(新型コロナ)重症者治療、「ECMO」とは 国内に1400台、医師の塾練度も重要
新型コロナウイルスで肺炎になった重症患者を治療するうえで最後のとりでになるのが、体外式膜型人工肺(ECMO)だ。
日本には約1400台あり、世界的にも断トツに多い。
ただし、扱える医師が少なく重症患者がさらに増えた場合には十分に活用できないおそれがある。
■肺を休ませながら機能代替
新型コロナウイルスに感染すると、ウイルスは肺の中で増えて肺炎を起こすことがある。
ウイルスの増殖に伴って肺胞の機能が落ち、血液に酸素を取り込み二酸化炭素を排出する機能が落ちる。
その場合、患者の免疫がウイルスに勝てるよう容体を安定させながら回復を待つ。
肺の機能が低下して血液中の酸素濃度が下がると生命を維持が難しくなる。このため人工呼吸器を使って、高濃度の酸素を送る。
ただ、肺に障害が起きるおそれがあり、そうなると、いくら酸素を送っても生命を維持できなくなる。
ECMOを使うと、肺を休ませながら血液中に酸素を送ることができる。
体から取り出した血液か二酸化炭素を除去、酸素を加えて体内に戻し、肺の機能を代替する。
肺炎の治療では装着期間が1、2週間から1カ月程度と長くなる。
ECMOを使うと血栓ができやすくなるため、血液が凝固するのを防ぐ薬を使う。
長期間使うことにより、脳出血や消化管出血を起こすリスクが高まる。
出血は命に直結する。
上手な管理が必要だとなる。
2009年に新型インフルエンザが流行した時も重い肺炎患者にECMOが使われた。
だが、欧米に比べて日本の救命率が低かった。
欧米ではECMOを使用する病院を決めて機材や患者を集中させており、医師の熟練度が高かったからだという。
日本にあるECMO約1400台は、先進国でも断然多い数だが、数台ずつ各病院に分散しているため使う機会が少なく管理の熟練度が上がりにくいという
■「患者1人を30人で対応」
新型コロナウイルスへの感染を防ぎながらECMOを使うには陰圧の集中治療室を使い防護服を着るなど、医療者の負担が大きい。
実際にECMOを使って治療にあたった、ある医師は「他の治療を含めて1人の患者に約30人のスタッフを集めた。負担は大きかった」という。
技術に優れてECMOを5台備えた病院でも同時に対応できる患者さんは2、3人が限界ではないか、とある専門医は話す。
日本集中治療医学会などの調査では、5月10日までに新型コロナウイルスの患者155人にECMOが使われた。
87人が装置を外せるまで回復、40人は現在も装着中だ。
一方、装着したものの亡くなった人が28人いたという。
全ての重症化した新型コロナウイルス感染患者にECMOを使えるわけではない。
普通の肺炎でも高齢だったり重い持病があったりするとECMOをつけても回復が難しい場合があるため、装着しない判断もありうるという。
救命率を上げるにはECMOを含めた患者の集中管理をいかに上手にできるかが鍵となる。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.5.12
<関連サイト>
ECMO
https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/1021