子どもと体温

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正しく測定平熱を知る

機嫌が悪かったり、ぐったりしていたり。
子どもは体調が悪くても、言葉でうまく伝えられない。
そんな時、体温を測ると、病気かどうかを見極める大きな手がかりになる。

日本人の平熱はどのぐらいなのか。
50年以上体温の研究を続ける、ひかりの里クリニック(山梨県甲斐市)院長の入来正躬(いりきまさみ)さんらがかつて、10~50歳の男女約3000人を調査したところ、平均値は36・89度で、7割強が36・6度~37・2度の間だった。
「体温には個人差があり、この値が正常という数値は決まっていない」と入来さん。

そうなると、「平熱からどのぐらい高いか」が体調の異常を推し量る目安になる。
まずは、平熱を知ることが大切だ。

体温は1日の中でも変化し、測る部位でも差が出る。
テルモ体温研究所(東京都千代田区)所長の和田優子さんは、「体調の良い時に、同じ部位の体温を、起床時など時間帯を決めて、日をあけて何回か測ると、体温の変化や平熱の範囲がわかります」とアドバイスする。

正しい測り方も知っておこう。
わきの下では、
〈1〉わきの汗をふく
〈2〉測定部分(先端)がわきのくぼみの中央にしっかりあたるよう、斜め下から上に体温計を押し上げるように入れる
〈3〉測定する側の手のひらは上に向け、反対側の手で肘を押さえ、密着させる
のがポイント。

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乳幼児なら大人の膝に乗せ、後ろから抱きかかえるようにして、大人の手で肘を押さえる。

体温計の仕組みによって計測時間が異なるため、説明書で確かめよう。
じっとしていられない乳幼児は、耳の穴に入れて測る体温計を使うと約1秒で測れる。

出典 読売新聞 2011.9.4
版権 読売新聞社

<私的コメント>
耳の穴に入れて測る体温測定法は、じっとしていない小さいお子さんでは測りにくい場合があります。
耳の鼓膜を介して脳の温度を測定する原理ですので、センサーが正しい方向を向いていないと正しく測定出来ません。
当院では、この体温計を使用していた時期もありましたが、現在は額に当てて測定する体温計を使用しています。


体温は測定部位によって異なるだけでなく、朝は低く、夜は高くなります。
日々の体温変化を正しく見るには、同じ部位で一定時刻に測ることが大切です。
わきの下と舌下のどちらがよいということはありません。
水銀体温計の場合、正しい測定には、わきの下で10分、舌下で5分かかります。
10分は結構長い時間ですよね。
より短い時間で体温を予測するデジタル体温計が普及する理由がわかります。


低体温で意欲低下

朝起きても、だるく、授業中に居眠りをしてしまう。
そんな子どもの異変に気づいたら、まず1日の体温の変化を調べてみよう。

埼玉大准教授の野井真吾さん(学校保健学)は、中高生男子(約450人)の起床から就寝までの体温の変化を調べた。

体温は1日の中で変化する。
普通は、起床時が最も低く、朝食や登校などの活動により上昇、昼から午後3時ごろにピークを迎え、就寝前に再び、起床時とほぼ同じ程度に下がる。

だが、起床時の体温が36度未満の生徒(22%)は、1日を通して体温が上がりにくく、ピークも遅いなど体温リズムが乱れていた。

低体温傾向の生徒に、起床時の登校意欲を尋ねると、「あり」は37%で、36度以上の54%を下回った。

野井さんは「起床時の体温が低いと、脳や体の働きが鈍くなって、心身に不調が起きやすくなり、学習や運動の意欲が低下してしまう」と説明する。
低体温傾向の子どもは、眠気やだるさ、頭痛や腹痛を訴えることが報告されている。

低体温の原因は、生活リズムの乱れから、体温調節に関わるホルモンや自律神経の働きがおかしくなっていることだ。
改善にはまず、日中に運動などで太陽の光を浴び、夜は明るすぎない環境で過ごし夜更かしをしないことから始めたい。

また、朝食も必ず食べる。
朝のエネルギー補給は、体温上昇に欠かせない。

研究では1日10回の計測だったが、野井さんは、「1日5回(起床時、登校直後、昼食前、下校前、就寝前)でも体温の変化がわかるので、ぜひ、一度、確かめてほしい」と話す。

出典 読売新聞 2011.9.11
版権 読売新聞社


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