鼻炎からの感染症 急性鼻副鼻腔炎 症状に応じ治療指針
段階で抗菌薬使い分け黄色く粘り気のある鼻汁を訴える病気の中でも、頻度の高い「急性副鼻腔炎」。
鼻腔(鼻の穴)の周辺にある副鼻腔での炎症だ。
その多くが鼻腔で起きる鼻炎を伴っていることから、日本鼻科学会(東京)は6月、「急性鼻副鼻腔炎」と呼ぶようにし、初めての診療ガイドラインを策定。
症状に応じた明確な治療指針が示された。 (福沢英里)
副鼻腔は、鼻腔の周辺に4カ所あり、いずれも対になった骨の空洞部分をいう。
ほおの骨の中にある「上顎(じょうがく)洞」、両目の間の「篩(し)骨洞」、両まゆの上の「前頭洞」、さらに篩骨洞の後ろに位置する「蝶形(ちょうけい)骨洞」からなる。
ガイドラインの作成委員を務めた、三重県伊勢市の市立伊勢総合病院の間島雄一院長は「従来は鼻炎、副鼻腔炎と分けてきた。だが実際に副鼻腔で起こる急性炎症の多くは、急性鼻炎に続いて起こる。海外の例に従い、急性鼻副鼻腔炎の用語を採用した」と説明する。
通常、ウイルスが鼻腔に感染して炎症が起き、水のようなさらさらした鼻水やくしゃみなどの症状が出始める。
ウイルス感染に続いて細菌感染が起こり、その炎症が副鼻腔にも及ぶと、副鼻腔に分泌物やうみがたまって、黄色っぽい鼻汁が出たり、その鼻汁がのどに流れて、たんが絡んだせきが出始めたりする。
特にせきが長期間続く場合、急性や慢性の鼻副鼻腔炎も疑う必要がある。
特にせきが長期間続く場合、急性や慢性の鼻副鼻腔炎も疑う必要がある。
多いのは上顎洞で炎症が起こるタイプ。特に小児の場合、成人に比べ、副鼻腔に細菌が入りやすい構造をしており、上顎洞は鼻腔からも近いため、頻度も高くなる。
ガイドラインでは、鼻汁の状態やはなをかむ頻度、せきの状態、顔の痛みなどの症状別に重症度を分類。小児は不機嫌かどうか、睡眠が妨げられていないかどうかといった判断基準も設けた。
治療は抗菌薬の投与やうみの除去など。症状に応じ、適切な抗菌薬の使い分けも示された。
安易に抗菌薬を多用し耐性菌を増やさないよう、重症度に応じた経過観察の必要性や鼻汁を除く処置を優先するなどの指針も盛り込まれている。
安易に抗菌薬を多用し耐性菌を増やさないよう、重症度に応じた経過観察の必要性や鼻汁を除く処置を優先するなどの指針も盛り込まれている。
重症化すると合併症の危険性も。
例えば症状を訴えることができない新生児や乳幼児にみられる「新生児上顎洞炎」は目やほおの周囲が腫れる。脳に及ぶ合併症もある。
例えば症状を訴えることができない新生児や乳幼児にみられる「新生児上顎洞炎」は目やほおの周囲が腫れる。脳に及ぶ合併症もある。
子ども アレルギー疾患と合併も
小児の場合、耳鼻科専門医ではない小児科医が診ることも多い。
小児科医にできる副鼻腔炎の診療に詳しい、「てらだアレルギーこどもクリニック」(名古屋市南区)の院長は「鼻粘膜の状態を観察することが少ない小児科医が診る場合、せきやたんが多いと気管支炎と考え、適切な治療が行われないケースがある」と指摘する。
小児の場合、耳鼻科専門医ではない小児科医が診ることも多い。
小児科医にできる副鼻腔炎の診療に詳しい、「てらだアレルギーこどもクリニック」(名古屋市南区)の院長は「鼻粘膜の状態を観察することが少ない小児科医が診る場合、せきやたんが多いと気管支炎と考え、適切な治療が行われないケースがある」と指摘する。
東海地方に住む男児(3歳)は重症の喘息症状があり、吸入ステロイド薬の治療を受けていたが、長引くせきに悩まされていた。
CTによる画像診断で副鼻腔炎を起こしていることが分かり、適切な抗菌薬の投与で症状が良くなった。
CTによる画像診断で副鼻腔炎を起こしていることが分かり、適切な抗菌薬の投与で症状が良くなった。
重症化を防ぐため、家庭でもできる対応としては、鼻汁を除く処置が勧められる。
自分で、はなをかむことができない乳幼児は鼻が詰まると息苦しく、機嫌も悪くなる。
自分で、はなをかむことができない乳幼児は鼻が詰まると息苦しく、機嫌も悪くなる。
はなをかむことができる子どもなら、食塩水を用いた「鼻洗い」という方法もある。
鼻アレルギーの治療と同じ要領で鼻の内部を洗うと、細菌の除去や粘り気のある鼻汁を取り除くことができる。
鼻アレルギーの治療と同じ要領で鼻の内部を洗うと、細菌の除去や粘り気のある鼻汁を取り除くことができる。
食塩水は、水道水500ミリリットルに対し、食塩小さじ1杯(5グラム)が目安。
入浴時、食塩水を入れたペットボトルを浴槽で温めてから、使い捨て注射器に入れて、約5~20ミリリットルを鼻の中へ注入する。
入浴時、食塩水を入れたペットボトルを浴槽で温めてから、使い捨て注射器に入れて、約5~20ミリリットルを鼻の中へ注入する。
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