老化を促進させる「糖化」 飲酒と関係

老化を促進させる「糖化」 実は飲酒と密接な関係

50代になると、「いよいよ老化現象が始まったか!」と気付かされる機会が増える。
特に日々実感させられるのが肌。
ハリが失われ、シミ、シワが増えてくる。
これらの老化現象の主犯の一つとして、よく話題に上るのが「糖化」だ。
この糖化、一般に「糖質のとり過ぎ」などが影響しているとされるが、実はお酒とも密接な関わりがあるという。

五十路(いそじ)を過ぎて、やたら気になるのはお肌のハリやシミ、シワである。
四十路までは何とか重力に耐えていたのに、五十路になるとこうも違うのか?

「アラフィフなんだから仕方ない」で済ませればいいのだろうが、あきらめきれないのが女性というもの。

気になるのが「飲酒との関係」である。
「肌の老化 アルコール」とネットで検索してみると・・・、「若返りのために酒をやめよう!」と恐ろしいキャッチが。ページを開くと「糖化」というワードが目に飛び込んできた。

そういえばこのところ、テレビの健康番組などで「酸化」と並び、よく耳にするのが「糖化」という言葉である。
何でも「体がコゲる」とか・・・。
そして、糖化は老化要因の一つで、肌のハリやシワなどにも密接に関係しているという。

しかも、この糖化、体内の血管や内臓、骨などの機能を低下させ、さまざまな病気の原因になるという。
つまり、見た目だけでなく、寿命にも関係してくるというのだから聞き捨てならない。
でも糖化って、その名の通り、炭水化物とか甘いものに関係するキーワードで、アルコールとは無関係なんじゃないの? これは一体どういうことなのだろう?

余分な糖がたんぱく質と結びつき、たんぱく質が変質
そもそも「糖化」とはどういう作用のことを指すのだろうか?

糖化を一言で言えば「体のコゲ」。
身近な例を挙げると、パンケーキなどを焼くと表面がこんがりしたきつね色になる。
これはパンケーキなどに含まれる糖と、卵や牛乳に含まれるたんぱく質が結びついて起こった現象だ。
これがまさに「糖化」なのだ。

この糖化が体の中で起こると大変なことになる。
体の中で起こる糖化とは、体内の余分な糖がたんぱく質と結びつき、たんぱく質を変性、劣化させていくことだ。
たんぱく質は、臓器、皮膚、筋肉、血管などをはじめとする体を構成する重要な成分だ。
つまり、糖化により体を構成するさまざまな要素が劣化していく。
たとえば、牛の皮や骨などをブドウ糖溶液につけておくと、それだけで徐々に組織が糖化され、数日で茶褐色に変色し、弾力を失っていく。

糖化が進行していくプロセスでAGEs(糖化最終生成物)という物質が生成される。
AGEsはさまざまな経路を経てつくられ、一口にAGEsと言っても、論文に報告されているだけでも数10種類あり、実際のところ100種類以上あるともいわれている。
このAGEsこそ、老化を促進させてしまう厄介な物質なのだ。

老化を促進させる!?
何ともにくったらしい物質!
では具体的に、糖化が進み、AGEsが多く生成されるとどんな悪影響が出てくるのだろうか。

AGEsの弊害の一つに、たんぱく質の硬化がある。
AGEsはたんぱく質同士を結合させ、『悪玉架橋』と呼ばれる厄介者を体内につくってしまうのだ。
悪玉架橋ができると可動性やしなやかさが失われ、硬化してしまう。
さらに、体内には、AGEsをキャッチするレセプター(受容体)が存在し、そのレセプターがAGEsをキャッチしてしまうと炎症を起こすのだ。
このようにして、体内のさまざまな臓器の機能が低下していく。
これがいわゆる「老化」ということになる。
これがさらに進むと、やがてさまざまな病気につながる。

肌の弾力が低下、骨のコラーゲンも硬化して骨折しやすくなる
では、AGEsの生成・蓄積により、具体的にどんな老化現象や疾患が起こるか。

見た目に密接に関わる“肌への影響”では、まず肌の弾力が失われる。
さらにシワ、くすみ、血色不良など、女性にとってはありがたくない作用が肌表面に現れる。
肌の弾力が低下する原因はさまざまあるが、糖化の影響が大きいといわれている。
糖化ストレスにさらされている糖尿病患者は皮膚の弾力が失われやすいことが確認されている。
外からせっせとレーザー治療をしたり、美容液を与えても、いっこうにたるみが改善しないのはこういうことだったのだ。

AGEsの影響は骨にも及ぼす。
AGEsの一種であるペントシジンが、骨に含まれるコラーゲン線維に悪玉架橋をつくると硬化し骨質が低下する。
骨は、カルシウムだけでできているわけではない。
3割程度がコラーゲンというたんぱく質でできている。
コラーゲンの硬化によって、しなやかさが失われ、たとえ骨量が十分にあっても骨折しやすくなる。

人の骨に含まれるコラーゲンの加齢変化を調べた研究でも、ペントシジンは加齢とともに増加したという報告もある。
高齢者はより注意が必要だ。
また関節軟骨のコラーゲンが糖化すると、関節炎にも影響するという。
さらに注意が必要だ。

腎臓や肝臓の機能が低下、認知症にも影響
そしてAGEsは、内臓の重篤な病気を誘発する要因にもなる。

腎臓や肝臓といったヒトの臓器はたんぱく質からできている。
こうした臓器にAGEsが蓄積すると、内臓機能そのものが低下し、やがて腎不全や肝臓障害といった重篤な病気を引き起こす原因となる。
また、血管を構成するコラーゲンがAGEsによって硬化すると、柔軟性が失われ、傷つきやすくなる。
つまり動脈硬化を進めるのだ。
AGEsが血管内皮に蓄積することで、脂肪などから成るどろどろの粥状物質(アテローム)が血管壁に生成。これが徐々に肥厚していくと、心筋梗塞脳梗塞などの発症につながる。

何と盛りだくさんなAGEsの弊害!
加えて「アルツハイマー認知症の発症リスクも高まる」という。
ルツハイマー型認知症の患者の脳内には、罹患していない人に比べ、約3倍ものAGEsが蓄積されていたという報告もある。

お酒と糖化は関係があるのか?
ここまで糖化がもたらす弊害は理解できた。
しかし、これまでに、「糖とたんぱく質」というキーワードは何度か出てきてはいるが、「アルコール(お酒)」というキーワードは、ただの一度も出てきていない。
問題は「過剰な糖の摂取」により “余った糖” がたんぱく質と結びつくことであり、アルコールとは関係なさそうに思える。
実際のところアルコールと糖化は関係しているのだろうか?
実は、アルコールと糖化は密接な関係にあるのだ。

糖とたんぱく質が結合してAGEsが生成されるが、実は、その生成過程の中で中間生成物として「アルデヒド」が生成されているのだ。
つまり、糖化のプロセスでは、糖からアルデヒドが生成され、それがたんぱく質と結びつくことで、AGEsの生成が進むのだ。

アルデヒドというのはアルデヒド基(-CHO)という構造を持つ物質の総称だ。
このアルデヒド基には、酸素と炭素の二重結合したカルボニル基(-C=O)があり、反応性が高くたんぱく質と結びつきやすいのだ。
そして、それによりたんぱく質がAGEs化して変性・劣化していくのだ。

なるほど、糖化という反応自体に、アルデヒドが深く関わっていたのだ。
お酒の中に含まれるアルコール(エタノール)は、体内でアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドに変換される。
このアセトアルデヒドたんぱく質とくっついて悪さをする。

アルコールが体内で分解されて生じたアセトアルデヒドも、同様にたんぱく質と結合し、アセトアルデヒド由来のAGEsができる。
つまり、アセトアルデヒドには、AGEsの生成を促進してしまうという作用があるのだ。
左党にとっては、耳をふさぎたくなる話だ。

■お酒を飲む機会が多い人ほど、体内にAGEsが蓄積される
ということは、当然、お酒をたくさん飲んで体内にアセトアルデヒドができる人ほど、糖化が進み、AGEsが生成されるということだ。
実際に飲む頻度が高い人ほどAGEsが体内に多く蓄積していることが確認されている。

皮膚のAGEsの蓄積と生活習慣の関係を確認するため、日本人244人の生活調査とAGEsの測定を行い、結果を解析した研究がある。
生活習慣の中で相関関係が認められたのが、喫煙経験、飲酒習慣、睡眠時間だ。
飲酒習慣については、飲酒頻度が週4日以上のグループは、週3日以下のグループに比べてAGEsの蓄積量が高くなった。
ただ、現時点では飲酒量との関係は明確になっていない。

中でも最も注意しなくてはならないのが「酒を飲んで顔が赤くなる人」、つまりアセトアルデヒドを分解するALDH2アセトアルデヒド脱水素酵素)の活性が低い人だ。
お酒を飲んで顔が赤くなる人は、アセトアルデヒドの分解能力が低いため、体内においてアセトアルデヒドにさらされる時間が長くなる。
そのため赤くならない人に比べ、AGEsの生成が促進されやすくなる。
これにより体内のたんぱく質の変性が進み、老化やさまざまな疾患のリスクが高まってしまうのだ。

お酒を飲んで顔が赤くなる人(フラッシャー)は、やはり飲酒による悪影響を受けやすい。
該当する人は特に注意する必要がありそうだ。
こう聞くと、顔が赤くならない人は、「私は、顔が赤くならないから大丈夫」と思うかもしれないが、そう都合よくはいかない。
結局、飲んで顔が赤くならない人であっても、飲む量が多くなるとアセトアルデヒドの影響は避けられない。

二日酔いの人、日常的に多量飲酒をする人もまた、アセトアルデヒド由来のAGEsの生成が促進される。
ALDH2の活性が強い人はアセトアルデヒドの分解が早いとはいえ、量を飲めばアセトアルデヒドにさらされる時間が長くなるのでリスクは高まる。
顔が赤くならないから安心ということではない。
やはりお酒の飲み過ぎは糖化リスクを高めるのだ。

多かれ少なかれ、加齢とともにAGEsの蓄積は増えていく。
これは生きていく限り仕方のないことといえる。
そこに「飲酒」という負荷をかけることで、その蓄積の速度が早まるのだ。

では、具体的にどんな対策をすれば、糖化のリスクを下げることができるのだろうか?
やっぱり飲酒は「適量」しかない。


参考・引用一部変更
日経Gooday 2018.10.18