なぜワクチンより難航? 病態、複雑に変化
症状ごとに対応
治療薬開発が遅れてきたのは有効性の評価が難しいためだ。
ワクチンの場合はワクチンを接種した人が感染した割合を統計学的に評価することができる。
しかし治療薬は、発熱やせきなど症状の改善、入院期間の短縮、死亡率の変化など多岐にわたる項目で治療効果をみる。
腫瘍の大きさで評価するような抗がん剤と違って感染症治療は体内のウイルス量の変化だけでは判断できない。
新型コロナの研究では通常の感染症より病態が複雑なことが判明してきた。
無症状から軽症な状態の時はウイルス量が急速に体内で増え、中等症の状態になると逆に体内のウイルス量が減り肺に炎症が起きる。
重症化するとウイルスの活動は低下するかわりに、炎症が全身に広がり体内の免疫反応に異常をきたす。
症状が変化するたびに治療薬、治療法を変える必要があるという。
レムデシビルなど有効な薬剤もあるが、大切なのは患者の症状に合わせて複数の薬剤を組み合わせることだ。
感染初期を対象とする抗ウイルス薬、発症後7日以降の中等症・重症化を防ぐ炎症抑制剤、血液が固まる「血栓」を抑える薬剤など製薬各社が開発する製品も様々だ。
いずれも単独ではなく複数の薬剤の組み合わせを想定しており、特効薬の開発は難しいようだ。
参考・引用一部改変
日経新聞・朝刊 2021.4.4