抗インフル新薬 世界初の点滴剤「ラピアクタ」

インフルエンザ薬としてタミフルリレンザが使用されるようになってから、かなりの時間が経過しました。
この2つの薬剤については効果や副作用について議論が繰り返されてきました。
そんな中で第3の選択肢としての薬剤がようやく登場することになりました。
ラピアクタ」という商品名で一般名はペラミビルです。
実はこの一般名がベラパミル(狭心症不整脈の治療として使用されている薬剤)と似ているため医療関係者で話題になっていました。
この「ラピアクタ」は、従来の薬剤と違って薬剤を静脈に点滴するため、体力が弱って口から薬を飲みにくい高齢者や重症者にも投与しやすいという特徴があり副作用も少ないようです。

日本で世界に先駆けて発売されるということですが、実は国産ではありません。
米バイオクリストという会社から日本での開発販売権を塩野義製薬が取得し、臨床試験(治験)を進めてきたというものです。
粉末状の医薬品原料を輸入し、国内の製薬会社に点滴剤への加工を委託するということで外国頼りは従来通りです。

海外薬品の国内承認までの時間が異様に長いこと(ドラックラグ)が問題になっていました。
今回のように、「世界初」と逆に早すぎるのも少し心配です。

厚生行政のいい加減さを物語っています。


新型にも早く効く シオノギが抗インフル新薬

新型インフルエンザの感染拡大が心配されるなか、塩野義製薬が新しい抗インフルエンザ薬「ラピアクタ」を、2010年1月27日に売り出した。
タミフル」「リレンザ」に次ぐ新薬で、世界初の点滴剤として注目されている。

ラピアクタ」の開発にかかわった長崎大学病院の河野茂院長は、「重症でなければ外来で、わずか1回15分間の点滴でタミフル5日間分と同等の効果があり、完治します」と話す。
副作用も少なく、インフルエンザにかかると長引きやすい糖尿病や慢性呼吸器疾患などの重症患者や、小児も使いやすいという。


タミフルリレンザと違い、初めての「国産」薬
09年来、猛威をふるっている新型インフルエンザだが、抗インフル薬としては、カプセルやドライシロップなど経口型の「タミフル」や、吸入して使用する「リレンザ」が、世界中で用いられてきた。

ラピアクタ」は、タミフルリレンザと同様に、インフルエンザウイルスの中に存在する「ノイラミニダーゼ」という物質を阻害することで治療する。
タミフルリレンザに次ぐ、第3のノイラミニダーゼ阻害薬であり、初めての「国産」薬だ。

長崎大学病院の河野院長は、「ラピアクタは点滴剤なので、予防よりも治療が目的です。しかし事前に投与することで予防できますし、通常の季節性インフルエンザだけでなく、新型にも、また試験段階では鳥インフルエンザにも効くことがわかっています」と話す。

インフルエンザの治療ではこれまで、患者の症状によっては投与した薬剤の血中濃度を高く維持することが必要な場合があり、経口剤や吸入剤では追加投与ができないこともあった。
また、経口投与がむずかしい患者への対応策もなかった。

その点、ラピアクタは点滴剤なので、糖尿病などにかかっている重症患者にも繰り返し使える。
他の薬を服用している患者について、シオノギは「ラピアクタは、他の薬剤との相互作用は起きにくく、臨床試験においても他の薬剤との相互作用による副作用は観察されていません」と説明している。


24時間以内に過半数の患者が平熱に回復
臨床試験では、成人の場合は治療開始(1回の投与)から24時間以内に過半数の患者が平熱に回復するなど、タミフルよりも早く効果が表れた。
治るまで毎日服用しなければならない経口薬などは、快方に向かうと飲み忘れることも多いのに対して、点滴剤であればそのようなことがなく、確実な効果が期待できる。

ラピアクタ」のもう一つのメリットは、小児にもよく効き、しかも副作用が少ないことだ。
シオノギが小児(2~15歳)約100例を対象に新型インフルエンザに対する効果を調べたところ、薬を投与して平熱に回復するまでの時間は平均約20時間。成人よりも約10時間短く、より早く効くことがわかった。
副作用の発現率は27.6%だったが、下痢や嘔吐などの消化器症状が主で、いまのところ投与による小児の「異常行動」も現れていないという。

小児用についてはまだ未認可で、シオノギは年度内に追加申請する方針だ。

http://www.j-cast.com/2010/01/27058767.html?p=1
J CAST ニュース 2010.1.29


<「ラピアクタ」 関連サイト>
塩野義のインフルエンザ新薬 「ラピアクタ」1月発売
http://jds2009.blogspot.com/2010/01/1.html

塩野義 抗インフルエンザ薬製造・販売の承認を取得塩野義 
イメージ 1

http://www.chem-station.com/cgi/mt/mt-search.cgi?blog_id=18&tag=製薬&limit=20



<番外編>
= 肺炎球菌の重複感染で重症化=新型インフル-アルゼンチン調査=
南米アルゼンチンで、秋から冬に当たる昨年5~7月に、新型インフルエンザの致死率が4.5%と極めて高かったのは、肺炎球菌との重複感染が主因だったことが分かった。
米コロンビア大などの研究チームが10日までに、米オンライン科学誌プロス・ワンに発表した。
 
1918年ごろに世界的に大流行した同型のインフルエンザ「スペイン風邪」の際も、肺炎を併発して死亡した患者が多かったことが知られており、ワクチンなどによる肺炎球菌対策も重要とみられる。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201001/2010011000090
出典 時事ドットコム 2010.1.10
版権 時事通信社
<コメント>
日経新聞・朝刊2010.1.11によると
「6~55歳で肺炎球菌に重複感染した場合、他の要因の影響を除くと、重症化するリスクは126倍も高かった」
ということです。



読んでいただいて有難うございます。
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