巨大血栓 脳血管が突然詰まる!

昨夜のNHK TVの健康番組「ためしたガッテッン」での放送内容です。

脳血管が突然詰まる!あなたを狙う巨大血栓

脳梗塞の中でも特に重症化しやすいタイプの脳梗塞があります。
脳の細胞の大部分が壊死(えし)してしまうため、突然死や寝たきりになる確率が高い「ノックアウト型脳梗塞(心原性脳塞栓)」です。

原因は、大きいものでなんと3㎝に及ぶ巨大な血栓
脳の血管の上流部分に詰まるため血流が途絶える範囲が広く、壊死する範囲が広いのです。

一体どうしてこんなにも大きな血の固まりが詰まってしまうんでしょうか?

その原因とメカニズムを知ることで、脳梗塞を徹底予防する方法を解明します!

番組ディレクターからのひとこと
脳梗塞はスピードが命。でも・・・
脳梗塞は「tPA」という画期的な薬のおかげで、発症してからすぐに治療すれば後遺症もなく社会復帰できる確率が高まっています。
しかし、今回ご紹介する「ノックアウト型」はその画期的な治療薬でさえ歯が立たない・・・。
一度発症した患者さんの状況を取材すると、社会復帰のために長期間のリハビリを余儀なくされた方が多くいらっしゃいました。
だからこそ、きちんとした予防法をお伝えしたい。
そう考えて番組を制作しました。

ノックアウト型脳梗塞の怖さ…
脳梗塞で救急搬送された患者さん。
搬送直後は言語も不明瞭で半身まひの兆候が出ていました。
しかし、「tPA」という治療薬で脳の血管に詰まった血栓を溶かす治療を行ったところ、症状が劇的に改善。
2週間後には無事に退院できました。
発症してから3時間以内であれば、tPAによる治療が可能です。

しかし、ノックアウト型脳梗塞で搬送された患者さんには、例え3時間以内であってもtPAが使われないことがあります。
血栓が大きすぎて、溶かしてもすぐに先の方で詰まり、薬の副作用で出血のリスクが高まってしまうので使えないのです。
結果、重症化してしまいます。

この巨大な血栓ができるのは実は脳の中ではなく、なんと心臓の中!心臓でできた血栓が血流に乗って運ばれ脳の血管に詰まるのです。

では、一体なぜ心臓の中に血栓ができるのでしょうか?

巨大血栓はこうしてできる!
人工心臓を使って巨大血栓ができる様子を再現する実験を行いました。
血栓ができる時の心臓の動きをよく観察すると、動きが悪くて鼓動が不規則・・・。

実はこれ、「心房細動」という不整脈の一種。
この状態だと、心臓の中で血液がよどんで固まりやすくなるのです。

できあがった血栓電子顕微鏡で観察すると、網目状の物質が赤血球や白血球など他の血液成分をからめ取っています。
「フィブリン」という物質です。
本来は傷ができたときに固まって止血する役割を持っています。
フィブリンが網目状になって固まってしまうと、血栓ができるのです。

しかし、フィブリンが固まりやすくなるのは心房細動でよどむことだけが原因ではありません。
もう一つ、重要な要素があります。
それが「動脈硬化」。
体中の血管が動脈硬化によって傷だらけになると、フィブリンはその傷を治そうとして固まりやすい状態になります。
そして、そのフィブリンが心房細動によってよどみやすくなった心臓に戻ってきたとたん、巨大血栓を作ってしまうのです。

動脈硬化予防法 最新情報!
フィブリンが固まりやすくなって巨大血栓を作る原因「動脈硬化」を予防するための最新情報です。

血管の広がりやすさから動脈硬化になりやすいかを推定する検査を行ったところ、基準値を下回る人がいました。
その方たちに動脈硬化予防に効果てきめんの「ある方法」を2週間続けてもらったところ、ほとんどの人が数値が基準値以上に改善したのです。

「ある方法」とはガッテン流スロージョギング。
鼻歌が歌えるくらい楽なジョギングを一日30分、2週間続けてもらいました。

スロージョギングなどの有酸素運動をすると、血管の内側の内皮細胞が整列して血流が良くなります。
すると、血管を広げる作用がある「NO(一酸化窒素)」という物質がより多く出るようになって広がりやすさがアップすると考えられています。
血管が広がりやすくなれば、血圧が安定して血管を傷つけにくいので、動脈硬化になりにくいのです。


今回のお役立ち情報
血栓を予防する薬について

大きく分けて2種類あります。
「抗凝固薬」と「抗血小板薬」です。

●抗凝固薬
フィブリンが固まらなくなる作用があり、ノックアウト型脳梗塞の原因となる、心臓にできる血栓を予防します。
成分名は「ワルファリン」「ダビガトラン」などです。

●抗血小板薬
血小板が固まらなくなる作用があり、動脈硬化がある血管そのものにできる血栓を予防します。

※2011年3月に登場した新薬「ダビガトラン」は、使用に際して注意が必要です。
「70歳以上」「中等度の腎機能障害」「胃潰瘍など消化管出血の既往がある」などの条件に当てはまる場合は、使用量に注意が必要で慎重に投与する必要があります。
また、重度の腎機能障害がある方は使用不可です。
必ず循環器などの専門医の診断を受けてください。

抗凝固薬を飲むべきかの判断基準
「心房細動」という不整脈があるかどうかが前提条件です。
「心房細動」がある方は以下の項目に当てはまるかを 確かめてください。

抗凝固薬を飲むべきかの判断基準
心不全
高血圧
75歳以上
糖尿病
脳卒中/一過性脳虚血発作を起こした事がある

脳卒中治療ガイドライン2009より ※一部改変)

以上の項目で1つでも当てはまるものがあれば、抗凝固薬での治療が推奨されています。

※ただし、70歳以上の方は使用にあたって注意が必要です。
必ず専門医に相談してください。

動脈硬化予防に効果大のガッテン流スロージョギング
鼻歌が歌えるくらいゆっくりジョギングします。

ポイントは以下の6点です
ポイント(1) 背筋を伸ばす
ポイント(2) やや前傾姿勢
ポイント(3) 足はけらずに押すだけ
ポイント(4) ニコニコ&おしゃべりしながら
ポイント(5) きついと感じたら歩く
ポイント(6) 1日30分を目標に!
(10分×3回など細切れでもOK)