大人の食物アレルギー

大人の食物アレルギー… 原因物質 皮膚、粘膜からも

小麦の成分を含んだ洗顔せっけん「茶のしずく」を使っていた人の一部が、小麦の食品を食べてアレルギーを発症したことがわかった。
子どもの食物アレルギーと違い、大人では皮膚から吸収された物質が原因で、食物アレルギーを起こすことがある。(針原陽子

関東地方に住む30歳代の女性は、数年前から、パンやパスタなど小麦の入ったものを食べた後に運動すると、顔や目などにかゆみを感じるようになった。
症状は徐々に重くなり、女性は2009年春に国立病院機構相模原病院(神奈川県相模原市)を受診。
入院して原因を調べたところ、3年ほど前から使い始めた洗顔せっけん「茶のしずく」を原因とする小麦アレルギーと診断された。
女性は「なぜせっけんが原因で小麦アレルギーに?」と驚いた。

同病院臨床研究センターの福冨友馬医師によると、一般的な食物アレルギーは、食べ物に含まれるアレルゲン(アレルギーのもととなる物質)を口から摂取するうちに、アレルゲンを異物とみなした体の免疫が「IgE抗体」を作る。
この抗体ができた後にアレルゲンが体の中に入ると、じんましんなどのアレルギー反応が起きる。
鶏卵や牛乳などの子どもの食物アレルギーの多くが、このタイプだ。

一方、大人が発症する食物アレルギーは、皮膚や粘膜からの吸収がきっかけになるタイプが少なくない。

「茶のしずく」の場合は、洗顔するうち、せっけんに含まれていた「加水分解小麦」という小麦由来のたんぱく質が、皮膚や目・鼻の粘膜から体に吸収され、抗体ができたとみられる。
せっけんを使った際に顔にかゆみなどを感じる場合や、小麦の入ったものを食べると症状が出る、食べた後に運動をすると呼吸困難など全身症状が出るなど、症状は人によって様々だ。
加水分解小麦を含むせっけんは他にもあるが、アレルギーの発症例はほとんどないという。

皮膚や粘膜を通じた吸収で食物アレルギーになる例には、医療関係者に多い「ラテックス・フルーツ症候群」がある。
医療用ゴム手袋などに使用される天然ゴム(ラテックス)のたんぱく質を皮膚から吸収した人が、似たたんぱく質を持つバナナやアボカド、キウイなどを食べると、重い食物アレルギーの発作を起こすことがあるものだ。

花粉症の人が、アレルゲンと似た成分を持つ果物などを食べて発症する「花粉・食物アレルギー症候群」の例もある。
ハンノキやシラカバの花粉症の人がリンゴや桃を食べた場合、ブタクサの花粉症の人がメロンやバナナを食べた場合などの口のかゆみや腫れが典型例だ。

福冨医師は「食品由来の成分を添加しているせっけんや化粧品は多いが、天然成分だからと過信せず、症状が出たらすぐに専門病院に相談してほしい」と話している。

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【「茶のしずく」による小麦アレルギー】 
2010年ごろから、厚生労働省に、通信販売の洗顔せっけん「茶のしずく」によるアレルギー発症に関する医療機関からの報告が相次いだ。
厚労省は同年10月、加水分解小麦成分を含む医薬部外品などの製造販売業者に対し、成分や注意事項を製品に表示するよう求める通知を出した。
製造元の「悠香」(福岡県大野城市)は、同年12月、小麦成分を含まない製品に切り替え、旧製品の自主回収を行っている。

出典 YOMIURI ONLINE 2011.9.15
版権 読売新聞社



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