切だ。
特に食べる時間や回数が不規則だど、腸の収縮リズムが崩れる。
すると腸が空腹時に行う、清掃機能が働かない。
群馬大学の伊藤漸名誉教授(消化管生理学)は「空腹感は『清掃完了』の合図。
一曰一回は感じることが、おなかの健康を保つひけつです」と話す。

食物繊維をたくさんとり、刺激物になる、トウガラシな
どの香辛料、コーヒーも控えめがいい。

IBSは、2006年に国際診断基準が改訂され、理解が進んでいる。
適切な治療を受ければ、生活の質が高められる。

受診して、ほかに病気がないことを確認したうえで、生活習慣の見直しや、乳酸菌
製剤、抗コリン薬などの薬物を使うかどうかを相談してみるといい。
必要に応じて、抗うつ薬抗不安薬を併用や、心理療法を行うこともある。

最近は、かぜなどの感染症後、腸が過敏な性質に変化することが知られてきた。
福士さんは「かぜは治ったのに、おなかの不調だけが1カ月以上続くようなら、
一度、消化器の専門医に相談してほしい」と話している。

相談ナビ
過敏性腸症候群と症状が似たものに、大腸がんや潰瘍性大腸炎クローン病など
重い病気もある。
特に、血便があれば、必ず内視鏡検査を受けて、きちんと診断してもらう。
製薬企業が共催するウエブサイト「おなかケアどっとこむ」
(http//www.onaka-care.com/) に解説が掲載されている。
       
朝日新聞・夕刊 2008.1.28
版権 朝日新聞社


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