うつ病合併多い慢性疲労症候群

慢性疲労症候群」という言葉。
最近だはかなり認知されてきてご存知の方も増えてきていますが、初めて耳にされる
方もおみえになるのではないでしょうか。
そんな方はまず、最後の<関連サイト>からごらん下さい。

認知行動療法で改善も

原因不明の疲労感が続く慢性疲労症候群は、うつ病など精神疾患を伴うことが多い。
こうした場合には精神科での治療が必要だ。
大阪大学大学院医学系研究科の岩瀬真生・助教(精神医学)は「病歴が長いほど治療
は長期化しやすいが、最近広がりつつある認知行動療法で症状の改善が期待できる」と話す。

・・・慢性疲労症候群うつ病など精神疾患と共通の症状が多いですね。
「この症候群の患者は疲労感や発熱、頭痛といった
身体症状を強く訴える傾向がありますが、精神疾患が併存することも多く、6~7割が合併
しています。特に多いのがうつ病で、合併率は受診時で1~4割、既往を含めると6~7割
に達するとの報告があります」
 
「神経衰弱ともよく似ています。19世紀後半、欧米の急速なエ業化でストレスが増えたの
に伴い神経衰弱という病態(病気の概念)が提唱されましたが、実は慢性疲労症候群も同じ
ような病態で、時代の変化に応じて違う名がついたと考える人もいます」

「症候群が疑われる場合、治療の初期に精神科を受診し、精神疾患の有無を調べることが
望まれます。集中力、記憶力の低下や睡眠障害などの症状はうつ病と共通し、見極めが難
しい。しかし、うつ病でよくある興味・喜びの喪失や自殺願望などは目立たず、判別の目安
になります。発症時から精神疾患を伴っていた人は精神科治療が主体、発症後に生じた場合
は内科・精神科治療の併用になります」

・・・精神科ではどんな治療をするのですか。
 
「まず合併する精神疾患に対する治療をします。うつ病では選択的セロトニン再取り込み
阻害薬(SSRI)などの服用が基本になります。SSRIは吐き気など副作用を伴うこと
もあり、慎重に判断して処方します」

・・・薬物療法以外の治療法として認知行動療法が広がりつつありますね。
「患者さんが思考や行動のくせを自覚し、自ら行動を変えるように医師が後押しする療法です。
行動記録表を用意し、日々の生活で何をし、どの程度疲れたかなどを記入してもらう。そこ
から疲れをためやすい思考・行動パターンを把握し、改善策を相談します。1回50分、
隔週ペースで10回程度面接しながら施します」

「症候群の患者は『過剰適応型』と『不安・回避型」の2タイプに大別できます。前者は自己
への要求水準が高い完ぺき主義者で、他人に過度に気遣いするタイプ。後者は少しでも動くと
疲労が悪化するのでは、と恐れて何事も受け身になる。タイプに応じて対処法を示し、過剰
適応の人には働き過ぎの予防、回避型には『休み過ぎると逆に疲労を長引かせる』などと助言
します」

・・・効果はどうですか。
「阪大病院で予備的に実施したところ、活動度が増したり疲労が減ったりするなどの効果が
認められました。欧米でも3~7割に有効と報告されています」
 
「ただし、導入には前提があります。慢性疲労症候群には根治療法がなく、完治率は4年後に
4割と必ずしも高くない。気長な治療が必要なことを患者自身が
理解する必要がある。その上で、治療で一定の症状改善が期待できると知ってもらいます。
疲労をなくすのではなく、疲労とうまくつきあうための治療』と考えることが重要です」

記録表など作成 欧米の治療参考
岩瀬医師らは阪大医学部付属病院で2004年ごろから、慢性疲労症候群向けの認知行動
療法を国内で先駆けて導入。
欧米での治療例などを参考に、治療に使う行動記録表や対処法のりストを作成した。

阪大病院は内科と精神科が連携する治療体制も早くから整え、大阪市立大学付属病院が設けた
疲労外来などでもこれを参考にしている。
ただ、現在は専門医の転出などもあり、症候群患者の新規受け入れは中断している。


出典 日経新聞・夕刊 2007.10.23
版権 日経新聞



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