糖尿病と歯周病

虫歯で歯が抜けるのはある程度納得出来ることです。
しかし、きれいな歯がある日ポロリと抜ける。
こんな寂しいことはそうそうあるものではありません。
この原因は歯周病

特に糖尿病の方は要注意というお話です。



歯周病との関連 免疫低下で原因菌増加

近年、関連が明らかになってきた糖尿病と歯周病
糖尿病患者は歯周病にかかりやすく、歯周病は糖尿病の「第六の合併症」と呼ばれている。
一方で、歯周病が糖尿病を悪化させることも分かってきており、歯科医師と糖尿病を診る内科医との連携が始まっている。 
 
○○県○○市の女性(70)は、六年前から2型糖尿病の治療を始めた。
生活習慣の改善のほか、ブドウ糖の腸への吸収を遅らせる薬を飲んでいる。
同時に、かかりつけの歯科医院で定期的に歯周病の治療も受けている。
「ひと通り歯を磨いた後、歯間ブラシで汚れを取り除くように気をつけている」と女性は話す。
 
歯周病の状態を評価するには、歯と歯茎の間の溝「歯周ポケット」の深さを測る。
正常な状態は、歯茎がピンクで引き締まっている。
しかし、歯茎が赤く腫れて二ミリ以上になると、「歯肉炎」と呼ばれる。
 
歯周ポケットが深くなり、うみが出たり、口臭がすると「歯周炎」となり、歯を支える骨の破壊が始まる。
さらに進むと、骨が溶けて歯が抜け落ちる。
歯肉炎は治療すれば元に戻るが、歯周炎では完全な骨の修復はできない。
 
この女性を治療している歯科医師は「治療をしても一年もたつと、歯周ポケットが深くなってしまう。糖尿病の患者は、自分のケアだけで維持するのは難しい。定期的に歯科医院を受診してほしい」と強調する。

     ◇

歯周病と糖尿病には共通点がある。
ある歯学部教授は、
▽初期に顕著な自覚症状がない
▽罹患(りかん)率が高い
生活習慣病
▽慢性疾患
▽病気の進行のメカニズムが似ている
-の五つを挙げる。
関連性は疫学調査動物実験などで明らかにされてきた。
「糖尿病を起こしたマウスの方が歯周病の進行が早い。糖尿病を多く発症する米アリゾナ州のピマインディアンを対象にした調査では、歯周病の発症率が糖尿病ではない人に比べて二・六倍高い、といったことも分かっている」と説明する。

歯周病は細菌による感染症
その細菌はどの人の口の中にも存在するが、生活習慣の乱れや加齢、糖尿病などの病気といったさまざまな要因が加わって発症する。
 
糖尿病が進むと、高血糖状態が続き、体の免疫機能が低下、歯周病を起こす特殊な細菌も増える。
また、歯周病がすでに口の中にあって重症化すると、細菌と戦おうと、炎症性細胞から「TNF-α」と呼ばれるタンパク質が大量に出される。
このTNF-αがインスリンの働きを悪くして、血糖コントロールも悪化させると考えられている。
 
歯を失う最大の欠点は、食べ物をかめなくなることだ。
糖尿病患者に適した繊維質の豊富な、かみ応えのある食事が取れなくなる。
丈夫な歯でしっかりかめば少ない量で満足感を得られ、肥満の防止にもつながる。

     ◇

歯科と医科の連携も始まった。
○○県歯科医師会は、糖尿病などの生活習慣病の知識を一般の歯科医師に普及させていくため、二〇〇七年度から研修会を実施。
さらに五つのモデル地区を選び、地域に合った具体的な連携方法を検討している。
 
糖尿病患者に歯周病があると、心筋梗塞(こうそく)や脳卒中のリスクが高まるともいわれ、決して無視はできない。
歯周病歯科医師と糖尿病専門医との連携が欠かせない。





<番外編>

糖尿病新薬、開発急ぐ 製薬各社、高齢化で患者増える

中外製薬など製薬各社が日本で新型の糖尿病治療薬の開発を急いでいる。
高齢化や食生活の変化、ストレスの増加などを背景に患者数が増えており、治療薬の市場規模も今後10年ほどで現在の5割増になる見通しだ。
日本では武田薬品工業が1999年に発売した「アクトス」が飲み薬で約25%のシェアを握るトップ製品で、ほぼ10年間にわたり新たな種類の薬がなかった。
各社は作用の仕組みが異なる成分の薬剤を投入し、拡大する需要の取り込みを目指す。
 
中外製薬は年内にも、体内の過剰な糖を尿として排出する飲み薬「SGLT2阻害薬」について、開発の最終段階となる第3相臨床試験(治験)を始める。
腎臓で血中に糖を取り込むたんぱく質の働きを抑える。インスリンの分泌を促して血糖を減らす既存薬とは異なり、インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)の負担を軽くできるという。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20100228ATDD280E227022010.html
出典 NIKKEI NET 2010.2.28
版権 日経新聞


糖尿病診断が原則1回に 学会が検査基準改定、患者負担軽減

日本糖尿病学会(東京・文京、門脇孝理事長)は10年ぶりに糖尿病の診断基準を改める。
従来2回必要だった検査の回数を、原則1回で済むようにできる新しい基準を導入する。
患者の負担が軽くなるほか、早期診断によって合併症なども防げると期待される。
 
新しい基準では、補助的な指標として用いていた「HbA1c(エイチビーエーワンシー)」をより重視して糖尿病かどうかを判定していく。
HbA1cは血液中の赤血球にあるたんぱく質にくっついた糖分を測る方法で、1度の検査で直近1~2カ月間の平均血糖値を測ることができる。
出典 日経新聞・朝刊 2010.2.26
版権 日経新聞





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