削られる療養病床

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退院後の対策迫られる患者

病院には一般病床と別に、長期の治療が必要な慢性疾患の患者が入院する病床
があります。
療養病床と呼ばれ、介護保険が適用されるものもあります。
しかし、厚生労働省はベッド数の削減を進めており、退院する時にどうすれば
いいか早めの準備が必要です。

  ○ ○ ○

療養病床は、医療保険が適用される医療型が25万床(2006年度、リハビリ
用含む)、介護保険適用の介護型が、12万床(同)ある。
 
厚労省によると、介護型の平均在院日数は444日
(2006年)。
退院後の行き先は、他の医療機関39%、家庭15%、施設17%。
施設の内訳は介護老人保健施設老健)と特別養護老人ホーム(特養)が大半だ。
また、亡くなった人が27%。
 
療養病床には、医療の必要性は薄いが独居などのた
め入院を続けざるを得ない「社会的入院」も多いとみ
られる。
厚労省は、2012年度までに医療型を20万床程度に
減らし、介護型を2011年度にすべて廃止する方針だ。
 
退院後の生活をどうするか。
相談先には、病院にいる医療ソーシャルワーカー(MSW)が考えられる。
患者の心身の状態や意思、家族の希望、経済的事情に応じて助言してくれる。
 
東京都八王子市の永生病院(一般・療養病床)のMSW、Kさん(34)は
「転院以外では、医療職がいてリハビリも受けられる
老健がいい。自宅に戻るまでのワンクッションにもなる。また、長く入れて費用
が安い施設を希望し、症状が軽い人には特養が向いている」と話す。

ただ、老健は入所期間が短く、特養は待機者が多い
現状がある。
Kさんは「訪問看護や介護のネットワークが整い、いざという時に入院できる
医療機関が近くにあれば、要介護5でも自宅に戻ることが十分できる」と付け
加える。
入院時は寝たきりで会話や食事できなかった人が自宅に戻ることで、簡単な言葉
を話し、食事できるようになった例があるという。
 
受け入れ先探しに注意が必要なのが、腹部にあけた
穴からチューブで栄養を補給する胃ろうの人や、たん
の吸引が必要な人たちだ。
 
横浜市青葉区のたちばな台病院(一般病床)のM
SW 、Sさん(32)は以前、転院した先の療養病床
を退院することになった患者の家族から相談を受けた

「胃ろうがあったので、自宅近くで受け入れてくれる老健が見つからなかった」
という。
胃ろうの取り扱いやたんの吸引は医療職と家族に限定されており、医療職の少い
老健では敬遠されることがある。
「こうした行為を介護職にも広げなければ、療養病床の軽減で、施設に入れず行き場
を失う人が出る可能性がある」とSさんは心配する。

厚労省は介護型の療養病床を、従来の老健より医療職の配置が手厚い「介護療養型
老健」に転換して「受け皿」にする方針。
だが、日本療養病床協会は「転換に具体的に動いているところまだ少ない」という。

患者にとっては、地域包括支援センターやケアマネージャーにも相談して、施設の
メリット、デメリットを把握シ、早め行動スることが大切だ。

出典 朝日新聞・朝刊 2008.6.26
版権 朝日新聞社


<コメント>
「長期の治療が必要な慢性疾患の患者」も病気はさまざまです。
そして同じ病気でも患者さんによって病状は千差万別です。
慢性といっても、脳卒中後遺症のように回復の見込みのある場合もあれば、認知症
のように回復が見込めず進行性の場合もあります。
高齢者の場合、加齢による悪化の方がむしろ多いのではないのでしょうか。
文中の「医療職」はどのような人を指すのでしょうか。
医師以外というニュアンスの表現なら出来ることは限られています。
また医師が配置されているとしても一人限りでは大した医療は出来ません。
そして、この医師たちも多くは、大学や病院の定年後の「偉い先生方」であることが
現状です。

「医療型を20万床程度に減らし、介護型を2011年度にすべて廃止」という考え
がどこから出てくるか。
答えは明々白々。
医療費の削減です。
国民の健康を犠牲にしてまで道路に国家予算をつぎ込むという図式。

昨日のブログ
ふくろう切抜き帖 2008.6.29
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2008/06/29
での厚労省の医療課長の経歴をみて、「憤りが「諦め」」に変わりました。
彼らに血の通った医療政策を望むのは無理だからです。

医療介護難民は11万人」―療養病床削減問題 5月15日20時35分配信
医療介護情報CBニュース(その2  2/5)
東京都内で介護型の療養病床などの慢性期病床を運営する吉岡理事長は、
「鈴木課長のおっしゃることは、頭に血が上り、鼻血が出そうだ」と怒りをあらわにし、
介護療養型医療施設の患者は『要医療・重介護の高齢者』。
この状態を受け入れられるのは介護療養型医療施設だけだ」と訴えた。
介護型療養病床に入院する患者の要介護度はすべての施設類型の中で最も重く、
入院患者のうち要介護5の患者が老健の3倍以上で52.5%を占め、みとりも7倍あり、
重度の認知症患者も多いなど、医療行為の必要性が高いと主張した。
 
その上で、「存続を求める会」が実施したアンケートを基に、10万床ある介護療養
病床が廃止されると5万3000人の患者が、医療型療養病床からも5万5000人以上が
行き場を失うとして、「医療・介護難民は11万人に上る」との試算を示した。
また、厚労省が療養病床再編の根拠としている、医療型と介護型の入院患者の状況に
差がないとするデータについても、「作為的にデータの意味をすり替えたねつ造」と
指摘した。
また、介護療養型老健に転換した場合、スタッフの人数を減らさなければ総利益率が
6.1%のマイナスとなり、「20%近い減収になる」とした。
吉岡理事長は、「明らかに介護療養型医療施設は必要。国民の多くもこの問題を
知らないため、いったん廃止するか延期するかして、費用負担やどういう死に方を
望むのかなど、国民とともに考える時間をつくってほしい」と主張した。
 
「存続を求める会」の医師から、介護療養型老健への転換について「現実的には
できない状態。職員を減らす、(医療依存度の)軽い人を入れるというのは現場を無視
した制度。患者の行き場がないのだから、それを考えてからやってほしい」とする意見
や、「(療養病床再編は)医療費削減につながるという説明があったが、(介護型療養
病床は)本来介護保険制度から出ているのだから、医療費削減につながるというのは
詭弁(きべん)」とする意見が上がった。



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