コロナとインフル同時流行に備え

コロナとインフル同時流行に備え 接種、高齢者ら優先

新型コロナウイルスとインフルエンザがこの冬に同時流行する「ツインデミック」への懸念が高まり、インフルワクチン接種の重要性が増している。

厚生労働省の専門部会は26日、高齢者や医療従事者、妊婦、子どもの接種を優先する案を了承した。

ただ全国民には行き渡らないため、混乱を避ける体制づくりが不可欠だ。

 

2019~20年の冬のインフルは推定患者数が700万人と例年に比べて小規模な流行だった。

しかし、けいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫感染制御センター長は今冬について「1000万人規模の流行を想定し、対策を万全にする必要がある」と指摘する。

 

専門家はツインデミックを懸念する。

症状からインフルと新型コロナを見分けるのは難しい。

世界保健機関(WHO)はインフルワクチンの接種を強く推奨している。

医療現場の負担を減らし、自身や周囲を守るために、ワクチン接種でインフルの症状が悪化するのを防ぐ必要がある。

両方にかかり、重症になった患者の報告もある。

ロイターの報道によると、米国ではインフルワクチンの供給量を例年より2割近く増やし、接種開始を早める予定だ。

 

感染症への警戒の高まりから、日本でも接種希望者が増えると見込まれる。

厚労省の専門部会の方針では、10月前半に65歳以上の高齢者や60歳以上で心臓や呼吸器に持病がある高リスクの人で接種を始め、10月後半に医療従事者や65歳未満で持病がある人、妊婦や小学校2年までの子どもに広げる。

 

強制力はなく、自治体や医療機関に、優先順位に沿った対応を求める。

対象外の人も10月後半から接種できるが、高齢者らを優先するよう協力を呼びかける。

厚労省担当者は「高齢者などで接種を希望する場合は早めに受けてほしい」と話す。

 

国内のワクチン供給量は約6356万人分(3178万本)の見通し。

4種類のウイルスに対応するようになった2015年以降では最大となるが、供給量は人口の半分にとどまる。

仮に優先接種者が全員受けたら、残りは限られる。

 

ワクチン供給のほかにもクリアすべき課題は多い。

日本感染症学会はツインデミック対策としてインフルとコロナの検査を原則推奨する。

特に、高齢者などリスクの高い人が発熱やせきなどの症状を訴える場合に必要だとする。

院内感染などの対策が必要だが、両方の検査が望ましい。

 

インフルの迅速検査キットは18~19年冬に約2602万回分が供給された。

多い年には3千万回分に達し、約7万カ所ある内科系の医療機関にほぼ行き渡る。

一方、コロナ検査が可能な医療機関は19日時点で全国4126カ所にすぎない。

 

東京都内のある小児科は発熱した人について、他の患者と診療時間を分けている。

待合室などスペースが限られ、動線が分けられないため「発熱患者の受け入れは同時に3人が限界」という。

インフルが流行期に入れば、症状のある人が大量に来る。

この小児科医は「どうしようかと今から不安だ」と懸念する。

 

厚労省は両方を検査できる医療機関を増やし、かかりつけ医などでも対応できる体制を10月中に整備する。

ただコロナ検査の拡充に手間取ってきただけに、どこまで増やせるのかや患者の殺到を防げるのかは未知数だ。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2020.8.26

コメント;

昨年まで、公費負担による高齢者への接種は10月15日からでした。

まだ地方自治体からの案内がないのではっきりしたことはわかりませんが、どうやら今年は10月1日からに前倒しになりそうです。

ワクチンが不足する前に、高齢者に確実に接種しようという配慮ですが、少し問題があります。

早期に接種することによって、年明けのインフルエンザ流行期(例年は2

月)にワクチンの効力が低下している可能性があるからです。

インフルエンザワクチンに関しては、医学的にはっきり有効期間が検証されていないのが現状です。

 

 

 

インフル接種、高齢者ら優先 医療者や妊婦も順次拡大

厚生労働省の専門部会は26日、今冬のインフルエンザワクチンについて高齢者や医療従事者、妊婦、子どもを優先接種の対象とする案を了承した。

新型コロナウイルスとの同時流行が懸念される中、医療現場の負担を軽減し、自身や周囲を守るには予防接種でインフルエンザの発病や重症化のリスクを抑えることが重要になる。

 

インフルエンザと新型コロナは発熱などの症状が共通で、診断だけで区別するのが難しい。

例年は65歳以上の高齢者や60歳以上で心臓や呼吸器の機能に障害がある人が公費の補助による「定期接種」の対象となっているが、優先順位は定められていなかった。

 

感染症への警戒の高まりから、接種希望者の増加が見込まれる。

そこで10月前半に定期接種の対象者からワクチン接種を始め、10月後半に医療従事者や65歳未満の基礎疾患(持病)がある人、妊婦や小学校2年までの子どもに拡大する。

 

法的根拠はなく、自治体や医療機関に、優先順位に沿った対応を要請する。

対象外の人も10月後半から接種できるが、高齢者らを優先するよう協力を呼び掛ける。

 

今冬のインフルエンザワクチン供給量は、成人換算で約6300万人分で人口の半数にとどまる。

混乱を避けるために、優先接種の対象を決める必要があると判断した。

 

接種するかは個人の判断だが、厚労省の担当者は「高齢者などで接種を希望する場合は、早めに受けてほしい」としている。

 

参考・引用一部改変

日経新聞 2020.8.26