腎臓の働きと検査

腎臓は主に5つの働きをしています。

1.尿として老廃物を出す
血液中の尿素窒素、クレアチニン、尿酸など老廃物をろ過し、余分な水分と共に尿をつくっています。


2.電解質のイオンバランスを保つ
1日におよそ150リットルの原尿から体に必要な電解質を99%再吸収し、残り約1%(1.5リットル)を尿として出し、からだの電解質の濃度を一定に保っています。
それによって、細胞内外の水分を一定に保ったり、神経の伝達、筋肉の収縮、止血などに作用しています。

電解質とは、血液や体液の中に存在するナトリウム・リン・カリウム・カルシウム・塩化物イオン・リン酸イオン・重炭酸イオンなどのこと


3.血圧の調整をする
腎臓はレニンという酵素を産生しています。
これが血液中のタンパク質と反応して強力な血管収縮作用をもつアンジテンシンIIとなり血圧を上げます。

※レニンの作用によって血圧を上げたり、血液の循環を正常に保とうとする一連の反応をレニン・アンギオテンシン系と呼ぶ


4.エリスロポエチンという造血ホルモンを分泌する
腎臓はエリスロポエチンを分泌し、赤血球を作るよう骨髄に働きかけています。


5.骨の生成に必要な活性型ビタミンDをつくる
骨にカルシウムを沈着させるために必要なビタミンDを活性型ビタミンDзに変える働きをしています。


 

腎不全になるとどのような障害が出るのでしょうか?
1.老廃物がたまる
老廃物や余分な水分がたまり、むくみが出たり、体がだるさくなります。
吐き気や頭痛、食欲不振など尿毒症を起こします。
さらに進むと、心不全や肺水腫などの合併症を起こし、生命の危機にかかわります。

 
2.電解質のバランスが崩れる
電解質のバランスが崩れ、からだは酸性に傾き、吐き気や嘔吐、食欲不振、頻脈などの症状が出ます。
また、記憶障害を起こすこともあります。
このからだが酸性に傾いた状態をアシドーシスといいます。

 
3.血圧が上がる
腎臓の血流量が減少し、レニンの分泌が過剰となり血圧が上がります。
腎臓内の血管の狭窄などによって血流量が減少すると、腎臓は血圧が下がったと勘違いし、レニンが過剰に分泌され血圧が上がるのです。

 
4.貧血になる
エリスロポエチンの分泌量が減り、赤血球を作るよう骨髄への指令がいかず、貧血になります。
これは、赤血球の減少によって、酸素の運搬をしている赤血球に含まれるヘモ(=鉄)グロビン(=タンパク質)が減るためです。

 
5.骨がもろくなる
活性型ビタミンDзが作られないと小腸からのカルシウムの吸収が妨げられ、血中カルシウム濃度が低下し、骨がもろくなります。
これは、副甲状腺ホルモン(PTH)が,血液中の不足したカルシウムを補おうとして骨からカルシウムが溶け出すためです。

 


血液検査ではどの項目を見るのでしょうか?
主にクレアチニン(Cr)と尿素窒素(BUN)の値を見ます。

クレアチニン(Cr)
クレアチニンとは、筋肉内にあるクレアチンアミノ酸の一種)が筋肉を動かすエネルギーとして使われた後にできる老廃物のひとつです。
クレアチニンは食事の影響を受けないで、常に一定量生産され、ほとんど体内に再吸収されることなく、腎臓からのみ排泄されます。
したがって、このクレアチニンが腎機能をみる指標となっています。
腎機能が低下すると腎臓から排出されず、血液中にたまり、クレアチニンの値は上がります。
ただし、筋肉量に比例するため、筋肉が多い人ほど濃度が高く、筋肉の少ない人は低くなります。

 
尿素窒素(BUN)
尿素窒素とは、体内でエネルギーとして使われたタンパク質の老廃物(タンパク質の最終代謝産物)です。
食事で摂ったタンパク質量に左右されるため、腎臓が悪くなくても過剰なタンパク質摂取によって上がります。
また、カロリー不足など体のタンパク質(筋肉など)が使われた場合や、脱水、消化管出血などがあるときにも増えます。
腎機能が低下すると腎臓から排出されず、血液中にたまり、尿素窒素の値は上がります。

 


腎臓にどの位ろ過能力があるのかをみる検査とは?
クレアチニン・クリアランス(CCr)という検査があります。
クレアチニン・クリアランスとは…

老廃物を含む血液は腎臓の中の糸球体(糸球のように集まった毛細血管)でろ過されるのですが、その糸球体が1分間にクレアチニンを含む老廃物を何ml(ミリリットル)ろ過出来るかを調べる検査です。
クレアチニン・クリアランスの値は、糸球体がろ過する原尿の量とほぼ一致する事から、糸球体ろ過量(GFR)を推測し、腎機能のレベルが分かるのです。
クレアチニンの生産量が常に一定であり、糸球体でろ過された後、ほとんど体内に再吸収されることなく排泄されることからクレアチニンの値をもとに計算します。
腎機能が低下すると、糸球体ろ過機能が衰え、徐々にクレアチニン・クリアランスの数値も下がります。
1度壊れた糸球体は2度と再生されず、糸球体の数が徐々に減っていくためです。
この腎臓という工場で働いている人数を見て、糸球体の作業効率をみるのがクレアチニン・クリアランスです。
また、この数値は、加齢とも関係しますが、正常値が男女とも約100ml(ミリリットル)/分であることから、そのまま%(パーセンテージ)に置き換えて、糸球体ろ過機能が後何%であるかを知る目安となります。

 

 
腎機能低下の進行は予測できないのでしょうか?
クレアチニンクレアチニン・クリアランスが反比例することから、グラフにしてみることができます。
クレアチニンの逆数(1/Cr)を計算します。
横軸(X軸)に時間(期間)をとり、縦軸(Y軸)に1/Crをとります。


 
1/8から1/10のところを見れば、透析開始を考えなければならない時期を予測することが出来ます。
上記表の例では延長線と1/8の線が交わる場所がおおよその透析開始時期となります。
なお、食事療法がうまくいくと、グラフの線の角度が緩やかになり(水平に近くなる)、透析開始時期を遅らせることに成功することを読み取れるグラフとなります。




腎臓病の食事療法がうまくいっているのか目安となる計算方法は?
血液検査データのクレアチニン尿素窒素(BUN)の値を見ます。

尿素窒素(BUN)÷クレアチニンを計算します。
タンパク質制限をしていなければ、この式の答えは10を超えます。

腎臓病の食事療法がうまくいっていれば…
タンパク質制限が40gなら、およそ7
タンパク質制限が30gなら、およそ5
タンパク質制限が20gなら、およそ3

これを超えるようであれば、食事療法に何かの問題があるはずです。
(ただし、大ケガや大手術の後、副腎皮質ホルモンを服用している、消化管出血がある場合などは食事に関係なく尿素窒素の値は上がるので目安に出来ません)

 


慢性腎臓病(CKD)のステージ表
血清クレアチニンの値と年齢から推定した糸球体ろ過量(推算GFR)の値によって、腎機能の状態を5段階に分けたものです。
残腎機能を知ることで、適切な時期に適切な治療を行うための指標となります。




<参考および引用サイト>
腎臓の働きと検査
http://home.hiroshima-u.ac.jp/expertpt/jinzounohatarakitokensa.html
広島大学病院栄養管理部のHPです。非常に良く出来た内容と思います。)