関節リウマチ、すぐ診断

関節リウマチ、すぐ診断 欧米の分類基準で早期治療

関節に腫れや痛みが続く関節リウマチ。
より早く治療を始めるために、診断(分類)基準が2009年に欧米で変わった。
国内の臨床現場でも新しい基準を使う医師が増えており、日本リウマチ学会も近く基準を変更する。
治療薬の開発が進み、早期に治療すれば症状を無くすこともできるようになってきた。

東京都内に住む会社員の男性(32)は昨年初め、左手の親指の腫れと痛みに悩まされるようになった。関節は倍近くに腫れ赤紫色になって熱を帯びた。
仕事は装飾品の手作りのため、当初は「手を酷使しすぎたのかな」と思った。

2週間以上たっても親指の関節の腫れと痛みは治まらず、人さし指も腫れ、他の指の関節や手首も痛くなった。
水道の蛇口をひねるのも一苦労。
朝は手をついて起きると手首に激痛が走り、ひじを使わざるを得なくなった。

近所の外科を皮切りに、3カ所の診療所を受診。
痛み止めや湿布、電気刺激によるリハビリも受けたが、症状は治まらなかった。
親指の関節が腫れ始めてから半年以上たっていた。

男性は中学時代にけがで入院したことがある某大学病院の整形外科を受診。
リウマチ内科に行くよう言われた。

リウマチ内科のT教授は手などの関節を診ながら、男性が腫れを自覚していた関節以外についても次々と腫れがあると指摘。
男性は関節リウマチと診断され、抗リウマチ薬のリウマトレックス(一般名メトトレキサート)の服用を始めた。

これ以前に診療所で受けた血液検査でリウマチの疑いは否定されたことなどから、男性は当初、診断に半信半疑だった。
が、薬を飲み始めて2週間もしないうちに親指の腫れがひき始め、診断に納得した。
薬の服用から2カ月ほどすると、たまに痛みを感じるほかは症状は無くなった。

男性は某大学病院を受診する際、原因が何であれ重症に違いないと覚悟していた。
しかし竹内さんから「まだ軽いうちに診断がついて良かったですね」と言われ、驚いた。

「2009年に欧米のリウマチ学会が作った新しい診断基準を使ったので、この男性の診断が早くつきました。従来の基準では、まだ診断できなかったと思います」と竹内さんは言う。


●日本版、年内にも制定
1987年にできた従来の基準は、朝の関節のこわばりが1時間以上続くことや、3カ所以上の関節の腫れなど7項目のうち4項目以上が当てはまれば関節リウマチと診断する、としている。

会社員の男性の場合、当てはまるのは3項目だけで従来なら診断されなかった恐れがあった。

Tさんが使った欧米の新基準は、エックス線検査で滑膜炎(骨びらん)などの有無などを確かめる。
そのうえで、腫れている関節の数や、リウマチの場合に血中に増えることが多い物質「抗CCP抗体」「CRP」などを調べ、該当する点数を合算する。

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欧米の関節リウマチの新診断(分類)基準
従来の基準は患者約260人の症状を基に作られたが、リウマチを患う平均罹患(りかん)期間は7・7年で症状は早期のものではなかった。
このため早期診断しにくいという問題点があった。

リウマチ学会は昨春、「新基準検証小委員会」を作り、国内向けに新基準をどう導入するか検討中だ。
委員長のT教授らが早期リウマチ患者の初診時データを従来基準と新基準で診断したところ、従来基準で診断できたのは半数程度だったのが、新基準では75%が診断できた。

ただ、国内では、リウマチの専門医以外が最初に診察することが多い。
このため、関節リウマチ以外の病気ではないかどうか鑑別する基準の最初のステップが一番の関門となると予想される。

小委ではリウマチと鑑別が難しい病気をリストアップする作業などを進めており、欧米の新基準に追加情報を加える形で、年内にも国内向けの新基準を発表する予定だ。

早期発見が強調されるようになったのは最近10年ほど。
治療薬の選択肢が増え、早く治療を始めれば症状がほとんど無い「寛解(かんかい)」と呼ばれる状態になる患者も出ている。

以前はいい薬が少なく、早期診断のメリットがあまりなかった。
今は効くスピードも効果も格段に良くなった薬がそろい、早く治療を始めるメリットは大きい。
少しでもリウマチを疑ったら専門医を受診するとよい。
リウマチを疑う最初の症状は「痛みを伴う関節の腫れ」という点は新基準も同じだという。


<関節リウマチの解説>
自分の免疫の仕組みに異常が生じて起きる病気だが、詳しい原因はわかっていない。
全身の関節に炎症が起こり、とくに手足の関節に起きやすい。
患者は推計で約70万人。
30~59歳が多く、女性の患者は男性の約3倍とされる。
主な治療は抗リウマチ薬などによる薬物療法
より効果が高い生物学的製剤も次々と出ている。
運動などリハビリテーションも大切。
重症化して関節が変形した場合、人工関節を入れるなどの手術をすることも。
                           (東京本社科学医療グループ 大岩ゆり)
出典 朝日新聞・朝刊 2011.1.20(一部改変)
版権 朝日新聞社



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