低体温

昨日の診察で患者さんから低体温に関する質問を2人の方から受けました。
1人目は、「体温を保つことが健康に大切だということを、ある新聞記事で知ったのですが、これっってどういうことですか」という質問です。
これって安保教授が唱えていることだなとピンと来たので、その説明をしました。


コラム - 安保理論の会|医学博士 安保徹 公式ホームページ
http://abo-theory.jp/background.html

低体温は免疫を低下させる
http://www.no1-sauna.com/info/sp/hie1.html



もう1人の高齢の方は、「手足が温かいのに体が冷たい」というお話でした。

少し前のことになりますが、中学校の校医をしていた時の父兄懇談会の席のことです。
父兄から「最近、低体温の学童が多いようですが、それはどうしてでしょう」という質問を受けました。

昨夜、たまたま夕食時にTVを観ていたら「低体温」の番組をやっていました。
ご覧になられた方も多いのではないでしょうか。



##室内で凍死!?低体温が中高年を襲う
体温が低くなってしまう“低体温”。
血が止まらなくなったり、感染症にかかりやすくなったり、命を落とすこともあります。
「冬山で遭難したときに起きる特殊なものでしょ・・・自分には関係なーい」と思っていたら大間違いです。
なんと子どもの3割、高齢者の4割が低体温という調査結果もあります。
あなたの「冷え」は大丈夫なのか?
冷え性」と何が違うのか?



##たかが1~2℃の低下で・・・身も凍る事実
#平熱がちょっと低めなんて笑っていられない! 低体温の真の恐ろしさが判明
熱が出ると心配する人が多い反面、体温が1-2℃低いからと気にする人は少ないものです。
しかし最近の研究で、わずか1.5℃の体温低下が、免疫機能の低下を引き起こし感染症を増加させるだけでなく、重篤(じゅうとく)な心臓疾患のリスクを2~3倍に上げることがわかってきました。
一日の体温の変化のグラフと、突然死した人の割合のグラフを重ねてみると体温が下がる時間帯ほど、突然死が増えているのがわかります。

特に自覚せずに低体温に陥りやすいのが睡眠中です。
暖かい布団で眠っていたとしても、10℃以下の寒い部屋で寝ていた場合、呼吸によって内臓が直接冷やされ、体温が35℃台まで低下してしまうこともあります。
このように体温が下がってしまうと、寝ている間に突然死する、いわば「ぽかぽか布団の中で凍死」のようなケースに陥る可能性があるのです。

しかし全ての突然死が低体温によるものではもちろんありません。



##似て非なる冷え性と低体温
冷え性と低体温の違いは?
混同したままでいると、いつまでも自分の低体温には気づけないかも知れません。

長い間冷え性に悩むAさんとBさん。
しかし、体温を測ってみると、Aさんは35.1℃の低体温なのに、Bさんは36.6℃。
同じ冷え性なのに、一体何が違うのか?

実は、冷え性と低体温のメカニズムは全くの別物なのです。
なんと、手足の冷えは、末梢(まっしょう)血管を収縮させて、暖かい血液を中に閉じ込めて熱が逃げないようにする、つまり、熱を逃さないための大事な仕組みだったのです。
体の表面が冷たくなるのは、寒さに対して体の内部の温度(深部温)を守ろうと反応している証拠です。
この人間に備わった寒さから身を守る防御システムが過剰に反応してしまうのが、女性に多い症状である冷え性というわけです。
手足が冷たくなってしまうのは、とってもつらい症状ですが、冷え性の人は手足の血管をいち早く閉じて、深部温を守ろうとする働きが強い人とも言えます。

では、なぜAさんは、冷え性で深部温を保つ能力は高いはずなのに、体温が低下したのか?

それは・・・
手足の血液を体の中心に移動させたものの、それでもなお熱が足りない状態。
つまり、身体の中で作られる熱がそもそも少ないのです。

その原因は主に以下の3つあります。
・極端なダイエット(少食)
・筋力不足
甲状腺ホルモンの減少
甲状腺ホルモンは、細胞を働かせる命令を出すホルモン。これが低下するとあらゆる細胞が働かなくなり、熱が生み出される量が減る。)

今回ガッテンではこのタイプを「熱くなれないのタイプ」と名づけました。




##なぜ!?手足ぽかぽかなのに低体温
#自分では体温の低下に気づかないやっかいな低体温のタイプがあることが判明!
Cさんは35.5℃の低体温。
しかし、サーモグラフィーで見てみると、室内はおろか寒い屋外でも手足がぽっかぽか。
冷え性もないのに、一体なぜ低体温になってしまったの?
実は、本来なら寒さにあたるとおこらなければならない血管の収縮がおこらないために、どんどん体温が逃げてしまっていたんです!
このタイプを「熱逃がしちゃうのタイプ」と名づけました。

なぜ、血管が収縮しないかというと、原因は血管収縮の命令を出す交感神経の機能低下。
体質や、ストレス、不規則な生活リズムなどによっておこると考えられます。
でも、これは特殊な人しかならないんじゃ・・・と思っていたら大間違い!
実はたとえ交感神経はちゃんと機能していても、血管の収縮がうまくいかないことがあるんです。
しかも、特別な異常ではなく、誰にも避けられぬ理由で・・・。
それは老化。
老化によって血管が硬く変化してしまうと、交感神経が命令をちゃんと出しても、収縮してくれません。
そのため、高齢者には低体温の方が多いんです。

しかも、さらに大変危険なことがあります。
実は、放熱しているため、本人は体ぽかぽか。
つまり、保温など適切な対処とらないために、どんどん体の熱を逃がすはめになってしまいがちなのです。
<コメント>
昨日相談を受けた2人目の高齢の方はこのタイプであることが分かります。




##カンタン血管トレーニング!熱逃がしちゃうのタイプ対策
◆若・中年向け:「運動と寒さにあたる」
運動:20分程度のウォーキング
寒さにあたる:今着ているものから1枚薄着

寒さにあたりながら体を動かすというのがポイントです。
(どちらか一方ではなく、必ずセットで行ってください)。
運動する際は、過度な厚着は避け、特に寒さを感じるセンサーが集まる顔周りを出すようにすれば(マフラー、帽子は耐えられるようならしない)交感神経の活動が高まり、血管の収縮機能が高まります。
番組では、20分程度のウォーキングを冬の屋外で1週間続けていただいたところ、35.5℃だったCさんの体温が36.4℃まで上がりました。
ただし、効果が現れるまでの期間は個人差があります。
※いきなり極端な薄着は避けてください

◆高齢者向け:「老化した血管の部分的な保温」
老化によって収縮力を失った血管を改善することは、上記の方法で可能です。
しかし、高齢の方が、いきなり寒い屋外に出て運動をすることは危険です。
そのため、ガッテンでお勧めするのは、老化して過度に放熱してしまっている血管部分を中心的に保温するということです。
老化によって収縮力を失う血管の順番は
足⇒背中⇒胸⇒腕⇒頭の順です。
血管の老化は40代をすぎたあたりから始まりますが、初めは足から放熱しやすくなってしまいます。
足の場合は、ももひきなどで保温をおこなってください。
他の老化していない部分は、過度な厚着をする必要は特にありません。




##食べるだけ!熱くなれないのタイプ&冷え性対策
今回番組でお勧めしたのは、「たんぱく質」を多くとる食事法です。
たんぱく質を消化すると、他の食べ物より多くの熱が生まれます。
肉や魚介類を多く取り入れ、総カロリー数の40パーセント以上をたんぱく質でとれば、体温アップの効果があります。
たんぱく質1gにつき4キロカロリーです)

冷え性の場合も、同様に、たんぱく質を多くとる食事法がおすすめです。
詳しくは、2008年1月30日放送「発見!冷えに打ち勝つ食事法」でご紹介しました。
http://cgi2.nhk.or.jp/gatten/archive/program.cgi?p_id=P20080130

※注意:腎臓病や糖尿病など食事のカロリー数が健康に影響を及ぼす可能性がある方はあらかじめ専門医にご相談ください
※この食事法は1週間を目安に行ってください




##意外と知らない!?正しい体温の測り方
水銀計はもちろん、電子体温計であってもピピッと鳴ってからも測り続け、合計10分間計測してください。
音が鳴った時点で計測をやめると、実際の体温より低く出る場合が多くあります。
<コメント>
電子体温計は体温の上がり具合で体温を早めに予測する、いわゆる予測体温計です。
ピピッと鳴った時点で数字は変化しないものと思っていました。

※高齢の方は平熱の測りなおしを!
ヒトの体温は、年齢を経るごとに少しずつ下がり続け、高齢になると低下していきます。
そのため、若い頃の平熱を覚えていても、現在の自分の平熱とは違っている可能性があります。
ぜひ、体調のよいときに測りなおしてみてください。

出典 NHKためしてガッテン」2010.2.3放送(一部改変)
版権 日本放送協会


<コメント>
番組の中で、手足の運動で体温があがることを実験していました。
当院でも、予防接種の際に来院されてすぐに体温を測定すると37.2度というお子さんがよくみえます。
少し安静にしていただいて測定していただくと平熱になっています。
また、番組の中で食事で体温があがることも紹介していました。
当院では発熱の患者さんに体温表をつけていただく時には、食事前に測定するように指導しています。


<低体温 関連サイト>
低体温症 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/低体温症


10分で理解する低体温
http://www.happy-tail.biz/

冷え性(冷え症)と低体温を改善したい!
http://www.hiekaizen.net/

低体温症どう防ぐ? 夏山登山に潜む危険 (1/2ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/090724/trd0907240735002-n1.htm




読んでいただいて有難うございます。
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