乳児消化管アレルギー増加

赤ちゃんのミルクアレルギー増加 治療用ミルクで回復

体に合わないミルクを飲むことで、赤ちゃんが血便や嘔吐などの症状を起こす「新生児・乳児消化管アレルギー」が増加し、少なくとも500人に1人の割合で、毎年全国で2千人以上が発症している可能性のあることが、厚生労働省研究班の調査で分かった。
まれに重症になる危険はあるが、アレルギー用の市販ミルクで治療できる。
研究班は診療指針を作って公開、異常があれば、医師への受診を呼びかけている。

このアレルギーの半数は生後1~7日で起こる。
症状は嘔吐や下痢、血便が中心で、多くはミルクの中のたんぱく質に反応して起こるようだ。
原因は牛乳から作ったミルクが4割、母乳と人工乳との混合も4割、母乳だけも1割以上あった。
食後まもなく、じんましんや呼吸困難になることで知られる食物アレルギーと違い、食後数時間でじわじわ症状が出るのが特徴。体重が増えなくなることが多い。

治療では、アレルギーの原因となるたんぱく質を分解したミルクなどに切り替えれば、7~8割が回復する。
これらは、じんましんなどを起こすミルクアレルギー用に、粉末で850グラム3千円程度で一般に広く売られている。

このミルクで治らない赤ちゃんには、たんぱく質をさらに細かくした特殊なミルクを使えば、大半は治療できるという。
これは医師が処方するほか、340グラム3千円ほどで市販もされている。

日本小児科学会など関連学会での報告例は、1980年代~95年ごろは年に0~5例程度だったが、2000年ごろから、10~60例ほどに増加。
03年に埼玉で死亡例、08年には愛知で腸が壊死した重症例が報告された。

研究班(主任研究者=国立成育医療研究センターの野村伊知郎医師)は東京都内すべての産科、小児科、総合病院、計約1085施設にアンケート(回答率約47%)したところ、08年9月~09年8月に103例の発症例が確認された。
この数字をもとに出生数から試算すると、発症率は0.21%で、全国では毎年生まれる赤ちゃん約100万人のうち、2千人以上が発症している可能性のあることがわかった。

急患患者の受診が多い大学病院などの回答が少なく、実際の発症率はさらに高い恐れがあるという。

原因は不明だが、子どもに重症のアトピー性皮膚炎などのアレルギーも増えていることから、研究班は発症者の実数が増えているとみている。

研究班は、治療に役立てるため、診断治療指針も作成した。
ホームページ(http://www.fpies.jp/)に指針を掲載、病院からは診断例の報告を募っている。

野村医師は「すぐに命にかかわることは少なく、勝手に母乳をやめたり、素人考えでアレルギー用のミルクを使ったりすると、栄養不足などから発育不良になりかねない。適切に診断、治療すれば大丈夫なので、まずは医師に相談して欲しい」と話す。                 (小坪遊)


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出典 朝日新聞・朝刊 2010.10.27
版権 朝日新聞社



<関連サイト>
新生児-乳児消化管アレルギー診断治療指針
http://www.nch.go.jp/imal/FPIES/icho/pdf/fpies.pdf

新生児・乳児消化管アレルギー_静岡県立こども病院アレルギー科
http://www3.tokai.or.jp/atopy/eiicma/framepage-icma.html

医療ナビ:消化管アレルギー 生後まもなく嘔吐、血便などを起こす
http://d.hatena.ne.jp/foodisco/20100210/1265785200






<自遊時間>
学窓と古典の薫りが高い文化勲章ながら、今年は「現役職人」が強くにおう。
三宅一生さん(72)の衣、蜷川幸雄さん(75)の劇、そして安藤忠雄さんの建。
究めた一字を、世界が認めたすご腕である。
  「天声人語」(朝日新聞・朝刊 2010.10.27)より

私は建築が好きなので、何と言って安藤さんの受賞に興味を持ちました。
機能と美。
機能性はどうかということが知りたいところです。





建築ファイル:安藤忠雄
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小海町高原美術館は今年の5月の連休に出かけました)




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