新しく登場した抗血栓薬

血栓薬2種 特徴を理解

東京都中央区のNさん(71)は昨年8月、自宅の鏡を見て異変に気付いた。
顔面がしびれ、唇がつり上がっている。

都内の救急病院で、一過性の脳虚血発作と分かった。
脳に血液が一時的に流れなくなり、脳梗塞が起きるサインと言われる。

Nさんは毎年の健康診断で、心臓上部の心房が不規則に震える不整脈「心房細動」と指摘されてきた。
ただ、自覚症状はなかった。

心房細動の推定患者数は約100万人。
心房内の血液がよどみ、血液の塊になりやすい。
長島さんの場合、この塊が動脈を移動して、脳内で一時的に詰まったと考えられた。
そのまま塊がとどまると、脳梗塞につながる危険があった。

そこですぐに、血液を固まりにくくする抗血栓薬ワルファリンカリウム(商品名・ワーファリンなど)を飲み始めた。
救急病院を退院後は、心臓血管研究所付属病院(東京都港区)に通院、この薬を飲み続けた。

ひとまず安心したが、煩わしさも感じた。毎月1回の採血が必要で、その結果によって、飲む量が0・5ミリ・グラム単位で変わるのだ。
また、ビタミンKを多く含む物を食べると薬が効きにくくなるため、好物の納豆を食べられなくなった。

しかし、こうした不便さは、今年5月に解消した。同病院長で循環器内科医の山下武志先生から、ダビガトラン(商品名・プラザキサ)という抗血栓薬を処方してもらったからだ。

 
3月に発売され、抗血栓薬としては50年ぶりの新薬。
用量は毎回一定で、採血は必要ない。
食事制限もなく、「何でも食べられてうれしい」とNさん。

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ただ、新薬には短所もある。
一つは値段の高さで、ワーファリンの10倍程度かかる。
もう一つは、効果が長持ちしない点。
ワーファリンの服用は朝1回だが、新薬は朝と夜の2回だ。

ワーファリンには、出血すると止まりにくくなる副作用があるが、新薬にもある。
新薬は、発売から半年で6万4000人が服用。
副作用症例約1200件のうち、15人が死亡、91人が重い出血性の副作用と報告された。
厚生労働省は8月、製造販売元に、慎重な投与を求める警告欄を添付文書に設けるよう指示した。

山下先生は「二つの薬は、ともに出血のリスクはあるが、脳梗塞の予防には有効だ。それぞれに特徴があるため、どちらを使ったらよいか循環器の専門医に相談してほしい」と話す。

出典 YOMIURI ONLINE yomi.Dr. 2011.10.20
版権 読売新聞社


<私的コメント>
記事の中で山下先生がにこやかに微笑むNさんの血圧を診察室で測定している写真が掲載されています。
山下先生は心房細動の研究で有名な先生ですがちょっとこの写真には注文があります。
まず1つは左腕で測定していること。
これはいただけません。
医師は原則的に右腕で測定します。
それは左右の腕で血圧が違うことがあるからです。
(もっとも自動血圧計で自分で測定する場合には左腕のため多くの患者さんは左腕を出します)
もう1つは厚手の長袖の上に駆血帯を巻いて測定していることです。
私もしばしば冬場には(手抜きで)同じような血圧測定をしています。
しかし、新聞に掲載される場合には半袖の状態で測定する写真を用意する配慮が必要です。
何故なら、この写真を見た読者は、正しい血圧測定法と思ってしまうからです。

インフルエンザシーズンで必ず放映されるワクチン接種のシーン。
若い先生はきちんと正しい皮下注射を行っています。
しかし、ベテラン(年配)の先生はしばしば筋肉注射になっています。
諸外国は別ですが、日本では多くのワクチンは皮下注射と明記されています。
TVに出るような先生は無神経(無頓着)な先生かも知れません。
「恥ずかしがりや」の私は、全国に間違った注射法を報道されてしまうような「厚顔無恥」なことはとても出来ません。

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