老化につながる毛細血管の「ゴースト化」 何歳から?
「人は血管とともに老いる」という言葉が有名になり、多くの人が血管の健康に関心を抱くようになった。
血管の若さを保つことは、健康寿命を延ばすための必須事項だ。
では、どの血管が大切なのだろうか。
もちろん動脈も静脈も重要だが、ほかに忘れてはならない血管がある。
それが毛細血管だ。
ここ数年、毛細血管が老化や病気に及ぼす影響がクローズアップされるようになった。
加齢や生活習慣などにより、毛細血管が傷んで機能しなくなる。
これを「ゴースト血管」ともいう。
毛細血管は、その名の通り毛のように細い血管で、太さは頭髪のわずか10分の1程度だ。
動脈や静脈のような大きな血管に比べると、微々たる存在だと思う人もいるかもしれない。
しかし、毛細血管は体の血管の95~99%以上を占める、決して軽視できない血管なのだ。
毛細血管は、体の隅々まで栄養分や酸素を運ぶ重要な存在だ。
毛細血管が傷んでゴースト血管になると、血液が流れにくくなり、栄養分や酸素を体中の臓器に適切に運ぶことができなくなる。
この状態が続けば、当然、体の各所で機能が損なわれ、さまざまな病気が引き起こされる。
見た目の老化、免疫力の低下、さらには認知症のリスクを上げることも分かってきた。
体のコゲ「糖化」と、サビ「酸化」がゴースト化を進める
なぜ、毛細血管がこのようにゴースト化してしまうのだろうか。
その原因として、挙げられるのは「糖化」と「酸化」だ。
いずれも私たちの体の老化を進める主犯としてよく知られている。
糖化とは、体内のたんぱく質が糖質と結びつき、たんぱく質が劣化する現象。
体内の糖質が過剰になると糖化が進んで、AGE(糖化最終生成物)という物質が産生されます。AGEは体の『コゲ』のようなもので、AGEが蓄積されると、大きな血管はもちろん、毛細血管にも悪影響を与える。
毛細血管の壁細胞が傷ついてはがれ、内皮細胞の隙間が広がってゴースト化を招くのだ。
ゴースト血管のもう1つの原因である「酸化」はいわば体の「サビ」。
体内で反応性の高い「活性酸素」が過剰に作られ、それが組織を傷めていく。
適量ならウイルスや細菌を撃退してくれる心強い味方となるが、過剰になると正常な細胞まで傷つけて組織の劣化を進め、老化を加速させ、さらにはがんなどの病気も引き起こす。
糖化と酸化とは密接な関係にあり、糖化が起こると酸化も引き起こす。
毛細血管が減少し始めるのは40代から
では、毛細血管のゴースト化は何歳くらいから始まるのだろうか。
毛細血管のゴースト化は老化現象の1つだ。
体内の細胞は新陳代謝を繰り返して、新しい細胞に入れ替わっていく。
一般に40代くらいから新陳代謝が低下するが、同様に毛細血管のゴースト化も始まる。
毛細血管が加齢とともに減少することを示すデータも出ている。
加齢による毛細血管の変化を調べた研究では、20代の毛細血管の量を100%としたとき、60代、70代では約4割も減ると報告されている。
毛細血管が減るといっても、もちろん全員が一律に4割減るわけではない。
早ければ20~30代でゴースト化が見られる人がいる一方で、高齢でも健康な毛細血管を維持している人もいる。
進行度合いには個人差がある。
個人差があるとはいえ、ゴースト血管は40代から始まっている。
「40代なんてまだ働き盛りじゃないか」と驚く人もいるだろう
加齢とともに多かれ少なかれ体の機能は落ちるので、ゴースト血管が増える(=毛細血管が減る)のを完全に避けることはできない。
しかし、もう手遅れだろう、とあきらめることはない。
ゴースト血管には、食生活や運動などの生活習慣が関係することが分かっている。
逆に言えば、ゴースト化を進めるような生活習慣を改善すれば、毛細血管の健康を維持できるということだ。
毛細血管には、血管を新たに作る、「血管新生」という仕組みが備わっている。
生活習慣を良い方向に変えれば、何歳からでもゴースト血管対策は有効だ。
一度ゴースト化した毛細血管も再生できる。
食事と運動を工夫すること、つまり生活習慣を改善することで、ゴースト化を防ぎ、毛細血管を増やせるというわけだ。
食事面のポイントは、糖化の原因となる糖質のとり過ぎを避けたり、ポリフェノールなどの抗酸化成分を含む食品を意識してとる、AGEが多く含まれる揚げ物、焼き物に偏った食事を避けることなどだ。
運動面ではウォーキングなどの有酸素運動の実践、そして特に第2の心臓と呼ばれる「ふくらはぎ」
を鍛えることが大切となる。
参考・引用一部改変
日経Gooday 2020.6.15