急性白血病、広がる新薬

急性白血病、広がる新薬  細胞移植のハードル低く 

血液のがんで年間1万3千人が発症し、かつて不治の病とされた白血病が、治りうる病気になりつつある。

このうち急速に進行する急性白血病でも、高齢者が治療できる選択肢が増えている。

症例数の多い病院では副作用の少ない新薬の導入が進んでいる。

さらには、白血球の型がすべて一致しなくても移植できる方法も広がっている。

 

白血病は赤血球や白血球などの血液細胞が分化する際に遺伝子異常が起きてがん化し、白血病細胞として増殖する。

急性白血病は成人に多い「骨髄性」と、幼児に目立つ「リンパ性」に大別される。

 

倦怠感などの貧血症状や熱が下がらない、血小板の減少で出血が止まらないなどの症状が起きる。

抗がん剤などの化学療法で白血病細胞を減らすのが基本的な治療の流れで、抗がん剤を使った「寛解導入療法」から始まる。

 

一般的に骨髄性の場合、診断日から無菌室に入院し、イダルビシンを含む多剤併用化学療法を始める。

寛解導入療法では、白血球などを正常につくれるようになるまで約1カ月間の入院を要する。

寛解しても白血病細胞が残っていると考えられるため根絶を目指して化学療法を繰り返す「地固め療法」や「維持療法」に進む。

 

施設によっては効果を高めるために、通常の1.7倍など多めの抗がん剤を投与する。

骨髄性の初回治療の寛解率は69歳未満は90%と高く、70歳以上も79%を維持している。

患者の高齢化などで体の負担が懸念される化学療法に伴う死亡率は4%にとどまる。

治療期間は骨髄性およびリンパ性で約1年ほどになる。

 

治療後の5年生存率は5~6割だ。

治療後に5年間再発しなければ根治と認めるが、薬の副作用などが原因と考えられる「2次発がん」が年齢にかかわらず起きることがある。

 

根治しても年に1度は必ず検診を受けた方がよい。

分子標的薬はがん化した細胞を狙い撃ちし、普及が進む。

同病院では「チロシンキナーゼ阻害薬」などを用いて年間80例ほど実施。

点滴や内服で分子標的薬を抗がん剤と併用する。

併用療法では吐き気や脱毛などの副作用や、合併症のリスクが少ない。

近年、早いスピードで新薬が相次いで登場しており、さらに導入は広がるものと思われる。

 

抗がん剤が効かない場合や再発予防に向けては、血液成分をつくる造血幹細胞を移植する(造血幹細胞移植)。

名古屋第一赤十字病院は小児科を含めて年間約70件実施している。

ただ、移植前に行う白血病細胞をゼロに近づける抗がん剤放射線による前治療では同時に免疫機能も抑えてしまうため患者には一定の体力が求められる。

50歳以上や体力が十分でない患者には、移植前の抗がん剤の投与量を減らし、体力を温存する方法をとる。

そうすることによって、負担が少なくなり入院期間も短く、結果的に一般的な治療方法になった。

同病院では、抗がん剤放射線による前治療が移植全体の4割程度を占めているという。

 

ドナー探しに時間がかかる課題があった移植で、最近注目されているのが「ハプロ移植」だ。

従来、移植は特定の白血球型がすべて一致するのが望ましいとされたが、白血球型が半分だけ一致している血縁者らからも移植できる。

移植を急ぐ患者にとって大きな選択肢となっている。

親子は確実にドナー候補となり、いとこでも実施できる可能性がある。

 

日本造血細胞移植データセンターによると、ハプロ移植は17年に年間約400件が行われた。

同病院では15年に研究として11例を実施、今年から保険で認められ、症例数は増加傾向にあるという。

 

急性白血病の生存率は血縁者との移植と差はなくなってきている。

しかし、死亡原因となる合併症の検査や治療薬が保険で認められていないものが多いのが課題だ。

 

急性白血病は一般的に治療中の感染症で亡くなるリスクが高い。

13年度に厚生労働省から「造血幹細胞移植推進拠点病院」に選定された同病院は、06年に無菌室を設置。現在、小児病棟も含め23床を備える。

 

手洗いを徹底するほか、最初に使用する抗生剤の種類や、投与の期間や量などが適正か見極めることで耐性菌の発生を抑えている。

抗生剤の使用を許可制とし、06年ごろは3割の治療で耐性菌が見られたが、今では1割以下にまで改善している。

 

移植コーディネーター ドナーを守る役割も

白血病などで迅速な移植をサポートする「造血細胞移植コーディネーター」が、症例数の多い医療施設では欠かせない存在になっている。

骨髄のドナーと患者、医師の3者間の連絡調整役を務め、骨髄採取までの期間短縮などをサポートする。

 

資格を認定する日本造血細胞移植学会は、非血縁者の移植を行う施設での配置を求めている。

18年には施設基準に適合する移植施設を対象にした診療報酬の算定要件として「コーディネート体制充実加算」が新設。

さらなる普及が期待される。

 

コーディネーターを2人配置する名古屋第一赤十字病院では、ドナーの人権を守るのも大

切な役割であり、血縁者間の移植で、提供の意思がないドナーが断れるようにするのも重要な

重要な仕事だ、と説明する。

 

参考・引用 

 日経新聞・朝刊 2019.11.25