心房細動 脳梗塞の陰に不整脈あり

脳梗塞の陰に不整脈あり 心臓が震えて血栓 脳に血管で詰まる

脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりして手足がしびれたり言葉が出なくなったりして意識を失ってしまう病気だ。
死亡することもあり、一命を取り留めたとしても重い後遺症が残る場合が少なくない。
中でも重症になりやすいのが、心臓にできた血栓(血のかたまり)が脳の血管に詰まるケース。
不整脈のひとつ心房細動が、そのリスクを高める。

重症化しやすく再発も
脳卒中には大きく分けて血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」と、血管が詰まる「脳梗塞」の2種類がある。
 
日本ではかつて脳出血が多かったが、大きな原因である高血圧の管理が進んだり、栄養状態が良くなって血管が破れにくくなったりしたことから割合が下がった。
それに代わって脂質異常や糖尿病の人に多い脳梗塞が増えている。
現在では脳卒中の約60%が脳梗塞だ。
 
脳梗塞はさらに、動脈硬化が原因で発症する「アテローム血栓脳梗塞」、細い動脈が詰まる「ラクナ梗塞」、そして心臓に出来た血のかたまり(血栓)が血液の流れに乗って脳の血管に詰まることで起きる「心原性脳塞栓症」に分けられる。

小さな脳梗塞なら一時的なマヒなど、軽症で済む場合も多い。
しかし、心臓でできた血栓は比較的大きく、これが脳の太い血管を詰まらせる。
そのため、心原性脳塞栓症はダメージが大きい。

心原性脳塞栓症になった人のうち約2割が死亡し、寝たきりや介助が必要になった人を合わせると約6割を占める。

脳梗塞が起きた場合、3~4時間以内ならtPAという血栓を溶かす薬を使ったり、カテーテルを通して直接血のかたまりを除去したりする治療法がある。

可能なら積極的にそうした方法で治療するが、成功率が高いとは言えない。

また、他の脳梗塞でも発症後10年間の再発率は半数近くになるが、特に心原性脳塞栓症の場合は7割以上で再発がみられる。
薬で予防できるのだから予防した方がいい。

凝固予防薬 相次ぎ登場
心原性脳塞栓症の原因で最も多いのが、不整脈の一つ、心房細動だ。
心房細動のある人のうち3分の1は、一生のうち一度は脳梗塞を起こすという。

心房細動になると心臓は血液をきちんと送り出すことができず、血がよどんで、血栓ができやすくなる。

特に高齢者は気がつかずに過ごしている人が多い。
血圧が急に低くなった人や「何となくもやもやする」というので検査してみると偶然見つかることもある。
 
心房細動かどうかは心電図で検査する。

一時的な心房細動で、検査したときに心電図に現れない場合には24時間の心電図を記録する「ホルター心電計」をつけて検査したり、胸が苦しくなるなどの症状が出たときに自宅でも心電図が取れる携帯型心電計などを使ったりする。
  
心房細動があれば、脳梗塞の予防をする。
特に心房細動に加えて高齢などリスクが高い場合は、強く勧められる。
リスクが高いのは、高血圧、75歳以上の人、糖尿病や心不全などの既往を持つ人たちだ。
 
脳梗塞の予防には、血が固まらないようにする抗凝固薬を飲む。
 
これまで、抗凝固薬と言えばワルファリンという薬が一般的だったが、使いにくい面があった。
 
ワルファリンを飲んでいる間は、効果を弱めるビタミンKが多い納豆や海藻といった食べ物が食べられない。
また、効き過ぎると出血しやすくなるため、1~2カ月に一度は血液検査をして薬の量の調整が必要だ。
つまり、人によって必要な量が違い、1度に5~6錠が必要な場合もある。
 
最近、ワルファリンの欠点を解消したダビガトラン(商品名プラザキサ)、リバーロキサバン(同イグザレルト)など、新しい薬が相次いで登場した。
新薬は食事制限がなく、一定量でよいうえ、血液検査が必要ない。
副作用の面でも、脳出血のリスクがワルファリンに比べて少ないなどの特徴がある。
ただ、消化器での出血リスクは同程度だという。
  
薬が選べるようになって、脳梗塞の予防はしやすくなった。
家庭用血圧計などで脈拍が分かるので、高齢者は定期的に自分の脈を診て、乱れるなどおかしく感じたら心房細動がないか検査するとよい。


心房細動とは
最も多い不整脈のひとつ。
心臓の上部にある心房が細かくけいれんしたように震える状態になる。
めまい、不快感などの症状が出るが、はっきりとした症状がない場合もある。
一時的な発作や、発作が続くものなどがあるが、どのタイプでも血栓ができる危険性がある。
発作を抑える薬を投与する治療法や、発作を起こす部分に細い管(カテーテル)を入れて不整脈の回路を焼き切る治療法などがある。
高齢になるほど出やすく、高血圧、飲酒や喫煙、ストレスなどでも出やすくなる。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2013.5.20