高齢者の水頭症

高齢者の水頭症、髄液抜いて改善

高齢化で増加する認知症
病気の原因として患者が最も多いアルツハイマー病の治療法はまだないが、認知症患者の約5%を占める「特発性正常圧水頭症」は治る可能性がある。
脳の中に液体がたまり歩行障害や物忘れなどが起こるが、手術で余分な液体を抜けば症状が改善する例も少なくない。
診断も簡便になり、手術で歩けるようになれば生活の質も改善する。
 
脳や脊髄は「脳脊髄液」という無色透明の液体が巡っている。
脳で毎日つくられ、脳の毛細血管などから吸収される。
この脳脊髄液が脳の真ん中にある脳室と、脳の周りにあるくも膜下腔(くう)に、何らかの原因で余分にたまるのが特発性正常圧水頭症だ。

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特発性とは原因不明という意味で、くも膜下出血髄膜炎などの後に起こる正常圧水頭症と区別している。
子供の水頭症は脳内の圧力が異常に高まり頭が大きくなるが、大人では圧力が正常でも認知症などの症状が表れる。

31万人発症の疑い
特発性正常圧水頭症は主に60歳以上で発症。
多いのは70~80代で「老化で起こる病気の一つだ」と順天堂大学の宮嶋雅一准教授は指摘する。
男性がやや多く、最近の調査では少なくとも高齢者人口の約1%にあたる31万人が、この病気を発症している疑いがあることが分かってきた。


主な症状は歩行障害と尿失禁、認知症の3つ。
歩行障害は患者の約9割でみられ、足が十分に上がらない、よちよち歩きになる、少し足を開き気味に歩くなど特徴的な歩き方をする。
従来は「年のせいだから仕方ない」と言われたり、認知機能低下からアルツハイマー病やパーキンソン病などに間違われたりした。失禁だけの患者は過活動膀胱(ぼうこう)とされる例もあった。

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診断は、磁気共鳴画像装置(MRI)などで脳画像を撮り、脳室が広がっている、頭頂部の脳のしわが目立たなくなるといった特徴があれば、この病気の可能性が非常に高い。
2004年に定めた診療ガイドラインでは、腰に針を刺して脳脊髄液を抜き、歩行などの症状が改善するかをみる「タップテスト」も実施し、病気かどうか判断していた。
多くの患者は1~2日後に改善するものの、足がもともと悪く改善したか分からなかったりした例もあった。

このため、診療ガイドラインが今年7月に改訂され、タップテストは必須ではなくなった。
「日本の研究で、MRI画像などがあれば正確に診断できることが分かったため」と改訂の作業を手掛けた東北大の森悦朗教授は説明する。

簡便で見逃しが減ると期待され、世界に広める考え。
ただ、画像だけで判断が難しいケースはタップテストも実施する。


手術は1時間
病気と診断した場合は治療に進む。
脳にたまった余分な脳脊髄液を一時的ではなく、ずっと抜き続けるための管を体内に入れる「シャント手術」を実施する。
手術は主に、脳室と腹腔をつなぎ脳脊髄液を流す方式と、腰椎と腹腔をつなぐ方式がある。
国内では脳手術を嫌がる患者が多く、腰椎―腹腔が増えているという。

手術は脳神経外科が担当し約1時間で終わる。
ただ脳脊髄液が流れすぎても脳に血がたまるなどの合併症が起こるため、磁石で体外から量を調節する。入院期間は2~3週間ほどだ。手術で何らかの改善があるのは約8割。
目立ってよくなるのは歩行障害で、認知症の程度をみる検査の点数が上がる患者も少なくない。

東京都内に住む70代女性は2年前に、足が弱り物忘れも激しくなった。
夜中に目が覚めてトイレに行きたいと思うが間に合わない日も増えてきた。
そこで半年後に順天堂大を受診。
特発性正常圧水頭症と診断され手術を受けた。
手術後は手すりがなくても歩けるようになり、表情も豊かになった。回復ぶりに「本人も家族も驚いていた」(宮嶋准教授)。

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ただ完全に元に戻るわけではない。
東海大学付属大磯病院の山田晋也脳卒中神経センター長は「認知症が治ると期待しすぎるのはよくない」とくぎを刺す。
年齢や寝たきりかどうかなど状態を総合判断し、手術を見送ることもある。山田センター長らは患者に特徴的な脳脊髄液の流れ方の異常も発見しており、将来はより正確な診断も可能になると期待している。

この病気は脳神経外科神経内科などが診ている。
アルツハイマー病や脳卒中などと併発している人もいる。正確な診断のために、まず専門家を訪ねてほしい」と医師は口をそろえる。 (長谷川章)

出典 日経新聞・夕刊 2011.9.10
版権 日経新聞



<自遊時間>
経産相放射能つけようか」 「死の町」発言は撤回 野党、批判強める
鉢呂吉雄経済産業相は9日、福島第1原子力発電所周辺を「死の町」と表現した自らの発言について「誤解を与える表現だったと真摯に反省する」と撤回した。
第1原発視察後の8日夜に議員宿舎で報道陣の1人に袖をすりつけ「放射能をつけてやろうか」と冗談まじりに述べたことも明らかになった。

経産相は9日夜、袖をすりつけたことを「福島の現場の厳しい状況を見てきたことを分かち合いたかった」と釈明した。
日本経済新聞 電子版 2011/9/9 18:39

「分かち合いたかった」・・・この言葉、誰が信じますか。言い訳の天才はちょっと褒め過ぎですが、「言い訳」はまずもっともらしくなくてはいけません。
しかし、この件のリークは「報道陣の1人」ということで、確実に若いぶらさがり記者です。
こんな報道がされていたら政局はいつまでたっても安定しません。
「報道陣のおごり」も取り沙汰されています。
確かに彼らはペン1本で国を操ることも出来るのですから、ついその気になってしまうのも無理はありません。
いろんなスキャンダルが国会などで取り沙汰されますが、その多くは出処が明らかにされません。
これも不思議ではあります。


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