インフル・エボラ・HIV薬転用 RNA複製など阻止
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、既存薬を治療に使う試みが加速する。
加藤厚労働相は2月22日、新型ウイルスの肺炎患者を対象に、新型インフルエンザ治療薬の投与を始めたと発表した。
エボラ出血熱の治療薬を投与し、抗エイズウイルス(HIV)薬も検討する。感染拡大を見越した効果的な治療薬の検索が急務となっている。
加藤原労相は記者会見で肺炎患者を対象に3種類の既存薬を投与すると明らかにした。
投与を始めたのが新型インフルエンザ薬「アビガン」だ。
他の2種類はエボラ出血熱の治療薬として開発された「レムデシビル」と抗HIV薬の「カレトラ」だ。
アビガンは富士フイルムグループが開発した。
インフルエンザウイルスは、侵入した細胞の中でウイルスの設計図である
アビガンはRNAの複製を邪魔し、ウイルスの増殖を防ぐ。
新型ウイルスも同様の仕組みで増殖するため、アビガンの投与が有効と判断したとみられる。
レムデシビルもウイルスの増殖に必要なRNAができるのを邪魔する。
カレトラはウイルスが体内で感染を広げるのに必要なプロテアーゼという酵素の働きを阻む。
新型ウイルスに似たSARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスでも患者に
投与された報告がある。
既存薬を治療に使う試みは海外が先行する。
中国では複数の臨床試験が進んでいる。
これまでに抗HIV薬や抗マラリア薬などで症状の改善を確認したと報告した。
日本では、国立国際医療研究センターが肺炎患者に抗HIV薬を投与したところ、状態は悪化せず、入院5日目に熱が下がったと報告している。
参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2020.2.23